主な参考資料
- D23
- StarWars.com
- Industrial Light & Magic
- Motion Picture Association
- TheWrap
スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグーを配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
2023年のストライキ前、ファヴローとデイヴ・フィローニはドラマ版の第4シーズンを計画していた。しかしストライキ後に映画化が浮上すると、最初の3シーズンを知らない観客にも届くよう構成を考え直した。つまり本作は、予定されていた第4シーズンを短くしたものではなく、劇場映画として入口から設計し直した物語である。
本作はカリフォルニア州の映画・テレビ税額控除制度で、当時同制度史上最大の適格支出を見込む企画として承認された。州の一覧にある計画値は、撮影92日、州内適格支出1億6,643万8,000ドル、税額控除2,175万5,000ドルである。これは映画全体の製作費ではなく、州制度上の対象支出と控除額である。
ILMのジョン・ノールによると、本編のおよそ45%はIMAX向けにネイティブ撮影された。通常のモニターでは巨大スクリーンでの余白や視線移動を判断しにくいため、撮影映像を仮想の劇場へ送り、座席と約100フィートの画面として見る専用Apple Vision Proアプリまで制作した。現場でヘッドセットをかぶり、構図を即座に確認できたという。
冒頭でマンダロリアンと戦う巨大ドロイド2体は、ティペット・スタジオがストップモーションで動かした。実写の演者と複雑に絡む約2分の戦闘を仕上げるため、アニメーション作業にはおよそ10か月を要した。テレビシリーズの短い制作日程では難しかった規模を、劇場映画の長い工程で実現した例である。
新しいレイザー・クレストには、24インチと48インチの実物模型が作られた。大きい模型はランプと着陸脚を交換でき、飛行だけでなく基地へ駐機した姿にも使える。各カットをCGで予行して物理カメラの制約まで再現した後、モーションコントロールで約36カットを撮影した。
実物大のレイザー・クレスト内部セットは重く、ステージ床へ固定されていた。外から内部を見上げる画を自由に作るため、ILMは本作でGaussian Splattingを初めて本番採用し、照明済みのセットを15〜20分で約2万枚撮影した。そのデータから、ポストプロダクションで任意の角度を選べる立体的な内部表現を作った。
Yウイング「Red Jammer」は、1976年に『新たなる希望』の実物大機を作る参照用として製作された模型で、当時は画面に出なかった。本作ではLucas Museum of Narrative Artから撮影1日だけ借り受け、担当者2人が見守るなか2カットを撮影した。約50年を経て、資料模型が初めて正式にスクリーンへ映ったことになる。
グローグーの実物パペットは、約100人が働くLegacy Effectsの工房で、彫刻、デジタル設計、3Dプリント、型取りなど多くの部署を通って完成した。撮影では一人が全部を動かすのではなく、通常4〜5人、時にはそれ以上が別々の機能を担当して一つの演技にまとめた。4体のアンゼランも同席する日は、現場の操演者が最大25人に達した。
ドラマ版より行動範囲が広がったグローグーを、ただ救出される子どもではなくマンダロリアンの弟子として見せる必要があった。Legacy Effectsはパペットを泳がせ、肩に乗せ、戦闘へ同行させるための動きを追加した。完成画面は実物人形とILMのCGを継ぎ目なく混ぜ、制作側でも境界が分からないカットがあるという。
一人のマンダロリアンを、得意分野の違う3人が演じ分けた。顔と声を担うペドロ・パスカルに、古典西部劇のガンマンらしい所作を得意とするブレンダン・ウェイン、カポエイラを生かすラティーフ・クラウダーが加わり、場面ごとに鎧を共有した。水中場面では競泳経験のあるパスカル自身も演じており、3人の技能を組み合わせた役である。
シガニー・ウィーバーは撮影の合間にもグローグーへ話しかけ、抱き上げ、写真を撮りたがるほど気に入った。彼女がファヴローへ「この人と仕事がしたい」と伝えたため、監督はウォード大佐とグローグーが一緒に映る場面を新たに作った。単に出演契約の動機というより、現場で生まれた反応が場面へ反映された例である。
【ネタバレあり】ロッタは撮影前にデジタルモデルとアニメーションテストが進み、Legacy Effectsも実物大の頭部を作っていた。しかし撮影後、編集が組み上がる段階でデイヴ・フィローニらは「親しみやすく、人間的すぎてハット族らしくない」と判断した。そこで主に顔を再設計し、ジャバの息子と分かる造形へ戻した。
【ネタバレあり】素早く戦うハット族を成立させるため、ILMはヘビや尺取り虫の動きも試し、最終的にゾウアザラシの突進を参考にした。内部には骨格、筋肉、脂肪、皮膚の層を作り、別々に揺れを計算して約800ポンドの重さを表現した。横へ一回転して距離を詰める攻撃は、制作班から「ロッタ・ロール」と呼ばれた。
【ネタバレあり】ロッタは完全なCGキャラクターだが、現場にはスタント俳優リチャード・セトロンが立ち、必要に応じて実物大の頭部を担いで相手役とカメラへ視線と体積の基準を示した。ジェレミー・アレン・ホワイトの叫ぶ姿勢やセトロンの動きも参考にした一方、ILMは感情そのものはアニメーターが作ったと説明している。
【ネタバレあり】『新たなる希望』では一瞬のホログラムだったデジャリックの駒を、実在する巨大生物として見せるため、ダグ・チャンの美術班は数十案を検討した。ILMの5人のモデラーチームはサイ、ワニ、ヘビ、毛皮動物の皮膚を調べ、動きにはゴリラ、プロレスラー、さらには『モンスターズ・インク』のランドールまで参照した。
【ネタバレあり】闘技場では、1977年のデジャリック盤上で大きな駒が小さな駒を持ち上げて叩きつけた動きを、実物大の生物として再現した。さらにロッタが蛇型のK'lor'slugを引きはがす一連の動きには、1933年版『キング・コング』の洞窟の大蛇戦を重ねた。監督が初見で即座に気づいたという、二重の怪物映画オマージュである。
月面都市シャカリの出発点は、SF映画のネオン街ではなく1920年代シカゴの写真だった。美術監督ダグ・チャンは暖色の街と冷たい空、Lトレイン、リグレー・フィールドの形を残し、列車を浮かせるなど現実80%、スター・ウォーズ20%の比率で異世界化した。本人は『ブレードランナー』風ではないとも明言している。
アデルフィ基地の将校ラウンジは、カメラの見える側だけでなく360度すべてを作り込んだ実物セットだった。撮影後も解体せず残され、『ボバ・フェット』のゲーム機やドラマ第2シーズンで使ったTIEファイターのドームも配置された。卓上の香炉には、実物の散水設備用カバーを転用している。
ルドウィグ・ゴランソンは、ドラマ版で使った70人編成のオーケストラを、映画では106人のオーケストラと64人の合唱へ拡大した。一方で第1話から主題を支えたバス・リコーダーは残し、シャカリにはシンセ、屋台には民俗音楽風の主題を新たに加えた。
1982年のケナー玩具INT-4が、44年後に映像へ入った。1982年にケナーが発売した、当時の画面には存在しないMini-Rig玩具を逆に映画へ取り込んだ。ファヴローが「玩具箱」を開く発想で選んだ、玩具から本編への44年越しの逆輸入である。
闘技場へ続く入口の文字を読むと「Weathers Apollo」になる。これはドラマ版でグリーフ・カルガを演じ、本作公開前に亡くなったカール・ウェザースの姓と、『ロッキー』シリーズのアポロ・クリード役を組み合わせたものだ。背景美術に忍ばせた出演者兼監督への追悼である。
屋台の料理人ヒューゴの声はマーティン・スコセッシである。ファヴローは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でスコセッシ作品に出演した縁があり、録音を先に行った。アニメーション班はその演技から着想を得て、声に合わせてキャラクター造形を固めた。
劇中のアンゼランの一人がMinchという名なのは公式に確認できる。一方、これを「ヨーダの初期フルネームMinch Yodaから取った」とする説明は、確認できた本作の公式記事やファヴロー/フィローニの発言にはなかった。したがって現段階では、由来が確定したトリビアではなく未裏付け説である。
【ネタバレあり】筋肉質で戦うハット族という共通点から、ロッタを旧拡張世界のBeldorionへの参照と見る説がある。しかし制作班が説明した出発点は『ボバ・フェット』のハット双子モデル、格闘映画、ゾウアザラシなどで、Beldorionの名は出ていない。似ているだけで制作上の由来は未確認である。
惑星名Shakariを『スター・トレックV 新たなる未知へ』の楽園Sha Ka Reeへの参照とする説がある。だが本作の公式資料とダグ・チャンの詳細な美術取材で確認できるのは、1920年代シカゴを基礎にした景観設計までで、名称の由来は説明されていない。現状は語音の類似から生まれた未裏付け説である。
鳥籠が並ぶ酒場で銃撃戦が起きるため、ジョン・ウー監督『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』の茶館場面へのオマージュだとする記事が複数ある。ただし確認できたファヴロー、美術班、スタント班の説明には明言がなかった。視覚的には有力でも、制作意図としては未裏付けである。