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2003年公開。アラン・ムーアとケヴィン・オニールのコミックを原作に、約7,800万ドルを投じてプラハのバランドフ撮影所へロンドンやヴェネツィアを築いたが、2002年の大洪水でセットと機材が損傷した。監督スティーヴン・ノリントンと主演兼製作総指揮のショーン・コネリーは脚本、演出、編集をめぐって衝突し、コネリーは後に撮影を「悪夢」と呼んだ。世界興収は約1億7,900万ドルでも、批評と現場の評判は振るわず、ノリントンは長編映画から離れ、コネリーにとっても最後の実写主演作となった。文学上の怪人を集めた映画が、洪水と創作権争いによって現実の怪物企画へ育ってしまったのである。
本作の基本アイデアは、19世紀文学の有名人物たちを同じ世界に集める文学クロスオーバーにある。冒険小説、怪奇小説、海洋SF、アメリカ文学の登場人物が、ひとつのチームとして再編成されている。
ネモ船長とノーチラス号の存在からヴェルヌ映画に見えるが、本作の出発点は小説そのものではなく、アラン・ムーアとケヴィン・オニールによるコミック版の同盟である。原作の系譜を知ると、映画の寄せ集め感も少し違って見えてくる。
ハイドの巨体は全編CG任せではない。ジェイソン・フレミングは、重さ約20kgのハイド・スーツを着て演技しており、古典的な特殊メイクとデジタルVFXが組み合わされている。
ネモ船長の潜水艦と車は、別々の小道具ではなく、同じ美意識で作られている。過剰な装飾をまとったノーチラス号とネモービルは、映画全体の19世紀SF風デザインを象徴している。
ベニスの大掛かりなアクションは、実景だけで成立しているわけではない。ノーチラス号や街並みには、ミニチュアと合成を組み合わせた特撮的な手触りが残されている。
本作の撮影は、映画内の冒険よりも現実の水害に揺さぶられた。2002年のプラハ大洪水により、撮影隊は避難を余儀なくされ、セットや小道具にも大きな被害が出た。
1899年のロンドンや欧州の空気を作るため、本作は実際のロンドンだけに頼っていない。プラハの歴史的建築やスタジオが、物語の複数の土地を支える代役都市になっていた。
本作の舞台裏で最も有名な痕跡は、ショーン・コネリーとスティーブン・ノリントン監督の対立である。撮影の進め方をめぐる衝突は、作品の評価以上に語り継がれる制作秘話になった。
本作は、ショーン・コネリーの長い映画キャリアの終盤に置かれた作品である。結果的に、彼が劇場用実写映画で姿を見せる最後の作品となった。
『ブレイド』で注目されたスティーブン・ノリントン監督にとって、本作は大きな分岐点になった。2003年版『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』以降、長編監督作は確認しにくい状態が続いている。キャリアの曲がり角として見ると、なかなか重い一本だ。
本作は豪華な文学キャラクターを集めた映画だが、俳優陣まで全員スターで固められたわけではない。ショーン・コネリーの出演料は製作費の中でも大きく、アンサンブル映画としての配役に影を落とした可能性がある。
本作は失敗作として語られやすいが、数字だけを見ると単純な大赤字映画とは言い切れない。問題は興収だけでなく、批評、制作現場、続編展開の難しさが重なった点にある。失敗の正体は、数字だけでは追いきれない。
本作が背負った不運のひとつは、同じ夏に『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』が現れたことだ。片方はフランチャイズ化に成功し、もう片方は続編に進めなかった。公開時期の運命まで残酷な対比になっている。
本作には、映画そのものとは別の“もうひとつの争い”があった。公開後、別企画との類似をめぐってフォックスが訴えられ、文学キャラクター集合というアイデアの出どころが争点になった。舞台裏まで一筋縄ではいかない。
本作のDVD関連素材には、メイキング、削除シーン、プリビズ、音声解説などが用意されている。完成版だけでは見えない未使用場面や制作過程を追える資料が残っているのだ。
2003年版は続編に進めなかったが、企画そのものは消えていない。後年には、より原作寄りの再映画化や女性中心のリブート構想が何度も報じられている。
原作コミックと映画版の大きな違いのひとつは、チームの重心である。映画ではアラン・クォーターメインが中心に置かれるが、コミック版ではミナの存在感がより大きい。
19世紀英国文学中心の世界に、アメリカ文学のトム・ソーヤーが若い諜報員として入り込む。これは物語上の追加であると同時に、米国観客への入口役も担っていた。
映画版の透明人間は、原作コミックのグリフィンそのものではなく、ロドニー・スキナーとして登場する。権利事情が関係したという見方があるが、制作側資料で確認できる情報ではない。ここは面白いが、断定せず保留したい手がかりだ。
初期案には、ジェームズ・ボンドを連想させるカンピオン・ボンドという人物を出す構想があったという噂がある。ロジャー・ムーア出演案まで語られるが、現時点では脚本資料や業界紙で支えられた話ではない。実現していたら、元ボンド俳優が別のボンド的キャラに絡む妙な絵面になっていたはずだ。
ショーン・コネリーが製作総指揮にも名を連ねているため、編集へ強く関わったという噂が生まれやすい。ただし製作総指揮クレジットと実際の編集主導は別問題で、確定情報としては扱えない。大物俳優の存在感が、噂まで大きくしているように見える。