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2011年製作、2012年公開。イアン・マッケンジー・ジェファーズの短編を、ジョー・カーナハンが共同脚色・監督し、『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』に続いてリドリー・スコットらの製作陣とリーアム・ニーソンを組ませた。当初はより若い主人公とブラッドリー・クーパーが想定されたが、ニーソンの参加で企画が成立し、単純な狼退治より喪失と死を扱う方向が強まった。撮影はカナダのスミザーズとバンクーバーで約40日、時に氷点下30〜40度級の環境で行われ、カメラや俳優の息、吹雪の多くを実際の寒さから得た。公開時の宣伝はニーソン対狼を前面に出したが、制作陣が本当に殴り合っていた相手は、毎朝機材を止める低温だったのである。
ブリティッシュコロンビア州スミザーズでの撮影は、初日が約マイナス30度、最寒日が約マイナス37度に達した。機材まで止まる環境では、俳優の息や動きの鈍さも隠しようがない。寒さが背景ではなく共演者になった現場だ。
ジョー・カーナハンはキャストに『ジョーズ』を見せ、小説『脱出』を読ませた。狙いは動物の正確な模倣より、文明から切り離された男たちの恐怖を共有することだった。見えない脅威へ追い詰められる感覚が、作品の芯にある。
リーアム・ニーソンは、現実のオオカミは一般に人間を避けるが、劇中のものは「映画のオオカミ」だと区別した。恐怖の象徴をそのまま生態資料にはしない、という線引きである。フィクションの怪物と野生動物を分けると、見方が少し変わる。
野生のオオカミの群れは、多くの場合つがいと子どもからなる家族だ。「アルファが同格を力で支配する」という像は、捕獲下の研究から広まった単純化が強い。映画の群れを生態の常識にしないことも、見返すときの手がかりになる。
ロジャー・イーバートは『THE GREY 凍える太陽』の後に別作品の試写へ入ったが、30分で席を立ち翌日に見直したと書いている。次の映画を公平に判断できないほど感情が残ったらしい。映画が次の映画まで侵食したという、批評家本人の記録だ。
直接対決の場面は撮影されていたが、ジョー・カーナハンは完成版へ入れるつもりはなかったと説明した。必要だったのは勝敗ではなく、主人公が立ち上がる瞬間だったという。結果を隠して決断だけを残す結末である。
ジョー・カーナハンは、俳優に寒さを説明する芝居を作り込ませるより、極寒へ反応させる方を選んだ。呼吸や声の乱れまで、現場の条件が演技へ入り込んだわけだ。自然が俳優の余裕を奪う撮り方は、一筋縄ではいかない。
出演者が撮影中にオオカミ肉を食べたという話が広がっている。過酷な現場らしい逸話だが、誰が何を食べたのかを確かめられる制作資料は見つかっていない。強い話ほど、証拠を待ちたい。