日本軍機を演じたのは、改造したアメリカの練習機
『トラ・トラ・トラ!』の空を飛ぶ零戦や攻撃機。その撮影用機体には、アメリカの練習機を、日本軍機の形へ改造したものが使われました。日の丸を描いただけではなく、操縦席や尾部など、外形にも手を加えています。[1]
・空を飛べる機体から、別の飛行機を作る
航空ショーチーム関係者への取材を含むVintage Aviation Newsの解説によると、改造の基になったのは、ノースアメリカンAT-6とヴァルティーBT-13などです。零戦を演じるAT-6は、二人乗りの大きな風防を変え、一人乗り戦闘機に近い形へ作り替えました。機首や翼端、尾部にも変更を加えています。[1]
同じ「日本軍機」でも、零戦と九七式艦上攻撃機では、長さも座席の数も違います。そこで九七式艦攻の撮影用機には、AT-6の前部を基に胴体を延ばし、BT-13の尾部を組み合わせるなど、さらに大がかりな改造が必要でした。九十九式艦上爆撃機の再現にも、別の作り替えを行っています。[1]
・塗装では隠せない、横顔の違い
機体が空を飛べても、形が違えば、カメラに映る横顔も変わります。操縦席の長さや翼の先、車輪の周りまで改めたのは、飛べる機体を使いながら、画面では別の飛行機として見せるためでした。[1]
俳優に衣装を着せるだけでなく、輪郭そのものを変えるような仕事です。実機が飛ぶ迫力の中にも、映画のために選び、作り直した部分がありました。
・撮影が終わっても、役を降りなかった
改造機の一部は、映画の後も日本軍機の姿を保ちました。CAFの公式資料によると、映画に使われた6機のレプリカを受け継いだことから、同名の航空ショー「Tora, Tora, Tora」が生まれています。最初の披露は、1972年6月25日のガルベストン航空ショーでした。[2]
取材に掲載された飛行写真では、機体の日の丸だけでなく、操縦席を覆う風防や、脚を包むカバーまで見えます。こうした外形を作って飛ばす仕事は、後年の実演でも引き継がれました。映画の撮影現場そのものの写真とは、分けて見てください。
映画のために生まれた機体が、今度は歴史を伝える実演へ渡ったわけです。本編の飛行場面を見返すときは、画面で演じている機種と、その下に隠れている別の機体のことも思い出してみてください。