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2008年公開。グラント・ニーポートの脚本を、ウィル・スミスが主演と製作を兼ねて映画化し、『幸せのちから』のガブリエレ・ムッチーノ監督と再び組んだ作品だ。ムッチーノはスミスのスターらしい仮面を外すことを狙い、スミスも普段の外向的な人物像とは逆の、静かで内向的な演技へ意識的に寄せた。スタジオは題名の意味や主人公の目的を予告段階で伏せてミステリーとして売り出し、公開初週は約1,600万ドルと当時のスミス作品として近年最低水準だったが、最終的な世界興収は約1億6,660万ドルに達した。スターの魅力をいったん封印する映画を、そのスターの名前で大々的に売る。ハリウッドはこういう矛盾まで商品にしてしまう。
ウィル・スミスが『7つの贈り物』へ入る入口にしたのは、喪失のあと人がどう翌日を生きるのかという問いだった。主人公の沈黙には、計画を隠すためだけではない前へ進めない時間がある。スターの笑顔を抑えた理由も、ここにありそうだ。
ガブリエレ・ムッチーノは、ウィル・スミスの親しみやすい表情やリズムをそのまま使わせなかった。感情を説明しすぎない演技へ寄せたことで、主人公の孤立がスターの武器を手放した顔として残る。知ると、会話の間まで妙に重く見えてくる。
原題『セブン・パウンズ』には、『ヴェニスの商人』で借金の担保になる「肉1ポンド」が重なっている。奪われるはずの肉を自ら差し出す発想へひっくり返した、契約の暴力を反転した題名だ。邦題のやわらかさの奥に、少し不穏な影がある。
題名の数字を臓器や組織の総重量で説明する話は広まっているが、実際の重さは個人差が大きく、きれいに7ポンドへは収まらない。数字の核は医学ではなく、負債を数えるための比喩にある。体重計より古典劇を追う方が、題名の手がかりに近い。
公開時の取材では、主人公が何をしようとしているのかを出演者まで具体的に語らなかった。善意にも脅威にも見える状態を保つ、秘密そのものを売りにする宣伝だったらしい。初見の居心地の悪さまで、作品の仕掛けに組み込まれている。
ガブリエレ・ムッチーノは、主人公の背後や頭越しから世界を見る画を選び、観客をその視点へ寄せた。顔を隠すことで感情から遠ざかるのでなく、見えない顔で孤立へ近づく構図だ。静かな移動場面まで、心理描写に見えてくる。
脚本家グラント・ニーポートは、ある国家的悲劇を自分の責任だと感じて苦しむ男性に出会った。その姿から、巨大な罪悪感を一人で背負う主人公の発想が始まったらしい。人の心に残る傷は、筋書きより先にあった。
グラント・ニーポートは初稿へ約6か月をかけ、さらに映画化チームと約18か月、断続的な改稿を続けた。秘密をいつ明かすかという構造は、二年近い調整を通して磨かれた。時間のかかる仕掛けだ。
ロザリオ・ドーソンによれば、本作には通常より長いリハーサル期間があり、準備を共有したうえで会話を即興できた。練習を重ねたから崩せる台詞が、二人の距離を自然に見せている。きっちり決めるための自由だ。
重要なロマンチック場面で流れる曲は、ロザリオ・ドーソンが提案したものだった。俳優が持ち込んだ音楽の記憶が、台詞だけでは出せない親密さを場面へ加えている。音楽は小さな共演者だ。
ウィル・スミスが緊張していた親密な場面は、撮影終盤まで先送りされた。ジェイダ・ピンケット・スミスも現場で支えたといい、私生活の信頼まで含む準備が静かな場面を成立させた。ここは意外に慎重な現場だった。
Blu-rayの特典は、脚本、製作、監督、ロケ、美術、編集、音楽という七つの視点で映画を分解する。題名の数字を制作工程へ移した構成だ。一場面が多部門の判断からできると見えてくる。
Blu-rayには箱クラゲの生態を追う短編と、劇中の印刷機や活版印刷を扱う特典がある。生物と機械の現実を別々に掘ることで、象徴に見える要素へ物理的な手触りを戻している。調べ方まで少し変わる。