主な参考資料
- Post Magazine
- Rotten Tomatoes
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2007年公開、サム・ライミ版三部作の第3作であり、ソニーは第2作の公開前から次作の公開日を決め、ライミ本人を驚かせるほど早く続編を走らせていた。ライミはプロデューサーのアヴィ・アラッドから「ファンはヴェノムを見たがっている」と求められて同キャラクターを加え、アラッドも後年、自分が起用を押しつけた責任を認めている。見せ場と登場人物を膨らませた結果、製作費は約2億5800万〜2億6000万ドルとなったが、再上映を含む累計世界興行収入は約8億9630万ドルで三部作最高を記録した。スタジオの注文まで詰め込んだ映画は混雑したが、帳簿だけは満員を歓迎したのである。
粒子加速器跡でサンドマンが身体を作る場面では、砂の粒子群を骨格や筋肉の動きへ沿わせる専用システムが開発された。ただ人型の砂山を出すのではなく、立とうとして崩れ、娘の写真をつかむ意思だけで再びまとまる過程を演技として設計した。VFXが人物の感情を直接演じる、本作を代表する場面である。
砂から指や顔が形になる最初期のショットは、動きと粒子の挙動を決めるまで長期間を要した。見せ場全体の技術規則を一本目で確立する必要があり、砂が滑る速度、塊になる量、光の透過を何度も調整した。短い誕生場面が、後の巨大化や崩壊を支える試験場になった。
画面上のサンドマンは膨大な粒子に見えるが、制作では粒子を階層化し、近景と遠景で表現密度を変えた。すべてを同じ精度で計算すれば処理が破綻するため、塊の流れと表面の細粒を別々に扱った。巨大化した身体に重量がある一方、輪郭だけが崩れる見え方は、この計算上の分担から生まれる。
ピーターとの格闘撮影で、チャーチは実際に強く打って手を痛めた。CGの砂へ置き換わる人物でも、撮影現場では壁や相手へ重量を伝える実演が必要だった。硬い身体と崩れる砂というサンドマンの二面性は、俳優の筋肉とデジタル粒子の両方で作られている。
グウェン役のブライス・ダラス・ハワードは妊娠初期の状態で、クレーン事故などのワイヤー撮影へ参加した。安全管理のもとスタント担当と分担したが、公開時には外見から分からない制作条件だった。空中で救助される場面は、俳優の身体状況、実物セット、ワイヤー、CGの慎重な組合せで成立している。
サム・ライミは当初サンドマンとハリーを中心に考えていたが、アヴィ・アラッドから現代のファンに人気のヴェノムを提案され物語へ加えた。監督自身が十分な愛着を持てない人物を理解しようとし、ピーターの利己心を映すエディとして組み直した。敵が多い印象の背景には、商業的要望を既存の主題へ接続しようとした脚本過程がある。
映画のシンビオート・スーツはコミックの白黒意匠へ全面変更せず、通常スーツの蜘蛛の巣模様を残したまま黒くした。観客が同じピーターの変化だと直感でき、素材の光沢と隆起した網目で攻撃性を強める設計である。鏡や窓に映る姿を見る場面では、衣装の差が人格の自己陶酔まで伝える。
公開時に賛否を呼んだ黒服ピーターの街歩きとダンスについて、ライミは後年、観客が笑いを含めて楽しむ場面になったことを肯定的に語っている。劇中のピーターは自分を格好いいと思い込むが、周囲の反応は冷たい。場面の狙いは洗練された悪役化ではなく、力に酔った青年のずれを喜劇として見せることにある。
ライミは後年、本作で多くの要素を十分にまとめ切れなかったと率直に振り返っている。これは作品全体を否定するだけの発言ではなく、サンドマン、ハリー、エディ、ピーターとMJの亀裂を一本へ収めた制作上の難しさを示す。完成版の密度を、単なる長尺ではなく開発過程の衝突として見直せる。
大規模な戦闘場面は編集段階の検討を受け、追加撮影とVFXの再設計が行われた。実写プレートが変われば、デジタル人物、砂、シンビオート、建物破壊まで作り直す必要がある。公開日の動かせない大作で、物語の修正がポストプロダクションへ連鎖する例である。
冒頭タイトルは前二作の主要場面を蜘蛛の巣状の画面へ映し、今回へ続く人物関係を短時間で整理する。単なる前作あらすじではなく、ガラス片や網目に記憶が閉じ込められたような意匠で、ハリーの復讐とピーターの罪悪感を先に提示した。長い三部作を視覚的な記憶へ圧縮するデザインである。
映画はフリント・マルコに病気の娘を設定し、金を必要とする理由を個人的な切迫へ結び付けた。ベンおじさんの死への関与も加わり、ピーターが復讐へ傾く鏡像として働く。原作の悪役を単なる強盗にせず、許しという終盤の主題を成立させるための脚色である。
黒い物質が隕石から這い出す接写では、粘性を感じさせる実物素材とCGの伸びを組み合わせた。衣装へ広がる場面では細い枝のような動きを重ね、砂の粒子とは正反対のまとまり方を作っている。同じ映画に二種類の変形する敵を出すため、素材ごとの運動規則を分けた。
教会でピーターが黒いスーツを脱ぐ場面は、鐘の物理的な振動とシンビオートの悲鳴を重ね、音が物質へ作用することを聞かせる。映像では細い繊維が一本ずつ引き剥がされ、音ではピーターと別の生物が同時に苦しむ。設定説明と人物の決断を、台詞より音と変形で伝える場面である。
準備、撮影、追加撮影、膨大なVFXを含む制作は長期化し、公開直前まで仕上げが続いた。三人の敵と複数の大規模アクションを同時に処理するため、各部門の変更が別の工程へ波及した。完成作の情報量は、一本の映画として異例に長い制作管理の結果でもある。
スパイダーマンの拳がサンドマンの胸を貫くショットでは、右手のないボクサー、バクスター・ハンビーがマグワイアの代役を務めた。身体の特徴をデジタルで消すのではなく、撮影時の輪郭として使い、砂の穴を自然に合成した。地下鉄で胸を貫く一撃は、実演とVFXの発想が直結したショットである。
サンドマンのVFX班は、砂を人へ浴びせる、縁から落とす、塊を崩すなどの実験を重ね、砂像作家にも助言を求めた。粒子プログラムだけでなく、現実の砂がどの瞬間に塊へ見えるかを観察した。誕生場面の崩れと再生には、長期の物理研究が人物の感情として使われている。
公開10年後の2017年、劇場版と異なる編集や追加場面を含む「エディターズ・カット」が映像商品で公開された。ただし予告編で見えた全削除場面を復元した完全版ではない。2017年ソニー発売の映像商品版は、同じ撮影素材から別のリズムを確認できる公式別編集である。版の異なるソフトや録画を持つ捜査員は、場面や尺の差が実在するか照合してほしい。
建設現場周辺の破壊には、VFX監督スコット・ストックダイクの班が高層建築の一部を16分の1模型で作ったとされる。すべてをCGで壊すより、実物の破片と光を撮って合成素材にする方が速く現実的な場合があった。建設現場の崩壊には、粒子CGとは別の縮尺模型の破壊が混ざっている。
初期の黒スーツには、原作の大きな白蜘蛛を持つラテックス製デザインが検討された。完成版では通常スーツを黒く歪めた形にし、ヴェノムもピーターの衣装が侵食された外観へ統一した。教会で剥がれる黒スーツは、別人の衣装ではなくピーター自身の変質として読める。
イメージワークスは砂表現のため専用プラグインを開発し、デジタル砂が登場するショットは約260に及んだとされる。接写では一フレームに最大約2億粒相当を扱う説明もあり、距離に応じて粒子密度を制御した。巨大サンドマンの表面は、単一モデルではなく大量粒子の階層処理で形を保っている。