IMAXへの挑戦は、自宅の庭とトラックの荷台から
大画面でゴッサム・シティを見せた『ダークナイト』。そのIMAX撮影の準備は、意外に身近な場所から始まりました。ノーラン監督の自宅の庭とガレージで、午後から夜にかけてテストしていたのです。撮影監督ウォーリー・フィスターが、当時の取材で明かしています。[1]
・最初から全編IMAXの計画ではなかった
ノーランが最初に提案したのは、ジョーカーが登場する冒頭約6分の銀行強盗をIMAXで撮ることでした。フィスター自身には、この形式で映画を撮った経験がなく、機材や扱い方の助言を受けながら試験を進めました。[1]
自宅では、カメラの扱いや構図、レンズ、露出を検討しています。単に大きく撮れるかを見るのではなく、本番の画面をどう作れるか、さまざまな条件を試していました。[1]
・夜の街で、暗い部分まで見えてきた
さらに一行は、ピックアップトラックの荷台に三脚を置き、夜のサンセット大通りを走りながら撮影しました。街にある光で撮ったネガからプリントを作ると、暗い影の中にも細部が見え、黒の豊かさとコントラストを確認できたとフィスターは振り返っています。[1]
庭で試し、街へ持ち出し、現像した画面を見る。 巨大な映画館のための判断も、まず実際に撮った素材を見比べるところから進んでいたのです。
・テストを見て、使う場面が増えた
その結果を受けて、制作側は大きなアクション、空撮、カーチェイスなどへIMAXの使用を広げました。一方、それ以外は35mmのアナモフィック撮影を用いています。IMAXのカメラは重く、取り回しも簡単ではないとフィスターは説明していますが、ステディカムで動かすことも含めて検討しました。[1]
「IMAXで撮った映画」と聞くと、一つの方式だけで全編を撮影したようにも感じます。本作では、違う機材を使う場所を選び、映画としてつないでいました。庭先のテストは、その選び方を決めるための、小さいけれど重要な撮影だったのです。