主な参考資料
- Los Angeles Times
- AFI
- Vanity Fair
- Post Magazine
- fxguide
- The Academy
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スティーヴン・スピルバーグは、ドリス・カーンズ・グッドウィンが大統領評伝を完成させる前の2001年に映画化へ動き、グッドウィンが開いた歴史家との討議をトニー・クシュナーの脚本開発へ取り込んだ。クシュナーは1863年から暗殺までを描く約500ページの稿を書いたが、スピルバーグは憲法修正第13条をめぐる約70ページを核に選び、さらに2年かけて1865年1月の採決へ焦点を絞らせた。ダニエル・デイ=ルイスは当初の依頼を断ったものの、2010年にアイルランドでスピルバーグとクシュナーに会った後で役を受け、録音が残らないリンカーンの声を同時代人の記録と本人の文章から1年かけて組み立てた。制作班はリッチモンドのバージニア州議会議事堂を議会場面へ使い、現存しない執務室を壁紙、戦況地図、書簡、写真まで史料から手作りし、衣装班も写真と保存衣服から主要人物の服を再現した。音響担当ベン・バートはケンタッキー歴史協会が所蔵するリンカーン所有の懐中時計を録音し、VFX班は多数の写真から建物の立体形状を復元する写真測量で現代の電線や塔、鏡に映った撮影班を消して、実景を1865年へ戻した。The Numbersは製作費を6,500万ドル、北米興収を1億8,220万7,973ドル、世界興収を2億7,334万6,281ドルと集計し、本作は第85回アカデミー賞で主演男優賞と美術賞を受賞したが、製作費はスタジオの最終会計、興収は利益額と同一ではない。
スティーヴン・スピルバーグは、ドリス・カーンズ・グッドウィンが大統領評伝を完成させる前の2001年に映画化へ動いた。グッドウィンはスピルバーグと脚本家トニー・クシュナーを歴史家の討議へ招き、政治家同士の関係や当時の議会運営を説明した。完成した原作を短く要約するだけでなく、執筆中の調査と専門家の議論を脚本開発へ取り込んだ企画である。
トニー・クシュナーは当初、1863年からリンカーン暗殺までを描く約500ページの脚本を書いた。スティーヴン・スピルバーグは、その中でも憲法修正第13条をめぐる約70ページが最も強いと考え、さらに2年かけて1865年1月の採決へ焦点を絞るよう提案した。大統領の生涯全体ではなく、政治的な理想を議会の票へ変える短期間の攻防を本作の中心にしたのである。
本作には140人を超える名前付きの人物が登場し、トニー・クシュナーは演説、手紙、議会記録に残る言葉を台詞へ混ぜた。一方、リンカーンが家族や側近と交わした私的な会話の多くには逐語記録がないため、クシュナーは史料に合う範囲で会話を創作した。歴史家ジェームズ・マクファーソンも全体の現実感を高く評価しながら、個々の台詞には劇映画としての自由があると区別している。
ダニエル・デイ=ルイスは、スティーヴン・スピルバーグから最初にリンカーン役を依頼された時には断った。その後、別の主演案を経て、スピルバーグとトニー・クシュナーが2010年にアイルランドを訪ねると、デイ=ルイスは役に引かれ始め、撮影まで1年ほしいと求めた。監督が一度の辞退を最終回答にせず、脚本と面談を重ねた結果の配役である。
リンカーン本人の肉声録音は残っていないため、ダニエル・デイ=ルイスは同時代人が記した、意外に高く遠くまで届く声という証言から話し方を組み立てた。デイ=ルイスが声の試作を録音して送ると、スティーヴン・スピルバーグは初めて聞いた瞬間に涙が出たと振り返っている。完成した声は既存音源の物まねではなく、文献から作った演技上の解釈である。
サリー・フィールドは、企画の初期からメアリー・トッド・リンカーン役を望み続けたが、主演俳優が変わったため起用は自動的には決まらなかった。フィールドが人物調査を示して役を訴えると、ダニエル・デイ=ルイスは2人の相性を見る撮影へ参加するため、アイルランドから米国へ渡った。長年の希望だけでなく、2人が夫婦として成立するかを実際に撮って確認した配役である。
バージニア州リッチモンドを中心とする撮影は53日間で、スティーヴン・スピルバーグは出演者を役名で呼んだ。ダニエル・デイ=ルイスも撮影の合間にリンカーンの声を保ち、監督は現代の人物を演じる時とは違う集中状態を現場全体で守った。俳優を24時間役へ閉じ込める規則ではなく、撮影中の空気を壊さないための演出運用だった。
制作班はリッチモンドのバージニア州議会議事堂をワシントンの議会場面へ使い、リンカーンの執務室は撮影用セットとして手作りした。壁紙、戦況地図、手紙、写真、本の配置を史料から組み直し、ドリス・カーンズ・グッドウィンも、その空間へ入ると当時へ移ったように感じたと述べている。実在建築だけに頼らず、現存しない室内を調査と美術で補ったのである。
衣装班は当時の写真、肖像画、文書に加え、保存されている実物衣服も調べ、主要人物の服を撮影用に再現した。ダニエル・デイ=ルイスは自分の髪とひげを伸ばしたため、特殊メイク班は顔へ重い人工物を重ねずに年齢と輪郭を整えられた。最初は3時間を見込んだ準備が約1時間15分へ縮まり、毎日の撮影時間を人物の演技へ回せた。
撮影監督ヤヌス・カミンスキーは、本作を古写真のようなセピア色や白黒にはしなかった。室内ではガス灯や石油灯に見える照明を実際の画面内へ置き、窓から入る光と組み合わせて、人物が当時の暗さの中にいるよう撮影した。カメラも目立つ動きを控え、議員の表情と言葉へ観客の注意を集めている。
音響担当ベン・バートは、ケンタッキー歴史協会が所蔵するリンカーン所有の懐中時計を動かし、その秒針の音を録音した。さらに19世紀の教会鐘、ホワイトハウスの古い扉の掛け金、馬車などを記録し、画面に見える物の時代感を音でも支えた。資料を撮影美術の見本にするだけでなく、現存する物体そのものを音源として使った作業である。
本作のVFXは目立つ見世物より、ロケ地を1865年へ戻すために使われた。VFX班は多数の静止写真から建物の立体形状を復元する写真測量を使い、現代の電線や塔を消し、建物と群衆を延長し、鏡に映り込んだ撮影班まで画面から除いた。実景を別の場所へ置き換えるのではなく、実景に残る現代と撮影作業の痕跡を取り除く加工である。
The Numbersは、本作の製作費を6,500万ドル、北米興収を1億8,220万7,973ドル、海外興収を9,113万8,308ドル、世界興収を2億7,334万6,281ドルと集計している。公開は北米11館の94万4,308ドルから始まり、その後1,775館へ広がった。第85回アカデミー賞ではダニエル・デイ=ルイスが主演男優賞、美術班が美術賞を受賞したが、製作費はスタジオの最終会計、興収は利益額と同一ではない。
録音したのがスミソニアンの「秘密の刻印」がある時計だった、という話なら少し違うかもしれない。音響担当ベン・バートはスミソニアンへ依頼したものの、日程と保存上の事情から実現せず、ケンタッキー歴史協会が所蔵する別のリンカーン所有時計を録音した。「本物の時計」という部分は正しいが、どの時計かを取り違えない注意が必要である。