主な参考資料
- Vanity Fair
- YouTube
- Art of VFX
- The Guardian
- TIME
- TheWrap
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2017年公開。F・ゲイリー・グレイが監督を務め、クリス・モーガンが脚本を担った『ワイルド・スピード』シリーズ第8作である。 キューバでの撮影は、米国の渡航規制緩和後に進められた大規模なハリウッド制作で、20街区の使用許可には米国・キューバ両政府との調整が必要となり、ドローンの持ち込みは認められず、通信インフラも米国から持ち込んだとグレイは語っている。 第三幕の氷原はアイスランドとブルースクリーン・ステージで可能な限り実写撮影する予定だったが、必要な時に雪がないという天候の皮肉に見舞われ、VFXが不足分を埋める設計になった。 ニューヨークに見立てたクリーブランドの落下車両場面では、複雑な実車スタントは一度しか実施できず、20台以上のカメラで記録した実写にCG車両を加え、周辺環境の約90%を置き換えた。 製作VFXスーパーバイザーのケルヴィン・マキルウェインは、原則としてスタントを実写で撮り、危険または非現実的な部分だけをCGで補強・修正する方針だったと証言しており、巨大爆発も実写素材を基準に拡張された。 製作費はユニバーサルが公表しておらず、業界推計・興行データベースは約2億5,000万ドルとする一方、Box Office Mojoの世界興収は約12億3,600万ドルで、その81.7%は海外興収である――一度しか落とせない実車を後で増やし、街まで描き替えるのが、大作の「実写」の会計である。
脚本家クリス・モーガンと監督F・ゲイリー・グレイは、第8作でシリーズの中心だった「ファミリー」を外敵から守るのではなく、内部から崩す物語を選んだ。ドミニク・トレットを仲間の敵へ回し、その理由を観客にも伏せることで、長く続いた人物関係そのものをサスペンスにした。本作の原題にある「Fate」は、ドムが仲間を裏切る運命を指す構成になっている。
クリス・モーガンは、シリーズ全体を一作ごとに完結する続編ではなく、テーブルトークRPGのゲームマスターが参加者のために作る長期キャンペーンとして考えていた。登場人物が経験を重ね、感情面でも能力面でも段階を上げていくため、本作では街の走り屋だった一団が国家規模のサイバー攻撃と原子力潜水艦を相手にする。荒唐無稽な拡大にも、脚本家の中では人物が長い冒険を通じて成長した結果という設計がある。
キューバを舞台にする案は脚本家クリス・モーガンから出た。F・ゲイリー・グレイがシリーズのファンの反応を調べると、世界規模の諜報戦だけでなく、初期作のような街頭レースを見たいという声が繰り返し見つかった。そこで冒頭は、ハバナの古いアメリカ車を賭けてドムが地元の走り屋と競う場面となり、大作化したシリーズを一度原点へ戻している。
「キューバン・マイル」は映画のために作った呼び名。F・ゲイリー・グレイが、シリーズで繰り返されてきた4分の1マイルの直線レースを新しく見せるために考えた呼び名である。狭い街路、急角度の曲がり角、対向車を止めるバイク、海沿いのマレコンまでを組み込み、直線の加速勝負を市街地一周の競争へ変えた。
ハバナの撮影では約20街区を使う必要があり、通常の道路使用許可だけでなく、米国政府とキューバ政府の調整が必要になった。空撮用ドローンは偵察機器と見なされる可能性があるとして持ち込みを認められなかった一方、カメラを載せたアメリカの飛行船を上空へ飛ばす許可は得られた。関係正常化直後の撮影だったため、同じ空撮機材でも許可の扱いが大きく分かれた。
冒頭の一台を撮るため同型車を何台も作った。車両班は走行、後退走行、炎上、横転など撮影内容に合わせた複製車を用意し、同じ外観へ仕上げて使い分けた。車両コーディネーターのデニス・マッカーシーは、各車の製作とアイス・チャージャーの構造を動画取材で説明している。
主要撮影は2016年3月7日から8月21日まで約5か月半に及び、拠点となったジョージア州からニューヨーク、キューバ、アイスランドへ移動した。FilmLAの産業調査では、ジョージア州内だけで約6,500万ドルを支出し、約2,000万ドルの税制優遇を受けたとされる。世界各地を巡る物語に見えるが、撮影の中心と多くの室内セットはジョージア州に置かれていた。
F・ゲイリー・グレイにとって、本作はそれまで経験した中で最大規模のVFX作品だった。完成画面の色、光、質感を言葉だけで伝えないため、監督はPinterestで大量の参考画像を集めたルックブックを作り、VFX部門へ共有した。キューバ、ニューヨーク、氷原で異なる画面を作りながらも、各社が同じ映像の方向を参照できる準備だった。
本作には約2,600のVFXショットがあり、一社へまとめず場面ごとに担当を分けた。Digital Domainが氷原と潜水艦、Double Negativeがニューヨークの車両群、Rodeo FXがベルリンの鉄球、Pixomondoがキューバのレース、Cantina Creativeが画面表示を担当した。各社の得意分野だけでなく、短期間に処理できる容量も発注先を決める条件だった。
車が空から降り、氷上を潜水艦が突き破る場面でも、VFX班は最初からすべてをCGで作る方法を選ばなかった。実車スタントを撮影し、可能な限り元の映像を残したうえで、危険な動き、車両数、背景、破壊を追加している。現実離れしたアクションでも、車体の重さや衝突の動きは実際に撮った素材へ合わせるのがシリーズの基準だった。
ニューヨークの車両追跡は、主要部分をクリーブランドで撮影した。Double Negativeの小規模班はマンハッタンでの撮影後も約2週間残り、6番街と7番街周辺を360度カメラで撮り、建物や道路をレーザー計測するLiDARデータも集めた。その資料を使ってビルの高さ、看板、街路を置き換え、クリーブランドの通りをマンハッタンへ作り替えている。
駐車場の上階から大量の車が落ちる場面では、特殊効果班が実車をワイヤーと機械で押し出すスタントを組んだ。複雑な仕掛けは一度しか動かせないため、20台を超えるカメラを同時に回して複数の角度を確保した。完成版では実車の間へCG車両を足し、別のカットで同じ車が再び見えた場合は外観を置き換えて、途切れず降り続ける車の雨にしている。
CG車両は壊れた内部まで作った。衝突や落下で車体が裂けても破綻しないよう、各モデルには車体下面、エンジン、内部構造まで組み込まれた。多数の車を一度に動かす基本計算は専用の物理シミュレーションで行い、ドリフト、サスペンションの沈み、目立つ車の動きはアニメーターが個別に調整した。
クリーブランドの建物をCGで高くし、マンハッタンらしい密度へ変えると、元の映像に写った日光が不自然になった。高層ビルなら影になるはずの道路や車へ強い光が当たっていたため、ビルだけでなく空、反射、路面まで置き換えるカットが増えた。撮影地を別の都市へ変える作業は、建物の形だけでなく、その高さが生む光まで作り直す工程だった。
車内演技は六軸の油圧リグで撮った。車体を前後、左右、上下へ動かせる六軸の油圧式リグへ俳優を乗せ、事前に設計した走行映像に合わせて傾きと振動を与えた。車外の危険なスタントと俳優の接写を分けながら、急加速や衝突で体へかかる力を同じタイミングで再現する装置だった。
ロシアの氷原として使われたアイスランドでは、撮影時に必要な雪が足りず、氷も溶け始めていた。車両を走らせられる範囲と時間が限られたため、実際の氷上走行を撮りながら、遠景の雪、氷原の広さ、車の周囲をVFXでつなげた。F・ゲイリー・グレイは、危険な条件の中でも大きな事故を出さず撮り終えたことを、撮影で最も報われた点の一つに挙げている。
潜水艦の浮上は氷の下で爆薬を炸裂させて調べた。制作側は氷の下で爆薬を炸裂させ、その上をケーブルで車が移動する様子を複数の角度から高速度撮影した。Digital Domainはその映像を使い、氷片の重さ、割れ目の広がり、水や雪の飛び方を調べてから潜水艦の浮上を作った。
潜水艦が砕く氷は、最初から細かな破片まで一度に計算していない。まず粗いモデルで割れる時刻と大きな氷片の動きを決め、車のタイヤが氷へ接する位置を調整した後、高解像度の二次破砕を加えた。最後に水、雪、細かな氷、霧状の粒子を別々に重ね、巨大な氷が粘土のように崩れて見えないよう、割れやすい端や角から亀裂を伸ばしている。
爆発も実写を消さずに拡張した。高速度撮影された炎と煙を画面の基準にし、規模、形、持続時間が足りない部分だけHoudiniで作った火炎と煙を重ねた。実写素材の明るさと風向きを残すことで、追加した爆発も同じ寒冷地で起きたように見せている。
ヘレン・ミレンは出演を依頼される前から、『ワイルド・スピード』シリーズで「狂った運転手」を演じたいと公言していた。2015年の取材では、ヴィン・ディーゼルと自動車アクションが好きで、何度希望しても声がかからないと話している。その後ディーゼルへ直接参加を頼み、本作でデッカードとオーウェン・ショウの母マグダレーン役が作られたが、希望していた運転場面はまだ与えられなかった。
終盤でドムが息子を「ブライアン」と名付ける展開は、脚本家クリス・モーガンがポール・ウォーカーと、彼が演じたブライアン・オコナーの両方へ敬意を示すために書いた。俳優だけでなく、長いシリーズを通じてドムの生き方を変えた登場人物の名を残す意図だった。本作ではブライアンとミアを危険へ戻さない約束も台詞で確認し、登場させずに二人の生活が続いていることを示している。
撮影終盤、ドウェイン・ジョンソンは男性共演者の一部を批判する文章をSNSへ投稿し、後にヴィン・ディーゼルとの対立だったと認めた。ジョンソンによれば、二人は映画作りと共同作業への考え方が根本的に異なり、直接話し合った後も本作で同じ場面を撮影していない。ディーゼルは別の取材で、二人を強い主導権を持つ「二人のアルファ」と表現しており、対立の細部について両者の説明は一致していない。
英国公開版は、12A指定を得るために一部の暴力描写を短くしている。配給側は完成版を提出する前に英国映画分類機構へ相談し、編集しなければ15指定になる可能性がある部分を修正した。物語や上映時間を大きく変えた別編集版ではなく、より低い年齢区分で公開するための局所的な変更だった。
製作費は約2億5,000万ドルと見積もられている。FilmLAの産業調査、Box Office Mojo、The Numbersが同じ金額を掲げているが、ユニバーサルが詳細な決算を公表した数字ではない。宣伝費と世界各地の配給費は別であり、ジョージア州の税制優遇もあるため、この金額を映画全体へ最終的に支払った総額とは扱えない。
公開初週末の世界興収は5億3,200万ドルに達し、当時の世界歴代最高オープニングとなった。内訳は北米が9,880万ドル、海外63市場が4億3,320万ドルで、海外だけでも従来の世界記録を大きく更新している。その後に集計が増えて5億4,200万ドルとする資料もあるため、ここでは公開直後に親会社が発表した同一時点の数字を用いた。
中国では公開3日間で1億9,210万ドルを記録し、当時のハリウッド映画として最大の初週末となった。後日の確定発表では1億9,910万ドルへ更新され、公開から約2週間で中国累計3億6,100万ドルに達している。世界初週末の大半が北米外から生まれたことを象徴する市場だった。
本作は公開から17日ほどで世界興収10億ドルを超え、ユニバーサル作品では5本目の10億ドル映画となった。2017年4月30日時点の累計は10億6,000万ドルで、そのうち海外が8億6,760万ドル、北米が1億9,270万ドルだった。再公開分を含むBox Office Mojoの最終累計は約12億3,600万ドルで、興収の8割以上を北米外で得ている。
F・ゲイリー・グレイは本作の監督が決まる時期、『ブラックパンサー』(2018)の監督候補としても報じられていた。業界報道では、グレイが本作を選んだためマーベル側の候補から外れたとされるが、本人が二作品を比較して決断理由を語った一次資料までは確認できない。『ブラックパンサー』(2018)はその後、ライアン・クーグラーが監督した。
ホブスとショウが殴り合う直前で手を止め、ドムではなく互いに協力すべきだと気づく短い場面が撮影されたと報じられている。完成版のエンドクレジット後には使われなかったが、後の『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)へつながる二人の組み合わせを試す内容だった。場面を外した最終判断と理由については匿名関係者の証言しかなく、完成台本や制作側の公式説明は確認できない。
ホブスがショウへ「歯を喉の奥まで叩き込み、尻から歯ブラシを入れないと磨けなくしてやる」と言う場面は、ドウェイン・ジョンソンの即興だったという話がある。ジェイソン・ステイサムが思わず笑い、その反応を含むテイクが完成版に使われたともされる。ただし、即興を確認できる本人証言、撮影記録、音声解説は見つからず、現時点では具体的な未確認候補に留まる。
サイファーは当初男性として書かれ、デンゼル・ワシントンへ出演を打診した後、女性へ変更されたという説がある。完成版ではシャーリーズ・セロンがシリーズ初の女性主要悪役を演じたが、初期脚本の性別、ワシントンへ示された役、交渉の段階を示す稿や契約報道は確認できない。脚本家かキャスティング担当者の証言が出るまでは、配役候補として断定しない方がよさそうだ。
アイスランドの氷原で行った爆発は、同国の映画撮影史上最大規模だったという話がある。実際に大きな火球を撮影し、その素材をVFXで拡張したことは制作資料から確認できるが、過去の映画撮影と比較した公的記録やアイスランドの撮影機関による認定は見つからない。「大規模な実爆を行った」までは確認済みだが、「国内最大」という順位だけは未確認である。
『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006)のショーン役、ルーカス・ブラックは本作にも出演する予定だったが、テレビシリーズ『NCIS: ニューオーリンズ』(2014)の撮影日程と重なって見送ったという説がある。ブラックがシリーズ複数作への出演契約を結んだという報道はあるものの、本作への正式な配役、撮影予定、降板理由を確認できる本人または制作側の記録は見つからない。