主な参考資料
- 書籍・アーカイブ
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1998年公開。マイケル・クライトンの1987年の小説をバリー・レヴィンソンが監督・製作した企画だが、水中撮影の費用が膨らみ、ワーナーは1996年10月に準備を一度止め、脚本と制作方法を見直した。外海や既存施設では水の濁り、温度、天候を制御できないため、閉鎖直後のカリフォルニア州メア・アイランド海軍造船所を借り、巨大な乾ドック内に管理可能な水槽と海底基地のセットを建設した。撮影監督アダム・グリーンバーグらは、深さ約7フィートの水槽をはるか深い海底に見せる照明と撮影法を試し、外部構造には縮尺模型も併用した。製作費は約7,300万〜8,000万ドル、世界興収は約7,300万ドルにとどまった。未知の球体より先に制作費が膨張し、海底の水圧は制御できてもスタジオの期待圧までは減圧できなかったようだ。
銀色の球体は暗闇で消えてしまった。原作どおりの銀色なら簡単に見えるが、暗い格納庫では鏡面が周囲の黒を映し、球体そのものが消えてしまった。シネサイトのチームは約9か月かけておよそ75種類を検討した。未知の物体を目立たせるため、原作の記述より画面で読める反射を優先したのである。
最終色はアポロ宇宙船の金箔から採った。VFX班が金色の案を出したのは、最初は行き詰まった議論を動かすためだった。ところが監督バリー・レヴィンソンが反応し、最終的にはアポロ月着陸船の金色の断熱材を参照したシャンパン色へ落ち着いた。海底の物体なのに、表面には人類の宇宙開発を思わせる色が潜んでいる。
俳優が演じた時点では銀色だった。完成版の球体は金色だが、サミュエル・L・ジャクソンが演じた相手は銀色の仮球体だった。接触が必要な部分にはグリーンの構造物を置き、後から表面を合成したという。俳優は完成形を見ないまま、未知の物体の重さと距離を身体で作っていた。
反射にはあるのに見えない光を合成した。現場の懐中電灯は球体の反射には写ったが、空中を走る光の筋までは見えなかった。そこでVFX班は実写の反射を残しつつ、動くライトへ合わせて光線だけを追跡合成した。派手な怪物ではなく、観客が当然あると思う光を補う仕事が、球体の存在感を支えている。
約400のVFXショットと公開直前の別会社。『スフィア』には、シネサイトが担当した約400のVFXショットと模型撮影がある。さらに終盤が変更されると、公開まで数週間という時期にソニー・ピクチャーズ・イメージワークスも作業へ加わった。静かな心理SFに見えて、裏側では複数社がぎりぎりまで映像を組み直していた。
クラゲは実写・操演・CGの混成だった。クラゲの群れはすべてCGではない。近隣の水族館で撮った本物のクラゲ、操演用パペット、CGを組み合わせ、距離や接触に応じて素材を切り替えた。透明で形の定まらない生物だからこそ、本物と人工物の境界を隠す混成が効果を上げている。
海上ロケを避け、造船所と水槽で深海を作った。深海基地の撮影は外洋へ出るのではなく、カリフォルニア州のメア・アイランド海軍造船所跡などに水槽を組んで行われた。海の天候に左右されず、照明、濁り、俳優の安全を管理できるからである。広い海を描くために、閉鎖された工業施設を使った逆説が画面の圧迫感にもつながった。
潜水服の中で眠れるほど待ち時間が長かった。水中撮影は常に危険と緊張の連続だったわけではない。ピーター・コヨーテは、照明の準備中にヘルメットと潜水服の中であまりに落ち着き、そのまま眠ってしまったと語ったとされる。重い装備で動く場面の裏には、俳優が身動きできないまま待つ長い時間もあった。
平日は深海、週末は『ジャッキー・ブラウン』。サミュエル・L・ジャクソンは平日に『スフィア』を撮り、週末には『ジャッキー・ブラウン』の現場へ入っていたとされる。海底で未知の存在に取り込まれる数学者と、犯罪劇の武器商人を一週間の中で往復していたことになる。事実確認は追加で必要だが、演技の切り替えを想像したくなる日程である。
ULF報告書の相談は即興だったという説がある。ハリーとノーマンが、架空のULF報告書をどう作ったか、テッドをどう扱うか話す場面は、情報説明でありながら二人の過去の共犯関係が妙に生々しい。ただし、即興だったと確認できる台本稿や出演者の証言は見つかっていない。そうだったのかもしれないと思って会話の間へ注目すると、少し面白く見える場面である。
ダスティン・ホフマンは未完成感を語った。主演のダスティン・ホフマンは、映画にはまだ直すべき問題があったのに、公開日に合わせて渡さなければならなかったと不満を表したとされる。終盤のVFXへ別会社が公開直前に加わった記録とも重なり、締切が完成形を決めた可能性が見える。ただし発言の原媒体は未回収である。
ノーマンの姓と第五の隊員が映画で消えた。原作ではダスティン・ホフマンの役はノーマン・ジョンソンで、調査隊には海洋生物学者アーサー・レヴィンもいる。映画は姓をグッドマンへ変え、レヴィンを省いた。単なる名前変更ではなく、専門家集団を絞って、ノーマンとベス、ハリーの心理関係へ重心を移した翻案である。
減圧をめぐる疑問で終幕が撮り直された説。初期の終幕は、深海から戻った人物が長い減圧を経ずに生還する点を試写観客が信じられず、撮り直されたとされる。公開直前に別のVFX会社が終盤へ参加した記録も、変更が遅い時期まで続いたことを示す。科学的な疑問が結末を動かしたという魅力的な説だが、試写報告書は未回収である。
失敗が別のリドリー・スコット企画へ影響したという回顧。『スフィア』の影響は作品内だけに終わらなかったという見方がある。本作と『ポストマン』の不振が、ワーナーによるリドリー・スコット版『アイ・アム・レジェンド』の中止判断を後押ししたという回顧がある。
球体の表面にスタッフの遊びが隠された。球体の反射は物語上の情報だけでなく、VFX班の小さな遊び場にもなった。瓦礫の一部をガンビーとポーキーの形にし、亀裂には担当者ティムの名が読めるよう忍ばせたという。高解像度で探しても分かりにくいが、未知の完全な物体へ人間の署名を残したイースターエッグである。