主な参考資料
- The Guardian
- Animation World Network
ザ・バンク 堕ちた巨像を配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
2009年公開。本作は脚本家エリック・ウォーレン・シンガーが国際銀行を敵役に据えた企画をトム・ティクヴァが2003年ごろから約6年かけて育て、ベルリン国際映画祭の開幕作品として世に出した金融スリラーである。『フレンチ・コネクション』(1971)や『カンバセーション…盗聴…』(1974)を参照し、ベルリン、ミラノ、イスタンブール、ニューヨークを横断する撮影で、顔の見えない金融権力を建築空間として見せた。最大の見せ場となるグッゲンハイム美術館の銃撃は、実館では数日しか撮れないため、ベルリン近郊の旧操車場に実物の約90%規模の内装を12週間で建て、撮影日と夜間修復を24時間体制で回した。監督は公開前に流れた再撮影説を否定しており、約6週間を費やした13分の場面は、約550のVFXショットで実館外観と巨大セットを継ぎ合わせている。The Numbersは製作費5,000万ドル、世界興収約6,161万ドルと集計しており、制作規模に対して興行の余裕は大きくなかった。銀行の無限資金を告発する映画が、美術館の複製へ予算と夜勤を注ぎ込んだのは、かなりよくできた内部告発である。
トム・ティクヴァが2003年ごろに読んだ初期稿は、1970年代を舞台とし、主人公はベルギー人のホロコースト生存者だった。銀行という敵とグッゲンハイムの場面はすでに存在したが、監督は国境を越える金融権力を現在進行形の問題として描くため、物語を現代へ移した。
劇中の巨大銀行IBBCは完全な実在組織ではないが、世界規模の不正で崩壊したBCCI事件が発想源の一つである。名称も「International Bank of Business and Credit」と「Bank of Credit and Commerce International」で、語順を入れ替えたような響きを持つ。
準備期間にティクヴァとクライヴ・オーウェンが見直したのは、1970年代の米国・欧州の政治スリラーだった。『カンバセーション…盗聴…』『フレンチ・コネクション』『コンドル』『マラソン マン』などを、現代の金融を相手にする物語へ接続した。
ガラス張りの銀行は「透明性」を装う閉鎖性を表している。ティクヴァは、透明性を装いながら内部を見通せないガラスの矛盾を、金融システムの性質として映像化した。
世界各地を巡るロケは観光名所の羅列ではなく、建築史を逆向きに進む設計だった。新しいベルリンからミラノ、ニューヨークを経て、歴史建築が現代化に侵食されるイスタンブールへ到達する。
【ネタバレあり】物語の終幕にあたるイスタンブールのグランド・バザールは、撮影では最初に行われた。クライヴ・オーウェンは、サリンジャーがそこへ至るまでの旅をまだ一場面も演じていない状態で、人物の最終到達点を先に作らなければならなかった。
【ネタバレあり】グランド・バザールの追跡は、通行人を止めずに撮った。ティクヴァは主演二人を営業中の人混みへ送り込み、ゲリラ的に撮影した。
【ネタバレあり】ミラノの政治家暗殺場面は、イスタンブールの即興的な撮影とは正反対だった。多数のエキストラと複数カメラを数学的に配置し、広場の地理と登場人物の動きを制御した。
撮影数か月前、実物のグッゲンハイムを歩いて銃撃のリズムまで説明した。撮影の数か月前、ティクヴァは主演者と実物の館内を歩き、動線と場面のリズムまで説明していた。
美術部はグッゲンハイム美術館からCAD図面を受け取り、ベルリン近郊の旧機関車施設に館内を再建した。ただし完全な実寸ではなく、実物の90%スケールで、建設期間は12週間だった。
銃撃で壊れる曲面の壁には、弾着を再現する火薬仕掛けを組み込んだ。第二班が撮り終えると夜班が翌日分を作り直す、昼夜交代の24時間体制でセットを維持した。
完成版で約13分のグッゲンハイム場面に、再現セットで6週間近い撮影期間が使われた。人物、銃撃、カメラ、破壊、美術映像を同時に成立させる必要があったためである。
展示作品は複製ではなく、映画のために選んだビデオアートだった。ティクヴァと美術部はジュリアン・ローゼフェルトと六層分のビデオアート展示を構成し、映像方式の差によるちらつきまで調整した。
VFXは約550ショットで、すべてプラハのUPPが担当した。3Dの飛行機や大シャンデリアだけでなく、群衆、雪、セット延長、建築補修など、合成と気づかせない処理が大半だった。
撮影当時のグッゲンハイム外観は改修工事中で、足場と黒い防護幕に覆われていた。それでもブルースクリーンを置かずに現地撮影し、UPPが建物と周辺背景をデジタルで作り直した。
【ネタバレあり】銃撃戦で落下する巨大なガラス作品は、実物を吊って壊したものではなく全体がCGである。透明な板が床へ当たると細片になり、曇った質感へ変わること、破片が俳優と接触することまでシミュレーションした。
本編の基本フォーマットは3パーフォレーションのSuper 35だが、都市や建築の全景など一部はARRI 765による65mm撮影だった。65mm素材は4K、35mm素材は2Kでスキャンしている。
三人の作曲陣は、完成映像へ後から音楽を当てる方法を避けた。脚本段階からテーマを作り、大編成オーケストラを撮影前に録音し、現場でもその音楽を参照した。
国際銀行の腐敗を描く本作が2009年のベルリン映画祭を開幕したため、金融危機に便乗した企画のようにも見えた。しかし映画祭側は危機が表面化する前に選定しており、ニュースが映画へ偶然追いついた形だった。
公開データでは製作費は5,000万ドル、北米興収は2,545万527ドルで一致している。世界興収は約6,025万〜6,161万ドルで集計差があるため、単一の確定値にはしない。
「不評だった試写のあと、アクションを増やすため再撮影した」という説がある。しかし公開時の取材でティクヴァはこれを明確に否定し、完成版のアクションはすべて脚本段階から存在したと説明した。
グッゲンハイムの再現セットは「完全な実寸大」と紹介されることが多い。ところが建設を担当した美術監督は、実物の90%に縮小したと説明している。見た目は忠実でも、厳密な縮尺は同一ではない。
劇中の「+352 22 28 09」は、当時のルクセンブルク市観光局の実在番号だったという説がある。しかし2009年当時の公式資料で確認できないため、現段階では裏付けのない小道具説である。
本作の劇伴がドイツ公共放送の調査番組で頻繁に使われるという説がある。しかし局名・番組名・放送回・使用曲を特定できないため、通常トリビアにはできない。