主な参考資料
- Animation World Network
- The Guardian
- D23
- WIRED
- CGW
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1999年公開。当初はディズニーの定番だったビデオ向け続編として始まったが、ピクサーは出来栄えを見て劇場作品へ格上げするよう求め、内容にも満足できず、公開日を動かさないまま物語と映像の大部分を約9か月で作り直した。制作途中にはサーバー上のデータが誤って大量削除され、通常のバックアップも不調だったが、技術監督ゲイリン・サスマンが自宅に置いていた作業用コピーなどから復旧された。ただし救出された旧版も創作上の判断で大幅に捨てられ、最終版は世界興収約5億ドルの成功となった。玩具を救う映画の現場では、まず映画そのものを削除コマンドと納期から救う必要があったのである。
当初の企画は、劇場公開を前提としないビデオ向け続編だった。1990年代のディズニーでは劇場アニメの続編を家庭用作品として出す例が多く、本作もその流れで少人数の別チームが動き始めた。しかし制作途中の素材が劇場映画になり得ると判断され、ピクサーの主力を投入する長編へ方針が変わった。アンディの家を出て繁華街、巨大な玩具店、空港まで進む構成は、その格上げに合わせて拡張された。
初期版は相当量まで制作されていたが、ジョン・ラセターらは劇場作品として十分な水準に達していないと判断した。公開日は商品展開などの都合で動かせず、リー・アンクリッチとアッシュ・ブラノンを含む体制で、物語、編集、レイアウト、照明を約9か月で組み直した。ジェシーの喪失体験や、ウッディが「展示される価値」と「遊ばれる時間」の間で迷う筋は、この立て直しで作品の中心になった。
制作中、誤って実行された削除命令によって、ウッディの帽子や靴、キャラクター本体、背景、照明データが次々とサーバーから消えた。通常のバックアップも正常ではなく、約2年分の作業の大半が危機に陥った。育児のため在宅勤務していた監督テクニカル・ディレクターのガリン・サスマンが手元に同期データを持っており、その機材をスタジオへ運んで復旧作業の土台にした。ただし救われたのは制作途中の旧版で、完成版はその後の全面改稿によって大きく作り直されている。
公開日を変えずに旧版を作り直したため、編集部を含むスタッフは長時間勤務を重ねた。36時間から48時間に及ぶ作業、疲労による涙、手根管症候群などの反復性障害が伝えられ、エド・キャットムルも後に組織運営上の失敗として振り返っている。完成作の成功だけで覆い隠せない制作トラブルであり、日本版Blu-rayとDVDにも「不眠不休の編集作業」と題した公式特典が収録されている。
ビデオ向けに進められた初期版では、ウッディが出会う一座に「セニョリータ・カクタス」というメキシコ風の踊り子人形がいた。彼女とプロスペクターは、子どもに遊ばれたウッディを見下す収集品として描かれ、終盤には玩具たちがアルの車を奪う追跡劇も考えられていた。劇場版への全面改稿でジェシーが生まれ、未開封品の優越感だけでなく、愛された後に捨てられる恐怖が物語へ加わった。
トム・ハンクスは、続編がビデオ向け作品として計画されていると知り、ティム・アレンと共に異議を唱えたと回想している。とりわけアレンは、当時ディズニー傘下のテレビ局で放送された人気ドラマ『ホーム・インプルーブメント』の主演者で、会社へ意見を届けやすい立場だったという。制作陣だけでなく、ウッディとバズを演じる二人も劇場作品にふさわしい扱いを求めていた。
ウッディがレコードや人形、弁当箱など大量のラウンドアップ商品を見つける場面では、声優へ完成台本を読むだけの録音をさせていない。制作側は商品の試作品を録音ブースへ持ち込み、トム・ハンクスが初めて目にしたときの歓声や言葉を収録した。その自発的な反応がウッディの台詞へ取り込まれたため、長く忘れていた自分の過去を一度に発見する高揚が細かく変化する。
ジェシーが持ち主エミリーとの日々を思い出す「ホエン・シー・ラヴド・ミー」は、活劇を止める約三分のバラードである。ランディ・ニューマンは幼い観客が静かな場面を見続けられるか懸念したが、制作陣はジェシーの恐怖を理解するために必要だと考えた。トム・ハンクスとティム・アレンも映像を見て涙を流したと語っており、曲はアカデミー歌曲賞候補になった。
初期のブルズアイは言葉を話し、マーティン・ショートが声を担当する案まであった。ジョン・ラセターは、台詞で性格を説明するより、ウッディへ駆け寄って顔をなめ、耳や目、足取りだけで感情を示す方が愛されると判断した。完成版では馬でありながら大きな子犬のように動き、ジェシーとウッディの重い過去を和らげる存在になっている。
「ウッディのラウンドアップ」は実物の操り人形を撮影したように見えるが、登場人物は本編と同じ系統のCGモデルから作られている。動きを原始的な人形劇らしく制限し、いったんカラーで描画した後に白黒のNTSC映像へ変換した。さらに画面の揺れ、ネガの傷、染み、走査線、にじみ、静電ノイズを加え、古い番組の映像がガレージに保管されていた質感まで再現した。
プロダクション・デザイナーのビル・コーンは、各場面の小さな絵を連ねたカラー・スクリプトを用い、物語の強弱を光と色の変化へ対応させた。アルの部屋はくすんだ色と人工照明で閉塞感を作り、トイ・バーンは強い色と巨大な棚で玩具にとっての異世界を表す。終盤の空港では、冷たい工業空間の中へ救出劇の速度を通す色彩構成が組まれた。
アルの部屋にも玩具は大量にあるが、アンディの部屋のような温かさはない。制作陣は高層建築の中に小さな住居を置き、色をくすませ、照明を人工的にし、玩具から見れば通風口が脱出路に見える空間として設計した。子どもが遊ぶための部屋と、収集品を利益へ換える大人の部屋を、美術と光だけでも対照化している。
アルのトイ・バーンは、人間の買い物客から見ればありふれた量販店である。制作陣は玩具の高さに仮想カメラを置き、棚、通路、照明の距離を控えめに誇張して、天井まで続く巨大空間へ変えた。そこへ同じ姿のバズを何百体も並べることで、アンディのバズが「唯一の自分」だと思っていた第1作の経験を、今度は大量生産品の群れとして見せている。
4年間で陰影や表情制御の技術が進み、新しく作ったジェシーらの隣へ前作のウッディを置くと、質感の差が目立った。ガリン・サスマンの技術チームはウッディも更新し、顔の細かな表情を増やし、デニムの織り目が脚の曲面に沿うところまで表面を作り込んだ。続編のウッディは同じデザインを保ちながら、近づくほど情報が増えるモデルになっている。
当時のCGは硬い玩具を得意とする一方、人間の皮膚を自然に見せることが難しかった。アルの顔を作るため、アニメーターのミッチ・プラーターは自分の肌を走査し、毛穴や細かな凹凸を表面へ反映する処理を書いた。汗ばんだような肌と不均一な質感が加わり、つるりとしたプラスチックの玩具とは違う素材として描き分けられた。
アンディの犬バスターには約400万本の毛が設定され、それぞれが光と影へ反応するよう描画された。硬い床やプラスチック製品に適していた第1作のCGから四年が経ち、柔らかな毛が走る動きに遅れて揺れる表現まで扱えるようになった。ウッディを勢いよく運ぶ短い場面にも、続編の技術更新が集まっている。
完成した本編は122,699フレームで構成され、各フレームのデータ量は最大4ギガバイトに達した。一枚の描画時間は単純な場面で約10分、複雑な場面では最長3日まで伸び、ピクサーは1400台のSunプロセッサを並べたレンダーファームで処理した。空港の荷物搬送設備や大量の箱、毛、反射を同時に描く場面ほど計算量が増えた。
本作はコンピューター上で映像を作っただけでなく、完成マスターをデジタルで用意し、デジタル映写機で上映するところまで一貫して行った最初の長編映画とされる。従来はCG作品でも最終的にフィルムへ焼き付けて上映していたが、一部劇場ではその変換を挟まなかった。日本でもDLP方式による上映が行われ、映画館の映写工程そのものが変わり始めた時期の作品である。
アルが呼ぶ修理屋は、ピクサー短編『ゲーリーじいさんのチェス』の主人公ゲーリーである。初期案ではアル自身がウッディを直す構想もあったが、収集家のアルに専門技術まで持たせず、すでに人間として細かく動かせるゲーリーのモデルを転用した。ケースの引き出しには短編で使ったチェス駒も入り、洗浄、縫合、塗装という精密な手仕事が一続きで描かれる。
ウィージーが置かれた棚では、光の中にほこりが舞い、表面にも厚く積もっている。当時は細かな粒子を自然に見せることが難しく、制作陣はまず一粒の形と動きを作り、その像をコンピューターで大量に分布させた。単なる汚れではなく、壊れた玩具が長く忘れられていた時間を画面へ刻むためのエフェクトである。
ハムがアルのトイ・バーンのCMを探して高速でチャンネルを変える数秒間には、『ルクソーJr.』『レッズ・ドリーム』『ティン・トイ』『ニックナック』が差し込まれている。さらにピクサーが制作した企業CM、旧社名ロゴ、スティーブ・ジョブズが率いたNeXTの印も混ざる。長編映画へ進む前に短編と広告で技術を磨いたスタジオの履歴が、テレビ番組として並んでいる。
ウッディを連れ去った車の情報から、エッチ・ア・スケッチはアルのトイ・バーンまでの地図を描く。そこに記された「1001 West Cutting Boulevard」は架空の番地ではなく、本作を制作していた当時のピクサー社屋の住所である。ザーグの箱にある「Printed in Point Richmond」という表示も同じ制作地を指し、玩具の世界の街へスタジオの所在地を組み込んでいる。
冒頭でバズが飛ぶ異星の峡谷は、『バグズ・ライフ』のアント・アイランド用に作られた地形を改造したものである。変換時に岩が空中へ残る偶然が起きたが、奇妙な惑星らしいとして画面に残された。さらに同作の箱、小道具、ハイムリックやフリックが背景とNG集へ現れ、直前の長編で作った資産を別世界の景観と冗談へ転用している。
新型バズとザーグが戦うエレベーターの縦穴は、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』のルークとダース・ベイダーの対決を組み替えている。ザーグは父親だと告げ、バズは衝撃を受けるが、落下した後の二人は仲直りしてキャッチボールを始める。重い父子の悲劇を、設定を本気で信じる玩具同士の即席の家族遊びへ変えたパロディである。
劇場公開版の架空NG集には、箱の中のプロスペクターが二人のバービーへ『トイ・ストーリー3』(2010)の役を与えられると持ちかけ、カメラに気づいて態度を変える場面があった。映画業界の「キャスティング・カウチ」を笑いにした内容で、#MeToo運動後の2019年に発売された4K版とデジタル配信版から削除された。同じ映画でも、現在流通する版ではエンドクレジットの内容が異なる。
ウッディ救出へ向かう前、バズが仲間を鼓舞する演説では、北米版の背景に星条旗が広がり、国歌を思わせる音楽が流れる。国際版では同じ画面が回転する地球儀と花火へ置き換わり、ランディ・ニューマンによる別の短い曲が使われた。台詞は同じでも、愛国的な演説の笑いを海外へ伝えるために映像と音楽を作り分けている。
交差点の場面は郊外案から作り直した。未公開版では郊外の道路を渡る構成だったが、冒険の規模と危険が十分に伝わらなかった。完成版では高層建築に囲まれた多車線道路へ移し、玩具が交通コーンの中に隠れて一歩ずつ進むたびに車線が乱れ、大事故寸前の渋滞が起きる場面へ作り直した。
初期版では、レックスが怪獣になり、軍曹たちが玩具を避難させ、バズが怪獣と戦う遊びが描かれていた。レックスの不器用な動きでウッディが窓から落ち、そのままガレージセールの箱へ入る。しかし誘拐の発端が偶然に頼りすぎるため削られ、完成版では壊れたウィージーを救おうとしたウッディ自身の行動が危機を招く展開へ変更された。
【未確認】飛行機の前脚格納部から脱出する場面は、当初ジェシーが足を滑らせ、ウッディが助ける構成だったという。ジョーン・キューザックが、ジェシーの勇気と強さを示すため役割を逆にしてはどうかと提案し、完成版ではジェシーがウッディを引き上げる。音声解説の該当箇所を再確認できれば、キャストによる具体的な脚本提案として強い候補になる。
【未確認】第1作の初期案ではバービーが重要な役を担う予定だったが、マテルの許諾が得られずボー・ピープへ置き換えられたとされる。映画公開後、ミスター・ポテトヘッドなど既存玩具の売上が伸び、続編ではツアーガイド・バービーが登場した。彼女が「1995年、先見の明のない小売店は十分な人形を注文しなかった」と説明する台詞は、バズ玩具の品薄を作品側から笑う仕掛けになっている。
【未確認】空港で係員が「まだ荷物が来るぞ」と叫ぶ声は、英国のテレビ司会者アンディ・ピーターズである。メイキング番組の取材中にジョン・ラセターから一言の出演を提案されたが、米国で録音する就労許可がなかったため、ロンドンのスタジオへ戻り、衛星回線を通じて演出を受けたと伝えられる。
第1作からスリンキーを演じたジム・ヴァーニーは、本作の米国公開から約3か月後の2000年2月10日に死去した。そのため本作が、彼の声による最後の長編『トイ・ストーリー』(1995)となった。後の作品ではヴァーニーの親友だったブレイク・クラークが役を引き継ぎ、南部訛りを含む声の印象をつないでいる。
2000年のゴールデングローブ賞で、本作はミュージカル/コメディ部門の作品賞を受賞した。現在のような長編アニメ専用部門が設けられる前であり、実写映画を含む候補と同じ作品賞の枠で選ばれている。「ホエン・シー・ラヴド・ミー」も同年の歌曲賞候補となり、続編の物語と音楽が別々に評価された。
米国では1999年11月24日に一般公開され、感謝祭を含む5日間で8,010万ドルを記録した。ディズニーの1999年年次報告は、これを当時のハリウッドにおける感謝祭公開の最高記録としている。低コストのビデオ向け続編として始まった企画が、劇場作品へ作り直された末に、大規模な観客動員を生んだ。
3D版は完成映像を平面変換しなかった。制作陣は約4か月かけて旧データを探し出す「デジタル考古学」を行い、各場面へ第二の仮想カメラを追加した。左目用と右目用の映像を別々に再描画し、さらに約6か月をかけて立体視を調整したため、CG空間を別のカメラで撮り直す工程に近い。
日本版Blu-rayとDVDには、データ消失事故を当事者が振り返る「『トイ・ストーリー2』が消去された日」と、短期制作の編集現場を扱う「不眠不休の編集作業」が収録されている。音声解説、メイキング、未公開場面、デザイン、音楽と音響の資料もまとめられ、2019年の4K UHD商品では同梱Blu-rayへ特典が引き継がれた。4K UHD本編ディスク自体には特典を収録していない。
データ消失事件をめぐって、『トイ・ストーリー2』は自宅コピーだけで完成版が丸ごと救われたと語られがちだ。バックアップや当時の制作状況が絡む話で、奇跡の一台だけで全部解決したと見るのは盛られた伝説だ。