主な参考資料
- AFI
- YouTube
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1998年公開の本作は、『逃亡者』(1993年)でトミー・リー・ジョーンズが演じたサム・ジェラードを引き継ぐ続編的スピンオフであり、ハリソン・フォードは出演せず、別の主人公と事件を置いた。 製作はアーノルド・コペルソンとアン・コペルソン、脚本はジョン・ポーグ、監督は編集者出身のスチュアート・ベアードで、撮影監督アンドレイ・バートコウィアク、編集テリー・ローリングス、美術マハー・アハマドという陣容が組まれた。 見せ場となる囚人護送機の墜落は、ボーイング727の胴体をオハイオ川のロケ地にリグで固定し、機内は別途スタジオのモックアップを用意して撮影した。 後の特別版には、その墜落場面だけを扱うメイキング「Anatomy of the Plane Crash」とベアードの音声解説が収録され、事故の規模を作品の看板に据えた制作だったことが分かる。 製作費はThe Numbersで6,000万ドル、北米興収は同サイトで約5,783万ドル、Box Office Mojoで約5,717万ドルと差があり、後者の世界興収は約1億236万ドルである。 数字の帳尻はデータベースごとにわずかにずれたが、727胴体まで川に据えた現場は、追跡劇に必要な予算の説得力をきっちり物理で示したのである。
本作は、『逃亡者』(1993)で逃亡者リチャード・キンブルを追った連邦保安官サム・ジェラードを、追跡する側の主人公として引き継いだ。トミー・リー・ジョーンズだけでなく、ジョー・パントリアーノ、ダニエル・ローバック、トム・ウッドら捜査班の俳優も再登場する。一方でハリソン・フォード演じるキンブルは登場せず、ウェズリー・スナイプスが演じる別の逃亡者と新しい事件を置いた続編的スピンオフである。
スチュアート・ベアードと美術監督マハー・アハマドは、囚人護送機の内部を調べたところ、一般の旅客機と大きく変わらないことに気づいた。そこで本作の機内には、囚人の足を固定する器具、客室を区切る檻状の扉、機械式の施錠装置、周囲から見える開放型のトイレを追加した。実在機をそのまま再現するのではなく、観客が一目で移送中の監獄だと理解できる空間へ設計し直している。
墜落の瞬間は約450キロの模型で一回撮りした。制作班は重さ約1,000ポンド、約450キロの模型を作り、全長約1,200フィート、約366メートルのミニチュア道路を走らせた。一度しか成立させられない撮影を9台のカメラで同時に記録し、準備には75人が約6か月を費やしたとされる。
メイキング 模型と実物大セットで作った航空機墜落 スチュアート・ベアード監督らが、囚人護送機の墜落場面を模型、外部セット、機内セット、水中撮影に分けて解説するDVD特典映像。 weirdlingwolf YouTubeで見る ↗模型で墜落の瞬間を撮った後、画面は実物大の機体へ切り替わる。美術班はボーイング727の胴体をオハイオ川のロケ地にリグと呼ばれる支持構造で固定し、浸水させる外観を撮影した。機内は別のスタジオへ作った実物大セットを機械で揺らし、機体が上下逆さまになって沈む場面では、反転させて水槽へ沈められる胴体を使ったため、同じ墜落の中に模型、川の実物大外観、可動式の機内、水中セットがつながっている。
飛行機事故の後に続く湿地の追跡は、テネシー州北西部のリールフット湖で撮影された。道中に現れる「Roy Willy's Barbeque」も映画のために一から建てた店ではなく、既存の店舗ロケを美術班が改装した外観である。実際の湖と建物を使いながら、看板や外装を追跡劇の舞台へ変えている。
マーク・シェリダンが建物から列車へ飛び移る場面では、スタントマンのクレイ・ドナヒュー・フォンテノーが実際にケーブルで振り出された。本人によれば出発地点は約18階の高さで、走行中の列車に合わせて着地する必要があり、自身の仕事の中でも特に難しいスタントだった。画面では約7秒だが、撮影班は約10週間かけて計画し、当日の準備にも約8時間を費やしたと報じられている。
特別捜査官ジョン・ロイスを演じたロバート・ダウニー・Jr.は、後年、本作の撮影をほとんど覚えていないと語った。残っているのは、防弾チョッキを着けて湿地を走り回り、『逃亡者』(1993)に及ぶふりをしていたような感覚だという。同じ取材で『キスキス,バンバン』(2005)の緻密な物語を高く評価しており、本作については出演者本人が完成後も厳しい距離を置いていた。
本作のDVDには、囚人護送機の墜落場面だけを約13分かけて解説するメイキング『U.S. Marshals: Anatomy of the Plane Crash』(1998)が収録された。内容は、模型飛行機、外部セット、機内セット、着地点、水中脱出、墜落事故の資料調査、ミニチュア道路、『逃亡者』(1993)の列車事故との比較など9項目に分かれている。一つの場面を、模型、実物大セット、水中撮影へ分解して作ったことを制作班自身が説明する記録である。
本作は1998年3月6日に北米2,817館で公開され、最初の週末に1,686万3,988ドルを記録した。Box Office Mojoの集計では北米5,716万7,405ドル、海外4,520万ドル、世界1億236万7,405ドルである。The Numbersの北米累計は約5,783万ドルと少し高く、製作費も同サイトでは6,000万ドルとされるため、製作費と興行の比較にはデータベース間の差が残る。
ウェズリー・スナイプスが演じた逃亡者マーク・シェリダン役には、当初サミュエル・L・ジャクソンが決まっていたという話がある。ただし、企画段階の業界報道、制作会社の配役資料、ジャクソンまたはスチュアート・ベアードの証言は見つからない。候補として検討されたことと出演契約の成立は別なので、ジャクソン案がどこまで進んだのかは断定しない方がよさそうだ。
冒頭でサム・ジェラードが鶏の着ぐるみから現れる潜入逮捕は、初期脚本では司祭の服装だったが、スチュアート・ベアードと衣装デザイナーのルイーズ・フロッグリーが変更したという話がある。ただし、その内容を示す脚本稿、衣装部資料、二人の直接証言は見つかっていない。実在の連邦保安官がおとり捜査で鶏の着ぐるみを使った記録もある。現実の事件から着想を得たのなら面白いが、今ある資料だけでは二つを結べない。
ウェズリー・スナイプスは泳げなかったため、墜落した機内から脱出する場面と、湿地でサム・ジェラードから逃げる場面の水中撮影を嫌がったという話がある。後年の放送局記事にも同じ説明が載っているが、スナイプス本人の発言、撮影時の安全記録、スタント班の証言は見当たらない。本人の泳力にかかわる話だけに、撮影現場の裏付けなしで事実と決めつけるのは避けた方がよさそうだ。
試写後に黒幕を変更したという説がある。しかし、比較できる初期脚本、編集記録、試写報告、追加撮影の日程は見つからず、スチュアート・ベアード、脚本家ジョン・ポーグ、編集者テリー・ローリングスもこの変更に言及していない。本当に差し替えたのなら大胆な決断だが、完成版の印象から生まれた説という可能性も残る。