あの竜巻は、約11メートルの布だった
『オズの魔法使』で、カンザスの農場へ迫ってくる竜巻。あの細長い渦の正体は、長さ35フィート、約11メートルの布製の筒でした。特殊効果を担ったアーノルド・ギレスピーは、空港で風向きを見る吹き流しから、竜巻の形を作る着想を得たといいます。[1]
・最初のゴム製は、うまくねじれなかった
ASCの制作解説によると、最初に試したのは薄いゴム製の吹き流しでした。上を天井側の移動装置に付け、下は見えない溝に固定し、動かして渦のように見せる計画です。ところが、ゴムでは思うようにねじれません。[1]
そこで材質をモスリンという布へ変更しました。動きはよくなったものの、今度は下側が外れてしまいます。さらに作り直してピアノ線で補強し、激しく曲がりながら移動する形へ近づけました。初めから完成した仕掛けがあったわけではないのです。[1]
・布の輪郭を、土ぼこりで消す
筒の形を動かすだけでは、農場へ迫る嵐にはなりません。上から細かい土を入れて、布の目から外へ漏れるようにし、輪郭をぼかしました。地面のあたりにも、圧縮空気と土ぼこりを送り込んでいます。[1]
下の完成画面では、竜巻の足元が煙るように広がり、農家や柵よりはるかに高く伸びています。実際の農場を撮った記録映像ではなく、模型の風景とこの仕掛けを組み合わせた画面です。
・空まで、一つの工夫ではなかった
嵐の空には煙を使い、カメラの前のガラス板には塗装した綿を配置して、竜巻の上端や装置を隠しました。農家の模型を空へ持ち上げるショットには、別にワイヤーも使っています。[1]
布をねじる、土を漏らす、空を煙らせる、装置を隠す。 それぞれの役割を重ねることで、観客の目には一つの竜巻になります。「ストッキングを風に当てただけ」といった簡単な仕掛けではなかったのです。