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ザ・ドライバー

The Driver / 1978
IMDb ⭐ 7.1🕐 91分🎬 20th Century Fox1978年
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探偵アイコン 探偵による映画背景メモ

1978年公開の、ウォルター・ヒルが脚本も手がけた監督第2作で、登場人物を固有名ではなく「運転手」「刑事」「賭博師」といった役割だけで呼ぶ、意図的に切り詰められた犯罪映画である。ヒルは主役をスティーブ・マックイーンのために書いたが、マックイーンは車の映画をもう一本撮ることを望まず辞退し、製作側が興行力を認めたライアン・オニールへ役が渡った。ジャン=ピエール・メルヴィルやロベール・ブレッソンの影響を受けた寡黙な演出に加え、ヒルが『ブリット』の第二班で得た経験を生かし、追跡場面は車の位置関係と技量が見えるよう精密に組まれた。ところが初公開時の米国では批評も観客動員も振るわず、後年ヒル自身も商業的に良かった地域として日本を挙げた一方、フランスでは約110万人を動員している。初公開時の正確な世界累計興収を網羅する信頼できる集計は確認できないが、少なくとも米国の失敗と海外での温度差、そして後年のカルト化は資料間で一致している。後続の運転手映画が盛んに借用した設計図は、公開当時には料金所で足止めされたわけである。

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原作・脚本
信頼度

本作の登場人物は、主人公だけでなく誰一人として固有名を持たない。クレジットでも「運転手」「刑事」「女」「交換屋」のように、物語上の役割だけで記される。過去や家庭を説明する情報もほとんど削られ、人物は犯罪の仕組みを動かす機能として向き合う。この抽象化によって、現代のロサンゼルスを舞台にしながら、追う者と逃げる者が互いの腕を試す西部劇の決闘に近い構図が生まれた。

参考情報:AFI(米)

企画開発
信頼度

ストリートファイター』を終えたウォルター・ヒルに、製作者ローレンス・ゴードンが「逃走専門の運転手」を題材にする案を出した。ヒルは1975年夏に脚本を書き、通常の人物説明を減らして、行動と技術だけで性格を示す犯罪映画へ整えた。会話、恋愛、過去の説明を切り詰め、運転手と刑事が互いを挑発する構造へ集中した結果、主人公の名前さえ不要になった。企画の中心は人物の来歴ではなく、仕事を遂行する姿そのものだった。

参考情報:資料・アーカイブ(米)

企画開発
信頼度

製作準備中、本作の題名は一時『Pursuit』へ変更されていた。「追跡」を意味する題は刑事側の執念と物語の運動を前面に出すが、最終的には無名の主人公の職業をそのまま掲げる『The Driver』が選ばれた。登場人物を固有名ではなく「運転手」「刑事」と呼ぶ脚本にとって、主人公の役割そのものを題名にする方が作品全体の抽象性に合っていた。

参考情報:AFI(米)

キャスティング
信頼度

ウォルター・ヒルは運転手役をスティーヴ・マックイーンに重ねて脚本を書いた。しかしマックイーンは『ブリット』や『ゲッタウェイ』で車を扱う作品を経験しており、同じ領域へ戻りたくないとして断ったという。アクションスターの存在感を前提にした企画は、ライアン・オニールを得て性格を変えた。オニール版の主人公は、運転の腕前を激しく見せても感情をほとんど表へ出さず、映画の乾いた抽象性を強めている。

参考情報:資料・アーカイブ(米)

キャスティング
信頼度

ライアン・オニールが出演を受けたことで、製作側は映画の資金をまとめられた。ヒルは彼と、台詞や表情を増やさず、行動だけで職人としての自信を示す方針を話し合った。主人公は冒頭の追跡を終えても長く口を開かず、スターの顔を説明台詞ではなく運転技術で紹介する。華やかな恋愛映画でも知られたオニールを、反応の少ない無名の男として置く配役が作品の冷たさを支えた。

参考情報:資料・アーカイブ(米)

キャスティング
信頼度

イザベル・アジャーニは、ウォルター・ヒルの監督デビュー作『ストリートファイター』を気に入り、本作への出演を受けた。これが彼女にとって初の本格的なアメリカ映画となった。固有名も詳しい背景も与えられない「女」を、視線と短い返答だけで演じ、運転手と刑事の間で最後まで立場を読ませない人物にしている。ハリウッド進出そのものより、前作で見た監督の簡潔な演出を選んだ配役だった。

参考情報:資料・アーカイブ(米)

キャスト秘話
信頼度

アジャーニはヒルの前作を気に入って出演した一方、後年には本作をキャリア上の誤りだったと振り返っている。『アデルの恋の物語』以後、周囲からアメリカ映画へ出るよう勧められ、断り続けられないと考えて選んだが、その後に届いた企画は望まないものばかりだったという。作品の出来を単純に否定した発言というより、出演によってハリウッドで提示される役の幅が狭まったというキャリア上の失望である。

参考情報:資料・アーカイブ(米)

撮影技術
信頼度

ヒルは『ブリット』のカーチェイスで、通行人が道路へ入り込まないよう安全管理を担当した。二週間に及ぶ撮影を間近で見ながら、当時は車内からのショットに時間を使いすぎていると思っていた。しかし完成版を見て、観客を車内へ置く主観映像こそ速度と恐怖を生むと理解した。十年後の本作では、外から車を眺めるだけでなく、運転手と同じ高さから道路や追跡車を見るショットを重ね、その教訓を自分の演出へ変えている。

参考情報:BFI(英)

撮影
信頼度

ヒルは人物の会話を昼に先行撮影し、カーチェイスを夜へ集中させる日程を組んだ。夜間撮影が続く負担は大きく、判断力が揺らぐほどだったと回想している。それでも人通りの減ったロサンゼルスを使うことで、街の観光的な表情を消し、ヘッドライトと街灯だけが奥行きを作る空間を得た。昼の取引と夜の決闘を分ける撮影方針が、無名の運転手と刑事だけが動く抽象的な都市像を作っている。

参考情報:資料・アーカイブ

制作トラブル
信頼度

冒頭の追跡場面は最終撮影日の夜に撮られたが、電気スタッフが屋根から落ちて重傷を負う事故が起きた。ヒルは予定していたショットをすべて撮れず、手元にある素材を組み合わせて場面を完成させた。事故を単なる撮影秘話として軽く扱えない一方、完成版が計画どおりの素材だけで作られたわけではないことも重要である。本人は後にこの追跡を不十分と認め、地下駐車場と終盤の追跡は狙いどおり撮れたと区別している。

参考情報:公開資料(英)

撮影技術
信頼度

地下駐車場で腕前を試される運転手は、メルセデスを柱や壁へ次々に当て、走れる状態を保ったまま外装だけを段階的に破壊する。撮影はロサンゼルスの実在する地下駐車場で行われ、壁、柱、駐車車両の間隔そのものがスタントの設計に使われた。単に速く走るのではなく、狭い場所で接触位置と衝撃を制御することで、主人公が車を完全に支配していると示す。ヒルもこの場面を狙いどおり実現できた追跡演出の一つに挙げている。

参考情報:資料・アーカイブ

撮影技術
信頼度

終盤で運転手に追い詰められたポンティアック・トランザムが横転し、倉庫の点検口へ落ちる。この撮影には予備車がなく、スタント運転手ビリー・バートンは一度の走行で成立させる必要があった。車内にはロールケージと多点式ハーネスが組まれていたが、横転を見たヒルは運転手が死亡したと思い、スタッフの一部は泣き出したという。バートンは無傷で脱出し、その一回が完成版へ使われた。

参考情報:公開資料(英)

情報不足・要確認
信頼度

本作には二時間を超える失われた監督版があると長く語られてきた。初期の素材編集が長かったこと、予告編に本編で使われなかった短い映像があること、VHSに誤った上映時間が印刷されたことが噂の背景にある。しかしヒルは、その長さを公開用の完成版として意図したことはないと明言した。人物を説明しすぎるとしてスタジオの要請で撮った導入部も劇場公開版から外しており、91分版が監督の簡潔な構想に沿った本編である。

参考情報:公開資料

撮影
信頼度

ヒルは本作の主要な視覚的影響として、アメリカの画家エドワード・ホッパーを挙げた。夜の食堂、ホテルの一室、人気のない街角に人物を孤立させる構図は、車が止まった後の静けさを形づくる。撮影監督フィリップ・ラスロップは暗い街路の奥行きと人工光を使い、顔よりも人物同士の距離を強調した。激しい追跡の間に空白のような時間を置くことで、ロサンゼルスは賑やかな大都市ではなく、互いを見張る人間だけが残る場所になった。

参考情報:資料・アーカイブ(米)

影響・オマージュ
信頼度

ヒルはジャン=ピエール・メルヴィルの『サムライ』を本作の影響源に挙げている。過去や感情を語らず、職業上の規律だけで自分を定義する主人公を、殺し屋から逃走運転手へ置き換えた。簡素な部屋、孤独な生活、警察との読み合いは、カーチェイスの速さとは反対の静かな緊張を作っている。フランス映画の様式をロサンゼルスの道路へ移し、その後イザベル・アジャーニを迎えたことで、作品の両岸が配役の上でもつながった。

参考情報:資料・アーカイブ(米)

公開・興行
信頼度

アメリカ公開時の本作は、批評と興行の双方で期待に届かなかった。製作者ローレンス・ゴードンは、クリント・イーストウッドやスティーヴ・マックイーンのような典型的なアクションスターが主演なら、同じ簡潔さも別の受け取られ方をしただろうと振り返っている。一方で欧州では比較的好意的に受け入れられ、後年には都市型ネオノワールと寡黙な逃走運転手の原型として評価が反転した。公開時に「説明不足」と見えた部分が、現在は作品の鋭さとされている。

参考情報:新聞社(英)

影響・オマージュ
信頼度

エドガー・ライトは、カーチェイスを脚本上でどう書けばよいかを学ぶため『ザ・ドライバー』の脚本を読んだ。ヒルの文章は、車の動きと危険だけを短い行で刻み、ライトには「アクションの俳句」のように見えたという。完成した映像の構図だけでなく、余分な説明を削り、動作の順序だけで速度を生む脚本の書き方が『ベイビー・ドライバー』へ受け継がれた。ヒルは後年、自作の影響を後輩監督から直接説明されることになった。

参考情報:公開資料

修復・商品
信頼度

2023年の4Kレストア版は、35mmオリジナルネガを基に新しいマスターを作り、ウォルター・ヒル自身が監修した。国内商品はUHDとBlu-rayの2枚組で、夜の街路に沈む黒、ヘッドライトの白、オレンジ色のメルセデスなど、フィリップ・ラスロップの撮影を高解像度で確認できる。新規インタビューも収録され、長く残った二時間版の噂について監督が説明している。失われた別編集を作る商品ではなく、91分の本編を撮影素材へ戻って整えた修復である。

参考情報:公式資料(日)

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