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1980年公開。スタンリー・キューブリックはスティーヴン・キングのベストセラーを選びながら、ダイアン・ジョンソンと脚本を組み直し、原作への忠実さよりも映像と心理の設計を優先した。撮影ではホテル内部の大規模セットを英国エルストリー・スタジオに築き、発明者ギャレット・ブラウンのステディカムを低い位置で走らせる新しい機材まで用意して、廊下や迷路をカメラそのものが徘徊する空間へ変えた。長期撮影と反復は俳優にも重く、シェリー・デュヴァルは後年、少なくとも35テイクを重ね、最初のリハーサルから全力で泣き叫ぶことの過酷さを語っている。ただし彼女自身はキューブリックを単純な暴君としてだけは語っておらず、現場の神話を本人不在でさらに残酷に脚色するのも考えものだ。完成したホテルは怪異で満員だったが、制作工程のほうも十分に人を追い詰める造りだったのである。
階段でバットを振る場面が127テイクだったという有名説は、現行情報ではかなり怪しい話として扱う必要がある。近年の整理では、ギネス記録は別場面の148テイクに更新され、階段シーン自体はもっと少ないテイク数だったとされる。
ドア破りの場面で飛び出す「Here’s Johnny」は、ジャック・ニコルソンが米テレビ番組の決まり文句を持ち込んだアドリブだったとされる。英国暮らしが長かったキューブリックは、その元ネタを知らなかったとも語られている。
原作者スティーヴン・キングは、ニコルソンのキャスティングやウェンディの描写、家族愛の薄さに強い不満を示したとされる。のちに自身監修でドラマ版を作ったほど、映画版との確執は有名だ。
原作の217号室は、映画では237号室に変更された。外観ロケ地のティンバーライン・ロッジが、実在する217号室を客が避けることを心配したためだと公式系資料で説明されている。
三輪車が廊下を進む低い視点や迷路の移動撮影には、ギャレット・ブラウンのステディカム技術が大きく関わっている。車椅子型の低いマウントなど、ホテルを滑るように進む映像のための工夫が重ねられた。
オーバールック・ホテルは、外観がオレゴン州のティンバーライン・ロッジ、内装の参考がヨセミテのアワニーホテルとされる。実際の室内は主に英国スタジオのセットで作られ、現実にはつながらない空間のズレも不気味さを生んでいる。
「All work and no play…」のタイプ原稿は、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語版などで別の慣用句に差し替えられたとされる。単なる字幕ではなく、画面に映る紙そのものを各国向けに作り直していた。
エレベーターから血が流れ出す場面は、大量の血糊と長い準備期間を要したとされる。実際の撮影は数テイク程度だった一方で、準備には約1年規模の試行錯誤があったという証言が残る。
1979年、エルストリー・スタジオのコロラド・ラウンジセットは火災で焼失したとされる。再建後のステージは、のちに別の大作映画のセットにも使われたという、映画史の裏でつながる事故だった。
ジャック役には、ロバート・デ・ニーロやロビン・ウィリアムズ、ハリソン・フォードなど複数の有名俳優候補が語られている。最終的にジャック・ニコルソンになったことで、観客が最初から危うさを感じる独特のキャスティングになった。
ラストに映る1921年の舞踏会写真は、実在の古写真にニコルソンの顔を合成したものとされる。2024年には調査によって、ロンドンのホテルで撮られたバレンタイン舞踏会写真が元資料だった可能性が高いと報じられた。
ダニー役のダニー・ロイドには、撮影中にホラー映画を作っているとは知らせなかったとされる。子役を怖がらせないための配慮があり、指を動かす仕草は本人のアイデアだったとも語られている。
グレイディ姉妹は映画では双子のような強烈なイメージで知られるが、原作では8歳と10歳の姉妹だったとされる。ダイアン・アーバスの双子写真との関連もよく語られるが、制作側では見解が分かれている。
ウェンディ・カルロスとレイチェル・エルカインドは本作のために音楽を作ったが、完成版では既存の現代音楽も多く使われ、オリジナル曲の多くは採用されなかったとされる。恐怖の音は、作曲と選曲のせめぎ合いで作られていた。
日本語吹替では、テレビ東京「木曜洋画劇場」版のジャック役として石田太郎が知られている。この吹替は長くソフト未収録だったとされ、配信や放送履歴を追うファンの間で注目されてきた。
本作をアポロ11号月面着陸捏造説と結びつける話は、ドキュメンタリー『Room 237』などで有名になった陰謀論的な解釈だ。制作事実として裏付ける根拠は弱く、映画トリビアとしては「そう読まれてきた噂」として扱うのが妥当だ。
キューブリックの噂をめぐって、『シャイニング』には月面着陸映像への関与を暗号のように告白したという都市伝説がある。作品解釈として語られることはあるが、制作事実として扱える根拠はない。