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1994年公開。撮影監督として『ダイ・ハード』や『氷の微笑』を手がけたヤン・デ・ボンの長編監督デビュー作で、約3,000万ドルという大作としては抑えた予算で組まれた。ロサンゼルスでは建設中で未開通だった高速道路を走行撮影に利用し、その現場で見つけた道路の途切れを脚本へ取り込み、バスを実際にランプから跳ばした後で、道路の隙間だけをデジタル合成した。最初のジャンプは失敗してバスを壊し、二度目は想定より遠くへ飛んでカメラまで破壊したが、別角度の一台が肝心の映像を押さえていた。世界興収は約3億5,000万ドルに達し、都市そのものを巨大な撮影所として使う方法が興行にも当たった。渋滞で有名なロサンゼルスを舞台に「速度を落とせない」映画を成立させた時点で、最大の特殊効果は道路使用許可だったのかもしれない。
仮題はMinimum Speed。脚本家グレアム・ヨストの父が別映画を記憶違いして語ったことから、「一定速度を下回ると危険」という『スピード』の核が磨かれていった。
アニーは最初からサンドラ・ブロック型のヒロインではなかった。初期稿では黒人の救急車ドライバーとして構想され、ハル・ベリーやエレン・デジェネレス案も語られている。
キアヌ・リーブスは当初「若すぎる」と見られ、サンドラ・ブロックも上位候補ではなかった。いまでは鉄板に見える組み合わせが、実は候補外や後順位から決まっている。
サンドラ・ブロックのオーディションでは、折りたたみ椅子と紙皿を使って即席のバス空間が作られたという。低予算な小道具で、のちのバス密室パニックを試していたのだ。
バスが走るI-105は、撮影時点ではまだ一般開通前だった。ロサンゼルスの高速道路を、映画が巨大な撮影所のように使えたタイミングだった。
制作側は「本当に走るバス」の迫力にこだわり、トレッドミル上で撮る案まで退けた。『スピード』の怖さは、画面に残る実車の重さから来ている。
有名なバスジャンプは、実車スタントにVFXを重ねて成立している。現実にはありえない道路の空白を、本物の飛びと視覚効果で押し切った名場面だ。
電話ボックスの場面では、生の通話感を出すために本当に通じる電話を現場へ運び込んだという。小さな仕込みが、犯人とのリアルタイム感を支えている。
空港場面はLAXではなく、モハーヴェ空港で撮られている。しかもバス誘導用のケーブルが画面に残るカットがあり、実車撮影の痕跡まで見える。
終盤の地下鉄暴走は、1/8ミニチュアや特注小型カメラ、逆フロント投影を組み合わせたものだ。バス映画のラストに、模型特撮の大仕事が潜んでいる。
ジョス・ウェドンは台詞の大幅なリライトに関わったが、「Pop quiz, hotshot」は自分の台詞ではないと述べている。名台詞にも作者の取り違えが起きやすい。
デニス・ホッパーの悪役ハワードは、撮影開始後しばらくしてから固まった配役だった。声だけでも場を支配する遠隔操作の悪役が、かなり後から作品に刺さった。
マーク・マンシーナはバスの音をサンプリングし、スコアの打音として使った。音楽まで走るバスそのものから作られているのが面白い。
バスの下からすべり出る危険な場面は、主演本人ではなくスタントダブルが担当した。武勇伝ではなく、専門チームの身体技術で成立した見せ場だ。
海外版やビデオ版には、ロゴや一部カットに差分があるという話が残っている。ただし細部の確認は媒体差が大きく、版ごとの差分候補として扱うのが安全だ。