『SING/シング』ジョニーの決め曲は交渉に半年 エルトン・ジョンの曲を使うために
『SING/シング』で、ジョニーがピアノを弾きながら歌う『アイム・スティル・スタンディング』。エルトン・ジョンのこの曲を使うため、ガース・ジェニングス監督たちは交渉を重ねていました。監督の回想では、約6か月働きかけ、ようやく直接説明する面会にたどり着いたそうです。[1]
・ほかの曲を探しても、代わりが見つからなかった
当初、エルトン側の会社は、この曲を使わせることはできない、と答えていました。制作側も別の曲を探したものの、ジョニーの場面にこれほど合う曲は見つからなかったと、監督は話しています。[1]
ジョニーの歌は、歌唱力やピアノの腕前を披露するだけの場面ではありません。犯罪に関わる父との間で揺れていた彼が、舞台で自分の望む道へ踏み出す場面です。ジェニングスは、この曲もジョニーの物語を語っているのだと説明しています。使い慣れたヒット曲を一つ差し替える、というほど簡単な選択ではなかったのでしょう。[1]
・ノートパソコンで、曲を使う場面を見せた
約半年のやり取りの後、エルトンの夫でビジネスパートナーでもあるデヴィッド・ファーニッシュが、面会に応じました。ジェニングスはノートパソコンを持参し、映画の説明に加えて、その曲を使う場面全体を見せています。[1]
見せたのは完成映像ではなく、絵コンテを映像のようにつないだアニマティックでした。曲に合わせて、誰が、何をして、どんな感情になるのか。それが分かる段階の映像です。[1][2]
別の取材でも、監督はこの面会を振り返っています。ジョニーがピアノを弾き、父が刑務所から抜け出そうとする一連の場面を見せると、相手は使い方を気に入ってくれたそうです。曲名やあらすじだけで頼むのではなく、音楽と物語が結び付くところまで見てもらったのです。[3]
・エルトンの曲を、誰の手に託すか
ジェニングスによると、その頃には、エルトン側が別の企画でこの曲を使わないことは決まっていました。それでも面会では、自分たちの映画でどう使われるかを見てもらう必要がありました。大切な曲を、新しい観客へ届ける相手として任せられるか。それが問われていた、と監督は振り返っています。[1]
『SING』では、アニメーション制作の開始前に、少なくとも8割の曲が選ばれていたそうです。キャラクターが音楽に合わせて歌い、動く映画だけに、選曲は完成間際の飾り付けにはできません。[3]
ジョニーの舞台を支えたのは、歌声と映像だけではありません。この場面にはこの曲が必要だと考え、代わりを探しながらも交渉を続けた、制作陣の時間がありました。