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2018年公開。スティーヴ・オルテンの原作は刊行前の1996年にディズニー傘下が映画化権を取得したものの頓挫し、その後もニュー・ラインなどを渡り歩いた末、約20年をかけてようやく巨大ザメがスクリーンへ浮上した作品である。企画の予算規模に各社が尻込みするなか、プロデューサーのベル・エイヴリーが中国側の出資をまとめ、ワーナー・ブラザースとグラヴィティ・ピクチャーズによる米中共同製作として成立した。約1億3,000万ドルの制作費を投じ、ニュージーランドと中国で撮影し、中国の俳優や海南島の舞台を物語へ組み込むことで、輸入映画ではなく正式な共同製作として中国市場へ乗り込んだ。ジョン・タートルトーブ監督は血みどろの恐怖映画より幅広い観客向けの娯楽作へ舵を切り、完成作は世界で5億ドルを超える興行収入を上げ、米中合作映画として異例の成功を収めた。絶滅したはずの怪物よりもしぶとかったのは企画そのものであり、ハリウッドが20年かけて発見した最大の深海資源は、結局のところ中国市場だったのである。
ジェイソン・ステイサムは俳優になる前、飛込競技でイングランド代表となり、1990年コモンウェルスゲームズの三種目に出場していた。1メートル飛板では8位、3メートル飛板と10メートル高飛込では11位に入っている。本作でも水中場面の多くを自ら演じ、ジョナスが迷わず海へ入る説得力を競技経験で支えた。
ルビー・ローズはニュージーランドの水槽で撮影中、衣装の下の保温着と靴へ水がたまり、泳いでも体が沈む状態になった。近くにいた安全ダイバーが異変に気づいて引き上げたため、大事には至らなかった。この事故の後、現場では本当に危険なときは役名ではなく「ルビー」と叫ぶ合図が決められた。
クメウ・フィルム・スタジオには、広い水面を撮る水槽と、深い水中アクションを撮る円形水槽が用意された。スタジオだけでは再現できない航行や長距離の動きは、ハウラキ湾で約29日間撮影され、期間中に使われた船は約50隻に及んだ。水槽では安全と反復性を確保し、外洋では本物の波と距離を得る分業だった。
ジョナスがメグの目を攻撃する場面に備え、俳優がつかまれる実物大の半顔模型が製作された。だが巨大な造形物を水中で引くと、表面全体が強い抵抗を受け、撮影に必要な速度では動かせなかった。俳優との接触位置を確かめる役目は果たしたものの、完成画面のメグは主にCGで構成された。
原作者スティーヴ・オルテン側がディズニーと映画化契約を結んだのは1990年代で、公開はその22年後だった。初期段階では複数の脚本が検討され、ヤン・デ・ボンやギレルモ・デル・トロの名も企画に関わったが、予算や脚本の問題で製作へ進めなかった。権利が移動した末、ワーナーと中国側企業の体制でようやく撮影に到達した。
2015年には『ホステル』のイーライ・ロスが監督として企画へ参加していたが、翌年までに離脱した。後任のジョン・タートルトーブは、脚本を恐怖一辺倒のサメ映画から少し離し、笑いや自己認識を備えた大作娯楽映画へ調整した。血まみれのホラーではなく、幅広い観客が楽しめる巨大ザメ映画という完成版の調子は、この交代後に固められた。
PG-13の制約がなければ、残酷描写は大きく変わっていたと監督は説明している。血や身体の一部が残り、後から頭部だけだったと分かる案もあったが、完成版には採用できなかった。そのため多数の人間が襲われる場面でも、恐怖は切断描写ではなく、水しぶき、衝撃音、群衆の反応へ置き換えられた。
原作の日本人一家が中国人一家へ変わった。原作の日本人タナカ家に相当する中心人物は、中国人のジャン博士、娘スーイン、孫メイインへ再構成され、物語の重心もサンディエゴから中国近海へ移された。終盤の海水浴場には、海南島の三亜湾が選ばれている。
映画化では原作の場面を多く残しつつ、順序と重要度が大きく変えられた。数百ページの物語を収めるため、複数の人物を一人へ統合し、性別を入れ替え、シリーズの別巻からも要素を取り込んだ。ローリーやスーイン、ヘラーの役割が原作と一致しないのは、この再編による。
監督ジョン・タートルトーブは、物語を公開時点から「約5年後」と考えていた。深海探査の知識や装置は現実の延長に置きながら、マナ・ワンや小型グライダーには現在より少し先の性能を持たせた。遠い未来へ逃げず、観客が実現可能に感じる範囲で巨大ザメを出現させる設定だった。
実在するサメの比率でメグを巨大化した初期モデルは、画面では細長く、背びれも小さく見えた。制作陣は胴を太く、目を小さく、背びれを大きくする調整を重ねたが、太らせすぎるとマグロや巨大なグッピーのように見えてしまう。速く泳げる形と、23メートル級の重量感が同時に伝わる中間点を探した。
ホオジロザメを正面から見ると、口角が上がって大きく笑っているように見えることがある。巨大ザメの恐怖を損なわないよう、メグの口は両端が上がりすぎない形へ修正された。観測窓へ正面から迫るショットでも、歯の大きさだけに頼らず、険しい表情が保たれる設計である。
アニメーターは、サメが襲うときの顎、怒って向きを変えるときの鰓、巨体を押し出す尾の速さを実写資料から分析した。ホオジロザメの高速撮影も参照し、基本運動を崩さずに数%だけ誇張した。現実のサメらしさを残したまま、画面上では一段強い捕食者へ見せる調整である。
メグの基本設計とモデル化はスキャンラインVFXが担当し、そのデータがソニー・ピクチャーズ・イメージワークスへ共有された。イメージワークスは受け取ったモデルを自社の制作工程に合わせて再リグし、独自の筋肉システムも組み込んだ。前半と終盤で別会社が作業しても、同じ一頭に見えるよう資産を引き継いだ工程である。
イメージワークスはZiva VFXを使い、メグの骨格を起点に筋肉と皮膚の滑りを計算した。これにより、巨大な胴体を曲げても皮膚が筋肉へ食い込んだり、不自然に折れたりする問題を抑えられた。同時に、肩だけを強く震わせるなど、物理計算を土台に演出上の誇張も加えられる仕組みだった。
制作陣は、サラブレッドが走るときに筋肉の波が体表を伝わる様子を、力強さの手掛かりにした。メグの背中や鰓にも小さな震えを加え、物理的に正しい範囲より少し強く動かしている。終盤のショットは二、三秒程度が多いため、短時間でも巨体に力が詰まっていると読める誇張が必要だった。
VFX監修スー・ロウは、メグの目が完全な円に見えると無表情になりすぎるため、ごく小さな眉のような操作を加えた。口元をわずかに巻き、鼻先や頭を十五度ほどずらす制御も使われている。人間の表情をそのまま与えず、獲物へ向かう意思だけが読み取れる程度に留めた。
メグだけを水中で泳がせると、モデルが23メートルあっても巨大さは伝わらなかった。制作陣は水面を背後へ入れ、潜水艇や人物との位置関係を作り、細かな浮遊物を加えて距離を示した。大きさの数値を直接見せるのではなく、周囲の物がどれほど小さく見えるかで巨体を成立させた。
第三幕は物語と編集が変化し続けることを見込み、イメージワークスへ約400ショットを素早く作る依頼が出された。MayaのViewport 2.0で霧、粒子、仮照明を入れたポストビズ(撮影素材へ仮の視覚効果を加えた編集用映像)を作り、完成レンダリングの前に編集判断へ回した。不要な画を早い段階で落とし、最終的に約280ショットを仕上げている。
メグが海面を破るショットは、イメージワークスがポストビズ(撮影素材へ仮の視覚効果を加えた編集用映像)段階で最初期に着手した画の一つだった。初期版では水面の泡も粗い表現に留まっていたが、海面、飛沫、筋肉、照明、巨大さを一度に成立させる必要があった。工程を重ねるほど調整項目が増え、最終的には同社が最後に完成させたショットになった。
温度躍層の下に広がる海底には、『キングスマン:ゴールデン・サークル』用に開発された植生散布ツールSproutが転用された。複数種のサンゴ、岩、砂、魚を小さな群として組み、広い範囲へ複製した後でも大きさや位置を動かせる。一本ずつ置く作業を避けながら、均一ではない海底を短期間で作る方法だった。
メグが海底近くを通るショットでは、体の動きに合わせて砂泥が押し出され、後方へ巻き上がるシミュレーションが追加された。巨大な本体を描くだけでは、水の中に重量があるように見えないためである。メグに直接触れていない海底まで反応させ、周囲へ伝わる水圧から巨体を感じさせた。
海面用には、上から落ちる飛沫と下から昇る気泡の位置を検出し、数百万の微細な波紋を発生させる専用ソルバーが作られた。粒ごとに形状を描くのではなく、結果をレンダリング時の陰影へ渡して細部を加えている。大波の動きだけでは生まれない、水面表層の細かな揺らぎを補う仕組みだった。
潜水艇のプロペラが生むキャビテーションは、現実では後方へ細長く伸びるため、初期版もその動きを再現していた。ところが監督は、泡が上へ立ち上がって画面を満たす別のショットを気に入った。制作最後の月に重力や水の設定を変え、関連するシミュレーションを作り直している。
ジョナスのグライダーとメグが至近距離で交差し、機体が上下反転する主観ショットでは、通常のキャビテーションだけでは混乱の量が足りなかった。制作陣は画面外へ見えない仮想プロペラを複数置き、そこから追加の泡を発生させた。実在しない装置で水の動きを増やし、速度と方向感覚の喪失を表現している。
完成間近の水中ショットには何かが足りず、VFX監修スー・ロウは尾の動きに沿う細い泡の筋を追加した。泡はメグの鼻先からもわずかに漏れ、巨体の周囲に絶えず小さな水流を作っている。大きな飛沫ではなく、こうした微細な流れが、本体だけが水の中を滑って見える感覚を消した。
メグが暗い水中から近づくショットでは、現実の水中光をそのまま再現せず、背後の光、輪郭を拾う光、下からの光が加えられた。特に歯の縁へ細い光を当て、顔全体が見える前に危険を知らせている。制作陣が「怪物照明」と呼んだ、恐怖を優先する意図的な補助光である。
巨大イカが潜水艇へ巻き付く音は、スタジオに停めた車のフロントガラスを使って録音された。車内、窓面、車外へ複数のマイクを置き、数種類のラバーカップを強く押し付けて引き剝がした。乾いた状態と、食器用洗剤で濡らした状態を使い分け、吸着の硬さと粘りを作り分けている。
監督はメグを唸らせる案も検討したが、音響チームはサメに発声器官がないことを出発点にした。口や鰓を水が抜ける音、巨体が周囲を押しのける圧力、岩を泥の中で動かした音などを加工し、動物の咆哮にはしなかった。メグ自身の「声」より、通過した水と壊された物体が力を語る音響である。
ジョナスが水面でメグを探す場面では、上にいる間は小さな波音がドルビーアトモスの各スピーカーを移動する。顔を水中へ入れた瞬間、その動きが消え、静けさと低い持続音へ切り替わる。耳で明確に聞くより体で感じる超低音を全方向へ送り、水圧と逃げ場のなさを表現した。
メイインが無人の観測室へ入る場面では、玩具の球が床の継ぎ目を越える小さな音だけが前面へ残された。音響チームは『シャイニング』(1980)の三輪車を思わせる規則的なリズムで観客を孤独な空気へ慣らし、音楽も細い弦に絞った。その静けさを切り裂く観測窓への衝突が、実際の音量以上に大きく感じられる構成である。
メグが観測窓へ噛みつく衝撃には、約2.4×3.7メートルの古いガラスを大槌で割った録音が使われた。さらに水を入れたプラスチック容器を鋸、熊手、尖った石で傷つける音を歯と透明壁の接触へ足し、建物内の全サブウーファーを同時に鳴らして施設そのものが震える響きも収録した。材質、破壊、空間振動の三層で一撃を組んでいる。
冒頭の原子力潜水艦で、外から船体をこする正体不明の音は、大型貨物コンテナを使って作られた。監督が「潜水艦の上でシャベルを引きずるような音」と説明したため、音響スタッフは内部へマイクを置き、屋根でシャベル、熊手、園芸用の鍬を実際に引きずった。暑い日に人をコンテナ内へ入れたため、録音は短い区切りで行われた。
音響担当ジェイソン・ジェニングスが新設した自宅プールは、水中フォーリーステージ(水中で映像に合わせる物音を収録する場所)として使われた。特性の異なる6本のハイドロフォンを沈め、塗料を混ぜる電動ドリルへ複数の羽根を付け、水面上、水中、近距離、遠距離で録音した。その素材は大きな加工をせず、小型グライダーや船を水中から聞く推進音へ使われた。
スーインがシャークケージでメグを待つ場面では、巨大ザメの姿も鳴き声もすぐには出さない。追跡装置が返す小さなソナー音だけを置き、メグが近づくほど「ピン」という間隔を狭めている。観客は水中のどこにいるか分からないまま、音と音の間が短くなることで接近距離を測らされる。
三亜湾で人が入ったゾーブボールが破裂する音は、何度作っても監督が納得しなかった。音響チームはワーナーの広いステージに直径約4.9メートルの気象観測用風船を膨らませ、大小の風船を録音した。巨大風船は予定外に割れてしまったが、その瞬間も録音していたため、別の破裂音と組み合わせて完成版へ使われた。
三亜湾で泳ぎたがる少年と母親の水着は、『ジョーズ』(1975)のアレックス・キントナー親子を連想させる。メグが一つ、二つ、三つと浮桟橋を引く動きは、サメの位置を示した樽の反復に近く、結婚式の犬ピピンは同作の犬ピピットと一字違いである。単発の偶然も混じり得るため、個別の断定ではなく複数の一致をまとめた引用候補とする。
原作では、暗い深海で世代を重ねたメグは色素を失い、白く、ほとんど発光して見える存在として描かれる。映画は灰色の背と淡い腹を持つ、ホオジロザメに近い配色へ変更した。深海への適応を示す原作の生態設定よりも、観客が一目で巨大なサメと認識できる輪郭が前面へ出た外見である。
原作の最終決戦では、ジョナスが潜水艇ごとメグの口へ入り、体内で化石のメグの歯を使って心臓を切る。映画はこの内部から倒す展開を採用せず、グライダーで腹部を裂き、銛を刺し、流れ出た血で周囲のサメを引き寄せる構成へ変えた。主演俳優の身体動作と水面上の攻防を見せられる結末に再設計されている。
2019年1月9日発売の日本版4K UHD/3D/2Dブルーレイ3枚組では、映像特典は2Dブルーレイに約24分収録された。内容は制作全体を追うメイキング、メガロドン再現の解説、ニュージーランド撮影の紹介という三本である。本編の4Kディスクにはドルビーアトモス音声が入り、音響チームが設計した水上と水中の空間差も家庭環境で再生できる仕様だった。
イーライ・ロスがR指定と約1億5000万ドルの予算を維持し、自ら主演することまで求めたため離脱したという説が流布している。ただし、噂の出どころや制作側の説明まではたどれなかった。そうだったのかもしれないが、事実としては言い切らない方がよさそうだ。
メガロドンを主題にした作品として初の劇場公開映画だという情報がある。ただし、本人や現場関係者の証言、制作時の記録は確認できない。本当なら面白い記録だが、今ある資料だけでは決めきれない。
クジラ名や台詞の『スター・トレック』(2009)参照、扉のランドローバー部品、末尾の「fin」、『ジョーズ』(1975)『激突!』と同じ効果音などの説があるという話がある。ただし、出どころまでたどれる当事者の証言や制作資料は見つかっていない。どれかは本当に仕込まれているかもしれないが、ひとまとめに事実とはしない方がよさそうだ。
冒頭の救助事故は、メグがまだ脱出していないはずなのに襲われているように見える、というGoof指摘がある。時系列の読み方で揺れる深海事故の違和感だ。