初代で描けなかった雨がおもちゃを襲う
『トイ・ストーリー4』の冒頭では、豪雨で流されそうになったRCを、おもちゃたちが救おうとします。水が地面を走り、身体に当たり、しぶきが上がる。初代『トイ・ストーリー』では、その「雨が何かに当たる」表現ができませんでした。[1]
全4作に携わった技術スタッフのビル・リーヴスによれば、1995年当時は、雨をキャラクターやセットへ相互作用させる道具がありませんでした。第4作の雨は、24年の変化が見える場面でもあります。[1]
・初代は雲と濡れた道路で、雨を感じさせた
初代の制作陣は、できないことを画面の組み立てで補いました。空へ雨雲を描き、道路を濡れているように見せ、窓には雨の効果を置く。雨粒が物に当たる様子を作り込まなくても、嵐の中だと分かる工夫です。[1]
第4作では、その遠回しな見せ方だけでは足りません。RCが水に流されるので、水そのものが危険を作らなければならないのです。背景の天気だった雨が、おもちゃの行動を妨げる相手になります。[1][2]
・一度に全部の水を計算しない
Houdiniは、水の流れなどを計算してCG映像を作るためのソフトです。開発元SideFXの制作取材によると、この救出場面では、降る雨、地面のしぶき、排水溝の水、キャラクターへ当たる水などを作り分けました。[2]
大きな町並みを見せる画面と、おもちゃのすぐ近くで見る画面では、必要な細かさが違います。雨を一つの巨大な計算だけで完成させるのではなく、何が、どこへ、どう当たるかに応じて、担当者と作り方を分けています。[2]
特にキャラクターへ当たるしぶきは、芝居に合わせて位置とタイミングを整えました。流体を計算すれば、それだけで狙った演技になるわけではありません。手を伸ばす瞬間や、身体が動く瞬間に、水の反応も合わせる必要があるのですね。[2]
・本物のおもちゃを濡らして観察した
制作チームは、過去の『トイ・ストーリー』の商品をシャワーで濡らし、水の振る舞いも観察しています。素材や形によって、水がどこへ残り、どこから落ちるかが違うためです。[2]
さらに、雨が降っている環境として、植物の葉の動きなども加えました。水滴だけを増やすのではなく、周囲の物にも「雨に打たれている反応」を持たせています。[2]
・細かく作るのは、小さな救出劇のため
画面の水は本物ではありませんが、おもちゃにとっては、流れに負ければ戻れない場所です。足元の小さな水の動きが見えるほど、RCを引き戻そうとする作業が具体的になります。
初代で天気を伝えるために工夫した雨が、第4作では物語を動かす水になった。冒頭を見返すときは、雨粒の数より、水が当たった物に何が起きているかを追ってみてください。技術の進歩が、救出の難しさへ変わっているのが分かります。