『ダーティハリー』主演は当初シナトラの予定 イーストウッドに決まるまで
ハリー・キャラハンといえば、クリント・イーストウッド。ところが『ダーティハリー』は当初、フランク・シナトラが主演する映画として進んでいました。監督も、完成した映画のドン・シーゲルではありません。主演と監督の組み合わせが、そろって違っていたのです。[1]
・シナトラとカーシュナーで動いていた企画
アメリカン・フィルム・インスティチュートの作品資料は、1970年4月、9月、11月の報道を挙げ、シナトラ主演、アーヴィン・カーシュナー製作・監督という計画を記録しています。単に「候補者の一人だった」という噂より、具体的な形で進んでいた配役でした。制作中の題名は『Dead Right』です。[1]
歌手としての印象が強いシナトラですが、ここで予定されていたのは、サンフランシスコの刑事ハリー。現在の完成作の顔ぶれから考えると、随分違った企画に見えます。
・降板について、当時の発表は何と説明したか
AFIが挙げる1970年11月16日付のワーナーのプレスリリースでは、シナトラが降板した理由を、手の手術後に生じた不調と説明しています。作品資料が記録するのは、この当時の発表です。[1]
その約1か月後、12月17日付のスタジオ発表で、イーストウッドが主演し、自身の会社マルパソを通じて製作にも参加することが告知されました。シナトラの離脱から次の主演決定までを、日付のある発表で追うことができます。[1]
写真は完成した映画のハリーです。無言で相手を見据える表情も、この役の印象を作っています。ただ、1970年の企画をたどると、この顔が最初から決まっていたわけではないと分かります。
・完成したのは、イーストウッドとシーゲルの映画
最終的に主演はイーストウッド、監督はドン・シーゲルになりました。ハリーが口にする威圧的な台詞も、険しい顔も、現在ではこの二人の映画として記憶されています。[1][2]
完成作を見ると、配役は当然のように感じられます。それでも、その前にはシナトラとカーシュナーの組み合わせがありました。誰が演じ、誰が撮るかで、同じ刑事の物語がどれほど違って見えただろうか。『ダーティハリー』の企画段階には、そんな想像の余地が残っています。