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2010年公開。2001年にオハイオ州で無人の貨物列車が暴走した「CSX 8888」事故を基に、舞台をペンシルベニアへ移し、トニー・スコット監督が災害映画として大幅に増幅した作品である。スコットはCG頼みの列車映画にせず、9両ほどの機関車を調達し、実際の鉄道員に運転を任せ、全体の約9割を時速40〜70マイルで動く列車上やその周辺で撮影したと語っている。道路と並走する線路を探し、走行車、列車上、ヘリコプターへ同時にカメラを置いたため、スタッフは雨や雪だけでなく本物の脱線事故にまで見舞われた。大がかりな脱線場面も複数の実車と十数台のカメラを使って分割撮影され、列車という融通の利かない主演俳優を、安全会議の積み重ねでどうにか演出している。暴走列車を止める映画の現場では、監督だけが誰より勢いよく実物主義へ突っ走っていたのである。
『アンストッパブル』は、2001年にオハイオ州で起きたCSX 8888暴走事故を下敷きにしている。無人の貨物列車が約66マイル走った実話を、映画では777号暴走として大きく脚色した。
現実のCSX 8888事故と映画の展開はかなり違う。映画は速度や危険物、街への脅威を増幅しており、実話そのままではなく娯楽用に加速された物語として見ると分かりやすい。
トニー・スコットはCGだけに頼らず、実物の列車と線路でアクションを撮る方向を重視した。制作関係者も、本作ではほとんどを実際に撮ったと語っており、画面の重さはその物量から来ている。
撮影では実在の鉄道路線が使われ、昼に撮影し、夜には通常の貨物運行が行われたとされる。映画のために作った完全なセットではなく、生きている鉄道インフラを使った現場だった。
劇中のAWVR機関車は、カナダ太平洋鉄道やW&LEなどから借りた機体を塗装して使っている。架空鉄道の記号をまとっていても、画面に映るのは本物の貨物機関車だ。
本作の撮影は、2009年11月に列車の一部が脱線したことで1日遅れたと記録されている。画面外でも、巨大な鉄道アクションには現実の重量物を扱う怖さがつきまとっていた。
『アンストッパブル』は、トニー・スコットが生前に監督した最後の長編映画になった。高速編集と実物アクションの圧で押し切る作風が、最後までトニー・スコットらしい一本として残っている。
『アンストッパブル』は実話ベースだが、人物関係や危険物、列車のスピードなどは映画向けに再構成されている。実際の事故記録そのものとして見るとズレるため、完全再現ではない実話映画として扱うべき作品だ。
『アンストッパブル』は開発初期に『Runaway Train』という題名で進んでいた。最終的にタイトルが変わり、暴走列車そのものよりも、止められない状況の圧を前面に出した名前になった。
企画段階ではロベルト・シュヴェンケやマーティン・キャンベルの名前が関わった後、トニー・スコットが監督に就いた。完成版の高速で荒い手触りは、トニー・スコット色に染まった結果だ。
予算や開始時期をめぐる調整の中で、デンゼル・ワシントンは一度企画から離れたとされる。その後戻ったことで、ベテラン機関士と若手の対比が現在の形になった。
『アンストッパブル』は、西ペンシルベニア周辺で撮られた映画として当時かなり大規模な製作だった。のちに別の大作に抜かれるまで、地域最大級の撮影として語られている。
終盤の高架カーブには、オハイオ州ベレアとウェストバージニア州ベンウッドを結ぶB&O鉄道橋が使われた。ミニチュアではなく、本物の高架橋の怖さを画面に入れている。
暴走列車777と後続機767には、カナダ太平洋鉄道から借りたGE AC4400CWが使われた。塗装は架空会社AWVRだが、実体は本物の大型貨物機関車だった。
映画の暴走列車は777号だが、元になった現実の事故ではCSX 8888号が暴走した。数字まで変えたことで、映画は事実そのものではなく、現実をもとにした別の緊急事態として組み直されている。