『スター・ウォーズ』の撮影が終わった時、ILMの完成VFXは約3ショットしかなかった!
実写撮影を終えてILMへ戻ったジョージ・ルーカスは、宇宙戦の視覚効果が半分ほど完成していると考えていました。しかし、蓋を開けてみれば完成に近いのは、たった約3ショットで、すでに約100万ドルの費用を使っていました。AFIによると、20世紀フォックスが設定した製作費700万ドルのうち、新設のILMへ割り当てたのは約150万ドルでした。[1]
・ショットを撮る前に、撮影装置を作る必要があった
ジョン・ダイクストラを中心に人を集め、ロサンゼルス近郊の倉庫へ模型工房、撮影設備、光学合成部門を作りました。映画経験のない若い技術者も多く、模型、レンズ、照明の試作とカメラ装置の開発から始めています。[1][4][5]
約360のVFXショットで求められたのは、模型が静かに動く画ではなく、カメラが旋回し、戦闘機へ急接近し、デス・スターの溝へ飛び込む映像です。[2]そこで使ったのが、模型を固定してカメラ側を動かす「ダイクストラフレックス」でした。移動、旋回、傾き、ピントをモーターで制御し、動きを記録して繰り返せるため、船体、背景、発光部を別撮りして重ねられます(今で言うモーションコントロールカメラです。当時もコンピューターで動きを制御していました。)。[2][3]
ただし、手で台車を押せば1時間ほどで試せる動きでも、テストを含め半日以上かかることがあったとデニス・ミューレンは振り返っています。[4]
・空中戦の仮編集が、必要な動きを決めた
ルーカスたちは、第二次世界大戦映画や記録映像の空中戦、絵コンテ、パイロットの仮音声をつなぎ、デス・スター攻撃を実時間で見られる形にしました。マーシャ・ルーカスは終盤の空中戦編集に約8週間を費やしています。編集済みの場面が届いて初めて、ILMも宇宙船の動きやショットの長さを確定できました。[1][4]
ルーカスからは何度も「もっと速く」と求められました。ミューレンによると、背景が判別しにくい速さでも、前景へXウイングを重ねて画面を切り替えると、観客には速度として伝わったそうです。[4]
・二交代にして、カメラを昼夜動かした
1976年9月ごろ、製作管理のジョージ・メイザーが入り、ダイクストラフレックスを昼夜二交代で使う体制へ変えました。昼はリチャード・エドランド、夕方から深夜はミューレンが担当し、生産量は倍以上になったといいます。終盤は編集変更による追加ショットもあり、24時間体制に近い作業になりました。[4]
ミューレンは複数の模型を一度に撮り、主な動きをカメラへ担わせることで、一晩に2、3ショットを進められる場合もあったと説明しています。[4]Xウイングも型から複数作り、落下や爆破で壊れたら替えられるようにしました。デス・スターの溝は幅の広いものと狭いものを用意し、壁の部品を組み替えて別の場所に見せています。(ローマは一日にして成らず、ですね。二交代制の急ピッチでは有りましたが。)
・脚注
- abcAFI Catalog「STAR WARS」。当時のLos Angeles Times、Rolling Stone、American Filmなどの製作記録を集成。製作費700万ドル、ILMへの約150万ドル、ルーカス帰還時に約100万ドルを使い完成に近いショットが約3本だったという本人説明、第二次世界大戦映像を用いた仮編集、マーシャ・ルーカスが空中戦編集へ約8週間を費やしたことを確認した。(リンク)
- abIndustrial Light & Magic「Star Wars: Episode IV – A New Hope」。約360の視覚効果ショット、VistaVision、複数軸のカメラ移動を反復して素材を合成したダイクストラフレックスの役割を確認した。(リンク)
- Lucasfilm「Lucasfilm Originals: The ILM Dykstraflex」(Lucas O. Seastrom、2021年12月3日)。宇宙船、デス・スター表面、星空、ブラスターなどを別撮りし、コンピューター制御で同じカメラ移動を繰り返して光学合成した工程を確認した。(リンク)
- abcdefDan Brooks「“I Knew We Were Doing Something Different”: Dennis Muren Reflects on Star Wars: A New Hope」StarWars.com、2017年5月25日。デニス・ミューレン本人への取材。装置開発中の停滞、モーションコントロール撮影の遅さと利点、ジョージ・メイザー投入後の昼夜二交代、終盤の24時間作業、複数模型を同時撮影した時短策、第二次世界大戦映像を使った宇宙戦の設計を確認した。(リンク)
- StarWars.com「The Legends of Industrial Light & Magic」(2022年7月27日)。ジョー・ジョンストン、デニス・ミューレン、フィル・ティペット、ベン・バートらの回顧から、映画経験のない若い人材を含む初期ILMが、必要な技術を現場で学びながら作ったことを確認した。(リンク)