『時をかける少女』(1983)は、原田知世の瞳のために床まで掘った
『時をかける少女』(1983)では、原田知世の瞳に光を入れるため、撮影用のレールを敷く床まで掘り下げました。 画面に映る小さな輝きのために、照明とカメラの位置を、セットの作りから変えていたのです。[1]
・照明は上へ、カメラは下へ
大林宣彦監督は、2016年の取材で、俳優を見るときに目を重視すると説明しています。髪型や衣装を変えても、目にはその人の考えや心が表れるという持論でした。そこで原田の瞳に必要だったのが、光源が映り込む小さな反射光です。[1]
照明部は時間をかけてライトをセットの高い位置へ上げました。撮影部は、その光が目へ届く位置から撮るため、移動撮影のレールを床より低く敷きます。これは完成映像に後から光を描き足す方法ではなく、撮影時に原田の目と照明とカメラの位置関係を整える仕事でした。[1]
大林は、スクリーンでは目が横幅数メートルにまで大きくなるため、暗いままなのか、小さく光る点があるのかで映り方が変わると語っています。セットの床を掘るほどの作業が、観客には「瞳が輝いて見える」という形で届く。 原田の顔をどう映すかという、ごく小さな画面の問題に、撮影班全体が取り組んでいました。[1]