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2000年公開。キューバ危機の会議記録をまとめたアーネスト・メイとフィリップ・ゼリコウの研究を主要資料に、デヴィッド・セルフが脚本を書き、ケヴィン・コスナーが製作と出演を兼ねた。コスナーはケネディ役ではなく、観客の案内役として側近ケネス・オドネルを選び、ロジャー・ドナルドソンは当時の『LIFE』誌写真を思わせる白黒映像をカラーへ混ぜた。軍の協力も得て時代の航空機や艦艇を再現する一方、実際のオドネルは危機対応で中心的役割を担っていなかったとロバート・マクナマラらから批判され、綿密な考証と劇的な主人公設定が正面衝突した。核戦争を避けた会議を再現する映画が、最後には史実とスターの出番の折衷案を採ったのである。
『13デイズ』という題名はロバート・ケネディの回想録を思わせるが、2000年の映画が主に土台にしたのは『The Kennedy Tapes』だ。録音記録をもとにした会議劇なので、単なる英雄伝よりも「部屋の中で世界が決まっていく」怖さが前に出ている。
『13デイズ』より前にも、キューバ危機を扱ったテレビ映画『The Missiles of October』が1974年に作られている。2000年版は後に公開された録音や資料を踏まえられるため、同じ危機を描いていても、会議の空気や情報量が違う世代の映像化なのだ。
『13デイズ』ではケビン・コスナー演じるケネス・オドネルが、危機の中心人物のように描かれる。ただし元政権関係者や歴史家からは、その役割を大きくしすぎているという批判もあり、映画の主人公選びそのものが議論の的になった。
本作はロジャー・ドナルドソンが監督したが、企画段階ではスティーヴン・スピルバーグ、ローレンス・カスダン、フランシス・フォード・コッポラ、マーティン・キャンベルらの名前も関わっていたとされる。会議劇の政治スリラーが、かなり大きな監督候補リストを通ってきた作品なのだ。
『13デイズ』で重要になる海上封鎖は、史実でも「blockade」ではなく「quarantine」と呼ばれた。blockadeは戦争行為に近く聞こえるため、同じ船を止める作戦でも、どの単語を選ぶかが核戦争回避の政治技術になっている。
終盤で効いてくるトルコの米ミサイル撤去は、史実でも長く表に出なかった重要な取引だ。JFK Libraryは、キューバ侵攻をしない約束とは別に、アメリカがトルコの核ミサイルを撤去する秘密合意があったと説明している。
緊張は、U-2偵察機がキューバのミサイル基地を撮影したことから始まる。JFK Libraryも、ケネディがソ連とキューバに発見を悟られないまま、数日間秘密会議を続けたと説明しており、映画の「写真を読む会議劇」は史実の怖さに根がある。
題名どおり、キューバ危機は1962年10月の13日間に世界が核戦争寸前まで近づいた出来事だ。JFK Libraryは、世界が核戦争の瀬戸際で待ち続けた13日間として説明しており、映画のカウントダウン感は宣伝上のあおりだけではない。
『13デイズ』で描かれるU-2撃墜は、映画用の作り話ではない。1962年10月27日、ルドルフ・アンダーソン少佐のU-2がキューバ上空で撃墜され、キューバ危機における米側の戦闘死者として記録されているため、終盤の緊張は史実の重さを背負っている。
制作では、米国防総省が軍の描き方に不満を持ち、内容変更を求めたとされる。制作側が応じなかったため軍の協力が制限され、政治スリラーの裏側でも「軍をどう描くか」という別の緊張が起きていたらしい。
航空基地場面の一部は、フィリピンのクラーク空軍基地で撮影され、劇中ではフロリダの基地として使われている。キューバ危機のアメリカ本土側を描く映画なのに、実際の撮影ではアジアの元米軍施設が時代感を支えていた。
『13デイズ』には、キューバ危機で実際に任務に関わったUSS Joseph P. Kennedy Jr.が登場し、映画でも同じような任務を再現したと報じられている。博物館船になった軍艦が、約40年後に自分の歴史を映画の中で演じ直した形だ。
本作は、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代にホワイトハウスで上映され、ケネディ家の関係者も招かれたとされる。冷戦危機を描いた映画が、現役政権の場所で見られたという点で、普通の試写とは少し重みが違う。
本作は2001年にキューバでフィデル・カストロ向けに上映され、ケビン・コスナーも同席したとされる。アメリカ側から見たキューバ危機の映画を、当事国キューバの指導者本人が見るという、公開後の逸話としてかなり濃い場面だ。
本作は政治スリラーとして好意的に語られる一方、興行面ではかなり苦戦した。Box Office Mojoでは制作費8000万ドルに対し、世界興収は約6658万ドルで、重厚な題材と大きな予算の組み合わせが商業的には難しかったことが見えてくる。
本作は戦闘映画というより、写真、電話、会議、沈黙で危機を見せる政治スリラーだ。ロジャー・イーバートは、結末を知っていても登場人物は知らないからスリラーとして機能すると評しており、派手な爆発ではなく判断の怖さで引っ張る映画になっている。
『13デイズ』でジョン・F・ケネディを演じたブルース・グリーンウッドは、見た目や声の再現だけで押すタイプの演技ではない。ロジャー・イーバートは、グリーンウッドが徐々に人物そのものとして信じられるようになると評価しており、会議劇の重心をだいぶ支えている。
実在政治を扱う題材のため、『13デイズ』はホワイトハウス全面協力で作られた再現劇のように語られることがある。実際には史実考証や関係者証言を参照した映画であり、政府公認の記録映像として見るのは違う。
脚本家David Selfは、キューバ危機映画『13デイズ』をホワイトハウス録音やケネス・オドネル証言などを参照して組み上げたとされる。密室の会話劇に見える緊張は、記録資料の束から作られている。
ケビン・コスナーは、自分の役が危機を一人で動かしたように見えないよう台詞配分を調整したと語っている。主演俳優が自分の見せ場を抑える方向に動いた珍しい例だ。
ソ連やキューバの内側をほとんど見せない構成は、キューバ危機映画『13デイズ』の欠落ではなく視点設計だった可能性が高い。相手の考えが分からない不安そのものを、サスペンスとして使っている。
軍の描き方をめぐる摩擦により、『13デイズ』では米軍の協力が限定的だったとされる。政治危機を描く映画の裏側でも、軍をどう描くかという別の緊張が起きていた。
JFK役のブルース・グリーンウッドとRFK役のスティーヴン・カルプは、兄弟の話し方が不自然に混ざらないよう事前に擦り合わせていた。似せる演技にも、似せすぎない調整があった。
ロジャー・ドナルドソンにとってキューバ危機は、遠い歴史ではなく子どもの頃の記憶ともつながる出来事だった。『13デイズ』には、監督自身の冷戦の実感も重なっている。
キューバ危機映画『13デイズ』のDVD版には、歴史資料や補足情報を合わせて見せるInfinifilm仕様が用意された。映画を観るだけでなく、キューバ危機を学ぶ教材のような作りになっていた。