『SPY/スパイ』ステイサム起用のきっかけは『アドレナリン』
『SPY/スパイ』のリックは、腕利きのはずなのに、言うこともやることも大げさなスパイです。この役をジェイソン・ステイサムに演じてもらおうと考えたポール・フェイグ監督は、以前から彼の笑いの才能に注目していました。そのきっかけが、アクション映画『アドレナリン』の真剣な演技だったそうです。[1]
・あれほど無茶な状況を、真顔で演じている
フェイグは2015年の取材で、ステイサムの出演作をずっと見てきた中でも、最初の『アドレナリン』を見たときに、彼は面白い、と感じたと話しています。とんでもない状況だと分かっているはずなのに、本人は大まじめ。その姿から、いつかコメディに起用したいと考えるようになりました。[1]
ただ、すぐに似合う役が見つかったわけではありません。数年後、『SPY/スパイ』の脚本を書く中で、主人公スーザンの前に現れる、自分の強さを誇るライバルのスパイが必要になりました。そこで、ようやくステイサムのために書ける役ができたのです。[1]
写真のリックは、白いディナージャケットに蝶ネクタイ。スーザンと並ぶ姿だけなら、華やかなスパイ映画の登場人物そのものです。整った身なりや堂々とした態度があるから、その後に飛び出す大言壮語が余計におかしく見えます。
・監督が頼んだのは、ふざけずに演じること
フェイグは、この役を本人が引き受けてくれるか不安もあったといいます。実際に会う前は緊張したものの、ステイサムは笑顔で現れ、二人は意気投合。撮影を前に不安を見せたステイサムへ、監督が求めたのは、笑わせようと崩さず、どこまでも真剣に演じることでした。[1]
リック自身は、自分が優秀なスパイだと思っています。だから、能力がないと見下していたスーザンが仕事を任されることに腹を立て、判断を誤っていく。人物の中にある怒りや自信を本気で演じることが、笑いにつながっています。[1]
・現場では、妙な台詞がさらに増えていった
一方、演じる本人まで常に無表情だったわけではありません。フェイグがLAistの番組で話したところでは、撮影中に突飛な台詞を渡すと、ステイサム自身が吹き出すこともあったそうです。途中まで言って笑ってしまい、次のテイクでは見事に決める。それを見た監督たちは、さらに奇妙な台詞を書き足していきました。[2]
画面の中のリックは大まじめでも、現場ではそのおかしさを楽しんでいた。『アドレナリン』で監督が見つけた真顔の面白さが、本人のために書かれた役と、その場のやり取りの中で膨らんでいったのです。