🔍 ポップコーン探偵
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探偵アイコン 探偵による映画背景メモ

1949年公開の本作は、舞台版を見たオリヴィア・デ・ハヴィランドがウィリアム・ワイラー監督に映画化を持ちかけたことから動き出したとされる。ヘンリー・ジェイムズの小説から舞台版を作ったルース&オーガスタス・ゲーツが映画の脚本も担当し、舞台版にも出演したラルフ・リチャードソンが父親役に起用された。企画はもともとワイラーらの独立会社リバティ・フィルムズの作品となるはずだったが、会社の吸収に伴いパラマウントへ引き継がれた。完成作はデ・ハヴィランドの主演女優賞を含むアカデミー賞4部門を獲得した。豪邸の財産をめぐる映画が完成するまでには、企画そのものも会社の財産として持ち主を変えていたのである。

― ポップコーン探偵
この映画の トリビア!!!
35件

ピックアップトリビア

演技・撮影
信頼度

空のスーツケースに、本を詰めた理由

『女相続人』で、恋人に見捨てられたキャサリンが、スーツケースを持って階段を上る場面。その重い足取りには、実際の荷物の重さが加わっていました。ウィリアム・ワイラー監督が、空だったケースに本を詰めさせたという逸話が残っています。[1]

・何度上っても、監督は納得しなかった

Criterionが掲載したパメラ・ハッチンソンの解説によると、オリヴィア・デ・ハヴィランドは、この階段を何度も上るよう求められました。繰り返しの果てに彼女がスーツケースを投げたことで、監督は中身が空だと知ります。そこで本を入れて、もう一度撮影。ようやく、監督が求める疲労感が出たとされています。[1]

ここで必要だったのは、ただ荷物を二階へ運ぶ動作ではありません。待っていた相手が来なかった後で、出発のために用意した荷物を自分の部屋へ戻す場面です。同じ階段でも、期待を抱いて下りるときと、失望を抱えて上るときでは、体の動きの意味が変わります。

・「疲れたふり」を、重さで変える

空の小道具なら、どれほど重そうに扱うかは俳優の演技に委ねられます。本が詰まれば、持ち上げる腕にも、歩く速度にも、本物の抵抗が生まれます。ワイラーの方法は、その違いを利用したものでした。ただし、この逸話から、何度もやり直させる演出が常に正しいと決める必要はありません。デ・ハヴィランドが苛立つほど、要求が繰り返された経緯も同じ解説に記されています。[1]

本作で彼女が演じるキャサリンは、最初から強い女性ではありません。父や求婚者の言葉に揺れ、次第に態度や声を変えていきます。ハッチンソンは、役が強くなるにつれ声が低くなる点にも触れています。[1] その変化の途中にある階段では、立派な屋敷や衣装より、手に提げた小さなケースの重さが、人物の状態を伝えていたのです。

・脚注

  1. abcdPamela Hutchinson「The Heiress: A Cruel Inheritance」、The Criterion Collection(2019年5月7日)。階段での反復撮影、本を詰めたケース、キャサリンの演技の変化。(リンク)
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企画・脚本
信頼度

舞台版を見たオリヴィア・デ・ハヴィランドが、監督のウィリアム・ワイラーに自分を主演に映画化してほしいと持ちかけた。映画化権は25万ドル、舞台作者のルース&オーガスタス・ゲーツ夫妻には脚本料として週1万ドルが提示された。主演は配役されるだけでなく、企画を動かす側でもあった。

脚本・配役
信頼度

【ネタバレあり】恋人モリスは、舞台の時より悪人に見えすぎない人物へ調整された。監督のウィリアム・ワイラーは後年、モンゴメリー・クリフトに好感が持てるからこそ、キャサリンを捨てる場面で観客が衝撃を受けると説明している。誠実そうな外見は、役に合わない欠点ではなく演出の狙いだった。

演技・撮影
信頼度

父役のラルフ・リチャードソンは、自分が主役でない場面でも細かな動きを加えた。オリヴィアが気を取られると訴えると、ワイラーと撮影監督レオ・トーヴァーは、その動きをカメラの枠の外へ置いた。共演者を止めるのでなく、映す範囲で視線を整理したという。

演技
信頼度

父役のラルフ・リチャードソンの最初の撮影は、家に入り、上着を脱ぎ、娘を起こすという動作だった。演じ方の注文を受けると、六通りのやり方をワイラーに実演したという。大きな見せ場ではない日常動作にも、人物をどう見せるかという選択肢が用意されていた。

演技・役作り
信頼度

恋人役のモンゴメリー・クリフトの普段の姿勢は、十九世紀の裕福な家を訪れる青年には現代的すぎた。ワイラーは指導者を付け、当時のダンスを数週間練習させた。台詞や衣装だけで時代を示すのではなく、立ち方や体の運びからモリスを作っていった。

舞台・配役
信頼度

モリスの姉モンゴメリー夫人を演じるベティ・リンリーは、1947年のブロードウェイ初演でも同じモンゴメリー夫人役だった。本作は彼女の映画デビューでもある。主演を入れ替えた映画版にも、舞台で人物を演じた俳優が参加していた。

企画
信頼度

1947年には、プロデューサーのフレッド・F・フィンクルホフが舞台の出演者を使った映画化を計画していたと報じられた。しかし、この案は実現しなかった。完成した本作の配役が、最初から唯一の映画化構想だったわけではない。

製作会社
信頼度

本作はもともと、監督のウィリアム・ワイラーらが関わる独立製作会社リバティ・フィルムズの企画だった。その会社をパラマウントが吸収し、映画も同社の作品として作られた。独立製作を目指した監督の仕事が、大手スタジオの制作体制へ移った時期の一本である。

役作り
信頼度

主演のオリヴィア・デ・ハヴィランドはキャサリンを演じるため、眉を伸ばし、つけまつげを使わず、曾祖母の肖像を手本にした髪形を採用したという。唇にも淡い色を指で付けた。終盤には声も低くなる。美しく飾る通常のスターの化粧とは逆に、不器用で人前に慣れていない娘を作る工夫だった。

衣装
信頼度

衣装担当イーディス・ヘッドは、キャサリンの服を安物にはできなかった。父が金持ちだからだ。そこで上質な布を使いながら、襟を少し高く、袖を少し短くするなど、わずかに合わない仕立てにした。飾りも過剰にして、本人の自信のなさを服に表した。

衣装・時代考証
信頼度

ワイラー監督は衣装の時代考証にこだわり、衣装担当のイーディス・ヘッドをニューヨークの服飾資料のある施設へ調査に行かせた。ボタンもボタン穴も確認し、衣装にはファスナーを一つも使わず、小さなボタンで留めたという。画面で目立たない留め具まで、十九世紀の服として仕立てていた。

衣装
信頼度

キャサリンの衣装として残るドレスは、白黒画面からは分かりにくいバーガンディーの深い赤だった。スカートは四段のフリルで、縁には赤と金に光る布、内側にはクリーム色のレースがある。映像では明暗になる装飾にも、実物では色と素材の細かな差があった。 一方、終幕のドレスの下絵には淡いモーヴ色の指定も残る。

映像・構成
信頼度

【ネタバレあり】キャサリンの刺繍には、アルファベットが順に現れる。終盤では最後の文字のZを縫い、糸を切ってから階段へ向かう。気弱な娘の得意な手仕事だった刺繍が、恋人との決別を迎える映画の時間を刻む。

美術・演出
信頼度

【ネタバレあり】屋敷には鏡が多く置かれ、キャサリンの姿を繰り返し映す。父との関係が壊れた後には、キャサリンは父の顔を直接見ず、鏡に映った父へ話しかける。同じ部屋にいながら目を合わせない二人を、台詞だけでなく、鏡を介した立ち位置でも見せている。

原作・脚本
信頼度

【ネタバレあり】原作小説でもキャサリンは戻ってきたモリスを受け入れないが、本作は拒絶をさらに劇的に見せる。再び駆け落ちすると思わせて待たせ、玄関の扉を開けず階段を上っていく。小説の静かな断念は、映画では相手にも同じ痛みを返す行動へ変わっている。

音楽
信頼度

作曲家アーロン・コープランドは大勢の人物が動く壮大な音楽ではなく、家庭内の心理に合う小編成を選んだ。父スローパーの病に関わる場面では三本のバス・クラリネットを使う。通常のクラリネットより低い音を出す楽器を重ね、病んでいく父のための暗い響きを作った。

音楽・録音
信頼度

作曲家アーロン・コープランドは本作の録音で、クリック・トラックを初めて使用した。指揮者がイヤホンで一定の拍を聞き、映像の動きに演奏を合わせる方法だ。とくに庭のパーティーのダンスで役立ち、人物が踊るテンポと録音する音楽の長さを合わせていた。

音楽・試写
信頼度

【ネタバレあり】モリスを待つキャサリンの場面が、試写では意外にも笑いを誘った。ワイラーは音楽の変更を求め、作曲家アーロン・コープランドは以前使わなかった自作の一節を持ち込んだ。新たに場面に合わせ直した音楽で、恋人を待つ姿を笑いではなく痛みとして受け取らせようとした。

音楽・復元
信頼度

作曲家アーロン・コープランドが書いた本来の冒頭曲は、映画では彼の意に反して差し替えられた。本人は組曲を作らず、1990年にアーノルド・フリードが再構成した組曲で、元の冒頭曲が初めて利用できる形になった。公開版の音楽と、作曲者の当初案は同じではない。

音楽・関連作品
信頼度

モリスが歌う「愛の喜び」(1784)は、マルティーニが作曲した歌曲だ。その旋律は後に、プレスリーの「好きにならずにいられない」(1961)にも使われた。本作のために書かれた流行歌ではなく、十八世紀の曲が別々の時代の恋愛場面へ受け継がれている。

公開
信頼度

本作は1949年初めには完成していたが、そのまますぐ公開されたわけではない。パラマウントは秋の大作公開期まで待ったとされ、ニューヨーク公開は同年10月になった。撮り終えてからの時間も含め、俳優の演技を見せる格式ある作品として送り出された。

関連企画
信頼度

1993年、トム・クルーズと監督マイク・ニコルズは本作の再映画化を検討し、ワイラー版を見たという。しかし二人は元の映画が完成されていると考え、案を取りやめたと伝えられている。実際に契約や撮影まで進んだ作品ではなく、構想段階の逸話だ。

影響・関連作品
信頼度

【ネタバレあり】監督マーティン・スコセッシと主演レオナルド・ディカプリオは、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023)の夫婦関係を考える際に、本作の恋人同士を手本にしたと語っている。愛情らしい振る舞いと財産への欲望が同居する関係が、長い時を経て別の映画の人物造形に生きた。

後世の受容
信頼度

本作はシリアスな心理劇だが、1975年3月15日のキャロル・バーネットの番組でパロディ化された。ロディ・マクドウォールがゲストの回で、女性相続人の物語を取り上げている。名作としての評価だけでなく、題材を変形して笑いにする形でも残った。

日本公開・出版
信頼度

日本での本作公開は1950年11月21日。その直前の11月13日には、原作が映画と同じ『女相続人』の題で角川文庫化された。角川書店は文庫創刊の初期から、外国映画の公開と原作の出版を連動させていた。後年の角川映画より前にあった映画と出版の結び付きだ。

美術・後年の商品
信頼度

2019年の米Criterion版DVDのカバーに使われた主演オリヴィア・デ・ハヴィランドの肖像は、刺繍作家ダニエル・クラフの糸で作った肖像画だ。本人にとって初の単色中心の作品で、控えめに桃色や青、紫も織り込んだ。刺繍する主人公の映画を、実物の刺繍で包んでいる。

宣伝・記録
信頼度

1948年の『ライフ』誌は、本作の粗編集を見ているモンゴメリー・クリフトの表情を連続写真で紹介した。興味、笑い、心配といった反応まで、俳優の姿として読者へ見せている。これは1949年のプレミア上映とは別で、完成前の映像を本人が確かめる機会だった。

配役・俳優
信頼度

恋人モリスの候補には当初、オリヴィア・デ・ハヴィランドとの共演で知られるエロール・フリンの名も挙がったとされる。最終的に演じたのは新世代のモンゴメリー・クリフトだった。正式な契約や交代理由までは分からないが、別の顔ぶれになる可能性もあった。

配役・俳優
信頼度

叔母ラヴィニア役のミリアム・ホプキンスは、数年間映画を離れた後、本作で戻ってきた。その間にブロードウェイ三作品と巡演へ出演しており、俳優の仕事そのものを休んでいたわけではない。映画で姿を見なかった期間にも、舞台で活動を続けていた。

音楽・録音
信頼度

本作の音楽では、オーケストラの録音後に弦の演奏をさらに重ねた箇所がある。スウィートニングと呼ばれる追加録音で、庭のパーティーの終わりや最終場面に使われた。小編成で録った音楽にも、後から弦の響きを足して厚みを出す工夫があった。

公開後の反応
信頼度

【ネタバレあり】本作の公開後、スタジオには、恋人二人を幸せにしてほしかったというファンの手紙が届いたという。キャサリンがモリスを締め出す終幕は、観客全員に歓迎されたわけではなかった。クリフトが好感を持たれるスターだったことが、結末への不満にもつながった。

情報不足・要確認
信頼度

本作の音楽はフリードホーファーが大幅に書き直した、という説がある。ただし、差し替えを担当した人物として確認できるのは冒頭曲のヴァン・クリーヴだ。ほかにも試写後の改訂はあるが、全体を別人の仕事とするだけの根拠は確認できず、変更の範囲は分けて考えたい。

情報不足・要確認
信頼度

父役のラルフ・リチャードソンは、ロンドン舞台の好演を受けて同じ役で映画に戻った、と紹介されることがある。だが映画の主な撮影は1948年に行われたのに対し、ロンドン公演は1949年だ。同じ役を演じたことは確かでも、舞台から映画へという順序の説明は合わない。

情報不足・要確認
信頼度

恋人役のモンゴメリー・クリフトが自分の演技を嫌い、本作のプレミアを途中で退席したという逸話がある。ただし、裏付ける当日の記録や本人の説明は確認できなかった。粗編集版を見る表情の写真記事は残るが、1948年の別の上映だ。それだけでは1949年の退席説の証明にも否定にもならない。

裏取り強め
有力ソースあり
未確認・噂寄り
情報不足・要確認

主な参考資料

配信で見る

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