映画のゲーム化が、映画を使えないゲームになった
アル・パチーノとコリン・ファレルの『リクルート』には、ゲーム『Ice Nine』との意外な接点があります。当時のGameSpotは、映画に着想を得たゲーム企画がこの題名へ変わったと報じています。ところが2003年の契約には、ゲームの発売時には『リクルート』に基づくものにも、同作から着想を得たものにもしないという条件が、はっきり書かれています。[2][1]
・「名前を変えればいい」では済まなかった
資料は、BAM! Entertainmentと映画会社Spyglassの間で、2003年5月29日付で結ばれた合意書です。両社はそれまでの映画のゲーム化に関する契約を整理し、その第5項で『リクルート』を個別に扱いました。[1]
そこでは、BAMが本作の権利を持たないことを確認したうえで、『Ice Nine』に映画の要素を使わないと定めています。列挙されているのは、タイトル、主題、登場人物、内容、音楽。題名のロゴを外すだけでなく、作品の中身との関係も断ち切る条件でした。[1]
・ゲームの題名には、もう一つの権利関係
さらに興味深いのは、「Ice Nine」という名についての条項です。2005年12月15日までにゲームが発売されなければ、カート・ヴォネガット側とのライセンスを延長していない限り、その名称の使用をやめるとされています。映画の権利を整理する話の中に、題名に関する別の契約も顔を出すのです。[1]
ただし、これは実際の発売日を示す記録ではなく、合意した時点での条件です。契約書を読む面白さは、後の結果を一足飛びに説明することではなく、当時どこまでを使ってよく、何を使えないとしたのかが具体的に分かる点にあります。
・映画の外側で進んだ、もう一つの駆け引き
同じ合意書では、『サラマンダー』(2002)の既存ゲームについては権利関係を残しています。すべての映画と一律に縁を切ったわけではなく、作品ごとに扱いを分けていました。[1]
スパイ映画の裏側を調べると、CIAや撮影の話だけでなく、こうした商品化の記録にも行き着きます。映画とのつながりを売りにするはずのゲームに、映画を使わない条件が付いた。 その境界線が、宣伝文句ではなく合意書の一項として残っているのが、この話の面白いところです。