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2017年公開。2015年にソニーとマーベル・スタジオが結んだ契約から生まれ、ソニーが資金・配給・権利・最終的な創作上の決定権を保持しながら、ケヴィン・ファイギとエイミー・パスカルが共同で新路線を作るという、少々込み入った共同制作だった。過去2系列ですでに描かれた誕生譚を繰り返さず、ジョン・ワッツは高校生活を中心に据え、VFX班にも現実には撮れないゲーム的なカメラ移動を避ける方針を示した。トム・ホランドのダンスと舞台経験を生かし、危険な部分を除いて本人の動きやモーションキャプチャーを積極的に採用し、撮影はアトランタを中心に進めた後ニューヨークへ移った。題名はヒーローの帰郷を意味するが、制作の実態は二つの巨大企業が親権を分け合う、かなり綿密な面会協定だったのである。
トム・ホランドは世界中から集まった約7500本のオーディション映像の中から選ばれたとされる。若いピーターを探す過程そのものが、かなり大規模な発掘作業だった。
トム・ホランドの最終選考では、ロバート・ダウニー・Jr.との相性テストが大きな意味を持ったとされる。師弟関係が作品の軸になるため、単独の演技力だけでは決められなかったのだ。
ワシントン記念塔の救出場面では、実景、セット、デジタル合成を組み合わせて高所の恐怖を作っている。学校行事の延長に見える場面が、実はかなり大きなVFXシーンなのだ。
題名のHomecomingは高校行事を指すだけでなく、スパイダーマンがマーベル映画へ戻ってきた意味にも読める。青春映画とシリーズ事情を同時に背負ったタイトルだ。
マイケル・キートン演じるヴァルチャーは、単なる怪人ではなく仕事を奪われた業者の怒りを抱える人物として描かれる。ヒーロー映画の悪役に、都市開発と格差の手触りが入っている。
日本語吹替ではトニー・スターク役の藤原啓治が復帰したことが話題になった。MCUを吹替で追っていたファンにとって、声の連続性が大きな意味を持つ一本だった。
校内ニュース番組のような演出は、ヒーロー映画の大事件を高校生活の距離感へ引き寄せている。世界を救う話を、部活や授業の延長で見せる本作らしい小ネタだ。
マイケル・ジアッチーノの音楽には、過去のスパイダーマンアニメを思わせるおなじみのメロディが入っている。新しいMCU版でありながら、昔からのファンへ軽く目配せしているのだ。
『スパイダーマン:ホームカミング』は、クモに噛まれる場面やベンおじさんの死を中心にしたオリジン物語をあえて避けている。観客が知っている前提で、高校生活の現在形から始めたという話だ。
本作の高校パートには、1980年代青春映画で知られるジョン・ヒューズ作品の影響が意識されている。ヒーロー映画なのに、廊下や放課後の空気がやたら大事にされている理由だ。
ピーターの学校では、キャプテン・アメリカが登場する校内向け啓発ビデオが流れる。世界を救うヒーローが、体育館の教材映像みたいに使われているのがMCUらしい小ネタだ。
ピーターのスーツAIKarenの声はジェニファー・コネリーが担当している。MCUで人工知能の声を演じる俳優陣のつながりを知ると、かなりニヤッとできる配役だ。
トム・ホランドはスパイダーマン役の選考で、演技だけでなくダンスと体操の経験も評価された。マスクの中身より先に、体の動きでスパイダーマンらしさを示せたらしい。
脚本チームは、過去のスパイダーマン映画で見た要素を洗い出し、なるべく同じことを繰り返さない方向で考えていた。新鮮に見えるのは、避ける作業もだいぶ意識されていたからだ。
トム・ホランドが選ばれるまでには、ロバート・ダウニー・Jr.らも関わる秘密のスクリーンテストが行われた。MCU合流作だけに、単に若い俳優を選ぶ以上の相性確認があったと見ると面白い。
MCU年表と合わない点をめぐって、『スパイダーマン:ホームカミング』の8年後表記は深い伏線だと解釈されることがある。後年はミスとして扱われることが多く、作中の謎解きとして持ち上げすぎるのは危うい。