一頭のジョーイを、14頭の馬が演じていた
『戦火の馬』の主人公ジョーイには、実は何頭もの「共演者」がいました。AFIの作品記録によると、ジョーイを演じた馬は合計14頭。成長する一頭の馬の旅を、複数の馬でつないでいるのです。[1]
・中心になったのは、元競走馬のファインダーズキー
その中でも重要な役割を担ったのが、ファインダーズキーです。この馬には、『シービスケット』(2003)にも出演した経歴がありました。競馬の世界から映画へ転じ、再び大作に参加することになった馬なのです。[2]
日本軽種馬登録協会が紹介した取材によると、ファインダーズキーは2002年にロスアラミトスで3回出走しましたが、いずれも着外でした。その後、調教師ボビー・ラヴグレンがこの馬を購入。『戦火の馬』の撮影のため、アメリカからイギリスへ連れていきました。競走成績だけを見ても、映画で見せる存在感は分からないものですね。[2]
・苦しそうに見える顔と、実際の気持ちは同じではない
ラヴグレンが語るこの馬の強みは、表情の豊かさでした。人には不安そうに見える動きでも、馬自身が本当におびえているとは限らず、ファインダーズキーは自信のある馬だったと説明しています。観客がジョーイの恐怖や戸惑いを感じる場面にも、訓練された馬の表現が使われていました。[2]
ただし、危険な動作まで、すべて実際の馬にさせたわけではありません。AFIは、ジョーイがつまずいて転倒する場面ではコンピューターによる効果が使われたことも記録しています。[1] 生きた馬の演技を生かすことと、別の方法へ切り替えることは、同じ映画の中で両立していました。
「14頭」という数字は、同じ動きをする成馬を14頭並べたという意味ではありません。ジョーイの成長を含む役を、全体で何頭が担ったかという数です。目の前に一頭の主人公がいるように見える、その連続性も映画作りの仕事だったのです。[1]