主な参考資料
- AFI
- Turner Classic Movies
1959年公開。エドワード・ドミトリクが製作・監督を兼ね、刊行直後のオークリー・ホールの同名小説をロバート・アラン・アーサーの脚本で映画化した。AFIの記録では、企画初期にはジョン・ウェインの主演が報じられ、女性役にはジューン・アリソンの名も挙がったが、完成作ではリチャード・ウィドマーク、ヘンリー・フォンダ、アンソニー・クイン、ドロシー・マローンが組まれた。ドミトリクにとって企画当初から製作責任を担った最初の作品であり、脚色では原作の銀鉱労働争議を大きく削り、共同体と暴力の対立へ焦点を絞った。撮影は1958年秋、シネマスコープを用いてユタ州モアブ周辺で行われ、その期間中に出演者エドガー・ヒントンが飛行機事故で亡くなったため、ジョエル・アシュリーが代役に入った。後年の研究書は本作を興行的失敗と位置づけている。ジョン・ウェインも労働争議も企画から消え、監督が最初から統率した西部劇は、興行だけが保安官の言うことを聞かなかったのである。
原題の「Warlock」は英語で男性の魔術師を意味する語だが、本作では物語の舞台となる架空の町の名前である。エドワード・ドミトリクは回想録で、作品は魔術師とは無関係だとわざわざ説明している。住民が無法者を追い払うため私設の執行官を雇い、その力にも不安を覚えていく共同体全体が題名になっている。
オークリー・ホールの小説『Warlock』(1958)は、保安官、雇われた拳銃使い、住民、鉱夫、無法者が複数の派閥に分かれる大部の西部劇で、ピュリツァー賞の最終候補にもなった。20世紀フォックスは刊行の翌年に、シネマスコープを使う大規模な映画として公開している。単純な善悪へ整理しにくい新作小説を、ほとんど間を置かずスター映画へ移した企画だった。
エドワード・ドミトリクは、原作には西部劇と銀鉱労働争議という「二本の映画を作れるほど」の材料があったと振り返っている。脚本家ロバート・アラン・アーサーと相談し、映画では労働争議を大きく削り、無法者の支配、住民が雇った拳銃使いによる私的な秩序、正式な保安官制度という三段階に焦点を絞った。ジョニー・ギャノンが副保安官になる展開は、悪人が改心するだけでなく、町の権力が個人の銃から公的な法へ移る過程として組み直されている。
エドワード・ドミトリクはそれ以前にも製作クレジットを得た作品があったが、本作は企画の初期段階から製作責任を担った最初の映画とされる。20世紀フォックスのバディ・アドラーから原作を渡され、脚本家の選定と物語の絞り込みにも参加し、完成作では製作と監督の両方に名を連ねた。原作の労働争議を外す判断も、撮影直前の整理ではなく企画を組み立てる段階で行われている。
1958年1月の業界紙は、本作をジョン・ウェイン主演の企画として報じていた。どの役で契約まで進んだかは確認できないが、完成作で金の拳銃を持つ雇われ執行官クレイ・ブレイズデルを演じたのはヘンリー・フォンダである。出演契約の成立ではなく、製作初期に検討されたスターの記録として残っている。
リチャード・ウィドマークは当初、町に雇われる拳銃使いクレイ・ブレイズデルを演じる予定だった。本人の提案でその役をヘンリー・フォンダへ渡し、自分は無法者の一味から離れて正式な副保安官になるジョニー・ギャノンへ移ったとされる。華やかな金の拳銃を持つ男ではなく、過去の罪を背負いながら法を選ぶ人物を演じたが、完成作の出演者表では第一番目に名前が置かれている。
1958年9月の業界紙は、ジューン・アリソンが本作の主要女性役を演じる有力候補だと報じた。リリー役とジェシー役のどちらを想定していたか、契約がどこまで進んだかは記録から確認できない。完成作ではドロシー・マローンが過去への復讐を抱えるリリー、ドロレス・マイケルズが町の良心を担うジェシーを演じている。
主要製作は1958年10月初旬から12月中旬まで行われ、屋外場面はユタ州モアブ周辺で撮影された。撮影監督ジョセフ・マクドナルドは、横長のシネマスコープとデラックスカラーを使い、人物が向き合う町中の場面と、岩山が広がるユタの荒野を一つの画面設計へまとめた。町へ近づくクレイとモーガンを遠景で捉える場面では、モアブの実景に町のマット画を組み合わせている。
撮影が始まった1958年10月、マーチ役だったエドガー・ヒントンが飛行機事故で亡くなった。事故日は10月12日で、製作は始まったばかりだった。スタジオ資料によれば、モーガンの店で働くマーチ役はジョエル・アシュリーが引き継ぎ、完成作にはアシュリーがクレジットなしで出演している。
エドワード・ドミトリクは早撃ち場面に備え、カメラの回転数を落として動きを速く見せる方法や、専門家の代役を使う方法まで考えていた。ところが最初のリハーサルで、ヘンリー・フォンダ本人がカメラに記録しにくいほど素早く拳銃を抜いた。監督が実際に探すことになったのは速度を足す方法ではなく、観客が銃を抜く動作を見届けられるよう、早撃きを遅く見せる方法だった。
俳優伝記をもとにした制作記事では、リハーサルでドロシー・マローンがリチャード・ウィドマークを二度平手打ちし、ウィドマークが殴り返して侮辱的な言葉を投げたとされる。エドワード・ドミトリクはいったん二人を別々の楽屋へ戻したが、怒りが完全に収まる前に呼び戻して本番を撮ったという。撮影後には撮影監督ジョセフ・マクドナルドがボクシンググローブと「チャンピオン万歳」の札を飾り、ウィドマークも笑ったと伝えられている。
後に『2001年宇宙の旅』(1968)で宇宙飛行士フランク・プールを演じるゲイリー・ロックウッドにとって、本作は出演作の中で最初に公開された映画である。役名のないマキューン一味の若者で、台詞もなく、完成版の出演者クレジットには名前が出ない。本人公式サイトは『Tall Story』(1960)を最初の映画の仕事としているため、撮影順ではなく公開順で最初とするのが正確である。
後にテレビドラマ『バットマン』(1966)でリドラーを演じるフランク・ゴーシンは、ジョニー・ギャノンの弟ビリーを演じている。ビリーがクレイへ銃を抜き、兄の目の前で撃たれる対決は、ジョニーとクレイの関係を決定的に変える場面である。それだけ重要な役で台詞もあるが、完成版の出演者クレジットにはゴーシンの名前がない。
酔ったトム・モーガンがジョニー・ギャノンとの決闘へ向かう直前、「明日、また明日、また明日」と語り始める。これはシェイクスピアの戯曲『マクベス』第5幕第5場で、マクベスが時間と人生の空しさを語る独白からの引用である。モーガンはその言葉を途中まで口にしてから拳銃を受け取り、自分が勝てないと分かっている対決へ歩き出す。
州から来た正式な保安官は、町がクレイ・ブレイズデルへ月400ドルを払っていると確認し、自分の給料は月100ドルだと話す。どちらも劇中の設定額で、史実の平均給与を示す数字ではない。住民が合法的な保安官の四倍を私設の拳銃使いへ払う金額差によって、町が法を整える代わりに暴力を買っている構図が台詞だけでも分かる。
Twilight Timeは2019年5月21日、本作のBlu-rayを3,000枚限定で発売した。2.35対1の横長映像に加え、作曲家リー・ハーラインの音楽だけを聴ける2.0 DTS-HDトラック、劇場予告編、8ページの解説冊子を収録している。特典の約1分のニュース映像には、ギリシャ王妃フリデリキを迎えた舞踏会へ出席するヘンリー・フォンダの姿も含まれる。
クレイとモーガンの関係は、後年の批評で同性愛的な結び付きとして繰り返し論じられてきた。一方、エドワード・ドミトリク本人はその意味を意図していなかったと否定した、という話も流通している。ただし監督の発言を収録したインタビューや回想録の該当箇所は確認できず、現時点では批評上の読解と監督の制作意図を分けて扱う必要がある。
デフォレスト・ケリーは後年、ギリシャ王女ソフィアが撮影現場を訪れた日に椅子につまずき、思わず悪態をついたという話をコンベンションで語ったとされる。ヘンリー・フォンダが後から王女には言葉の意味が通じていなかったと教え、ケリーは食堂でスタッフから拍手を受けたという内容である。しかし、その証言を収めた録音や映像と王女の現場訪問記録は見つかっていない。2019年Blu-rayに収録されたのは、ギリシャ王妃フリデリキを迎えた別の舞踏会のニュース映像であり、この逸話の裏付けにはならない。
ヘンリー・フォンダが演じる拳銃使いの名を「カート・ブレイズデル」とする作品紹介があるが、米国版の出演者クレジット、20世紀スタジオの公式資料、AFIの記録は「クレイ・ブレイズデル」で一致している。外国語版で正式に改名されたことを示す資料も見つかっていないため、現時点では「カート」は別版の設定ではなく、後から広がった誤記と考えるのが妥当である。