主な参考資料
- Directors Guild of America
- Post Magazine
- Den of Geek
スター・トレック BEYONDを配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
2016年公開の本作は、2009年の『スター・トレック』、2013年の『スター・トレック イントゥ・ダークネス』に続くリブート映画系列の第3作であり、1966年のテレビシリーズ放送開始から50周年となる年に送り出された。前任のロベルト・オーチーが監督を離れた後、ジャスティン・リンが引き継ぎ、サイモン・ペッグとダグ・ユングが脚本を組み直したが、リンは「あと6か月」と告げられた状況を振り返り、脚本作業とセット建設が同時進行していたと語っている。撮影はバンクーバー周辺で80日間行われ、ドバイでは約4か月のロケ地調査を経て2週間撮影し、実在の高層建築を宇宙ステーション「ヨークタウン」の景観に取り込んだ。ジョエル・ハーロウ率いる特殊メイク班は50種を超える異星人の造形を制作し、何百もの案はコンセプト段階で見送られた一方、宇宙船や異星人の大部分はDNEG、Atomic Fiction、G Creative ProductionsなどがVFXで作り上げた。リンの最初の編集版は2時間27分に達したが、本人によれば丸ごと削除した場面はわずかで、短縮の多くはテンポを整えるための編集だった。製作費は1億8,500万ドルとされ、世界興収はThe Numbersが3億3,567万3,708ドル、Box Office Mojoが3億4,347万1,816ドルと集計しており差が残るが、アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた――50周年の記念に異星人を50種そろえる宿題まで現場に課されたのだから、節目は祝う側にも忙しい。
サイモン・ペッグと脚本を書いたダグ・ジョンは、画面にも姿を見せる。スールーのパートナー、ベン役の地元俳優が撮影直前に出演できなくなり、ジョンが代役を引き受けた。脚本家が自分の書いた家族の場面に出演することになったのである。
ジェイラの出発点は『ウィンターズ・ボーン』でジェニファー・ローレンスが演じた、生き延びる力の強い少女だった。脚本会議ではしばらく俳優名で呼ばれ、愛称「J-Law」をもじるうちに「Jaylah」という名前になったと共同脚本家ダグ・ジョンは振り返る。ローレンス本人の出演計画を示す話ではない。
【ネタバレあり】クラールの憎悪は壮大な思想だけでなく、本人にとっての古い不満にも根ざしている。共同脚本家ダグ・ジョンによると、リン監督は人物の私怨を考える際、スパイ映画『Breach』(2007)を引き合いに出した。SF作品の設定を借りたというより、敵の動機を身近な感情から作るための参照だった。
【ネタバレあり】リン監督は、エンタープライズ号を物語の終わりまで守らなかった。第1幕で船を失わせ、離れ離れになった乗組員を通して連邦の理想を問い直す構成を選んだ。ペッグは当初、象徴的な船を壊す案に抵抗したが、物語を組み立てるうちに受け入れたという。
マッコイ役続投をリン監督の電話が後押し。別作品との日程が競合し、前作での役の扱いにも思うところがあった。リン監督から直接、今回のマッコイの役割を聞き、出演を決めたと本人が語っている。
スールーのパートナーと娘が登場する場面は、性のあり方を驚きの発表として演出していない。ジョン・チョーは、家族との再会がごく自然な瞬間として撮られたことを評価した。一方、旧版のスールーを演じたジョージ・タケイには設定変更への異論もあり、関係者全員の意見が一致したわけではない。
冒頭でカークが語る航海日数は966日。ジョン・チョーは、この数字がオリジナル版の放送開始月、1966年9月を参照したものだと取材で説明した。数字の並びに、シリーズ50周年の小さな目配せが隠れている。
カークとマッコイの会話は『カーンの逆襲』を意識。共同脚本家ダグ・ジョンは、『スター・トレックII カーンの逆襲』での二人の会話を意識したと語る。旧作の台詞を丸ごと再現するのでなく、船長と医師の距離感を新しい物語へ持ち込んだ。
50種を超える異星人の造形。特殊メイク責任者ジョエル・ハーロウの班は50種を超える異星人を造形した。本人は準備から撮影、仕上げまで大量の写真を残し、その造形を一冊のメイク本にもまとめている。
ジェイラ役はメイクで役をつかんだ。毎日何時間もかかるメイクを施し、重要だと感じた靴を履いて初めて、役の感覚をつかめたと話す。特殊メイクは外見だけでなく演技の入り口になった。
本作の視覚効果は宇宙船だけに限らない。業界誌の制作取材では1,400ショット超とされ、DNEGのロンドン・バンクーバー班、Kelvin Optical、Atomic Fiction、製作側の内製チームなどが担当した。惑星の地上場面にもセットの拡張や完全CGの環境が使われている。
【ネタバレあり】前作のエンタープライズCGを作り直した。DNEGは前作『イントゥ・ダークネス』のラスト用モデルを受け取り、本作の長い破壊場面に耐えられるよう作り込んだ。前作の一場面用の素材が、次作の中心的な技術基盤になった。
ドバイの実景が宇宙基地ヨークタウンへ。ペッグはドバイがその背景になったと説明し、VFX班は建物だけでなく水路やベンチまで設計した巨大な宇宙基地を作った。実在都市の撮影とデジタル美術が接続されている。
デジタル撮影でもフィルム風を狙った。VFX監督ピーター・チアンによると、主撮影はARRI Alexaを中心に行い、従来の強いレンズフレアを抑え、フィルムのような反応を目指した。デジタルで撮りながら、画の手触りはフィルムへ寄せている。
本作はレナード・ニモイとアントン・イェルチンの二人を悼む作品にもなった。劇中では旧スポックの死が物語に組み込まれ、撮影後に亡くなったチェコフ役イェルチンへの思いも終盤の演出に残る。ホームメディアには、二人を追悼する独立した映像特典が収録された。
【ネタバレあり】異星人クラールの正体は、かつて地球側の軍人だったバルタザール・エディソンである。彼の旧所属MACOとシンディ戦争は、テレビシリーズ『スター・トレック:エンタープライズ』期の設定につながる。単なる過去作の名前遊びではなく、戦争から平和へ移った連邦を受け入れられない人物像の土台になっている。
パリス准将役は追加撮影で参加。演じたショーレ・アグダシュルーは、追加撮影の段階で作品に加わったと公式取材で語っている。物語の前後を結ぶ役が、後の撮影で整えられた。
前作で船に加わったキャロル・マーカスは本作に登場しない。ペッグによると初期稿では、ジェネシス計画の初期研究に向かったとの説明が用意されていた。しかしその台詞は完成作に残らず、劇中で彼女の現在を断定することはできない。
エンドクレジットにある宇宙艦隊の役人役には、Amazon創業者ジェフ・ベゾスの名が載っている。共同脚本家ダグ・ジョンは撮影日に立ち会い、厚い異星人メイクを施されていたと語った。画面で顔を見ただけでは本人と気づきにくいカメオである。
サッカー監督カルロ・アンチェロッティも本作に少し出演した。ゾーイ・サルダナの家族との縁からバンクーバーの撮影を見学し、リン監督に会うと小さな役を与えられたと本人が語っている。大物サッカー監督の出演は、正式な俳優オーディションから始まったわけではない。
2015年、ブライアン・クランストンが第3作の敵役候補だという噂が流れた。ただし当時の記事は「クランストンのような俳優を求める」という話と本人への接触説が混在し、正式な配役決定や契約を示す資料は見つからない。完成作のクラール役はイドリス・エルバであり、「クランストンで決定していた」とは言えない。