主な参考資料
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2002年公開の本作は、『ハムナプトラ』二部作から派生したスピンオフであり、前作でキャラクターを演じたプロレスラーのドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソンを、初の本格的なアクション映画主演へ押し上げる企画だった。ユニバーサルの配給責任者ニッキ・ロッコは公開時、この作品は前作群ほど高価なVFX大作ではなく、ストレートなアクションとスタントを売りにするため、製作費を約3分の1抑えた60,000,000ドル規模だったと説明している。撮影はアリゾナやカリフォルニア州立公園のアンザ=ボレゴ砂漠州立公園でも行われ、美術のエド・ヴェローは、古代文化を調べつつ、特定の史実を再現せずに歴史的な手触りを持つ調度を組み立てた。映画機関のクレジットでは、脚本はスティーヴン・ソマーズ、ウィリアム・オズボーン、デヴィッド・ヘイター、美術はヴェロー、VFXスーパーバイザーはロドニー・イワシナ、音響デザイナーはポール・N・J・オットソンであり、劇場作品として美術・VFX・音響の各部門を置く構成だったことが分かる。北米公開初週末は3,444館で36,075,875ドルを記録して4月の新記録となり、The Numbersでは北米累計90,580,000ドル、海外75,310,634ドル、世界165,890,634ドルとされる。古代砂漠を再現するために学術調査とスタントを重ねても、スター誕生の最短経路は結局「怪物役を一度やってみる」ことだったらしい。
チャック・ラッセルは、ユニバーサルから同じ年に監督候補として提示された二つの企画のうち、本作を選んだ。以前からWWEでドウェイン・ジョンソンを見ており、観客を引きつける長いマイク演説に俳優としての力を感じていたためである。『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(2001)では脇役だったジョンソンを、一本の映画を背負う主演へ移すことが企画の中心になった。
ドウェイン・ジョンソンが本作で受け取った主演料は550万ドルだった。『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(2001)では五番手の出演者だったが、翌年の初主演作でこの金額を得たことで、映画初主演時の最高額としてギネス世界記録に認定された。俳優としては新人でも、WWEで築いた「ザ・ロック」の知名度が大作を背負える価値として計算されていた。
マサイアスが燃える幕を剣で切り裂く場面では、約20ポンド、約9キロの剣をドウェイン・ジョンソン本人が振っている。体格が似た代役を見つけにくいうえ、スタントマンには扱いづらい重さだったため、動きを細かく決めて本人が実演した。幕には実際に火をつけ、危険を抑えたうえで炎の一部をCGで補強している。
本作の剣は刃を落として安全性を高めていたが、DVDの殺陣特典では25ポンド、約11キロに達する物もあったと説明されている。俳優は重い武器を止める位置まで含めて訓練し、撮影直前に振付が変わっても相手へ当てないよう動きを組み直した。力強く見せることと、重量物を制御することを同時に求められる殺陣だった。
後に『サタデー・ナイト・ライブ』で知られるビル・ヘイダーは、俳優になる前、本作で制作助手を務めていた。カリフォルニアのミステリー・メサで約20時間働いた夜、疲労で宿泊先を見つけられず車を止め、自分がこの仕事を続ける理由を考え直したという。撮影終了の一週間後にPAを辞め、編集助手を経てコメディ教室へ進んだ。
存在しない古代を歴史らしく作った。布、動物の皮、腸を加工した素材、縄、より糸など原始的に見える材料を大量に使い、史実には存在しないが観客には古代の品と分かる家具や装飾を作った。ゴモラの宮殿と部族の野営地が異なる文化に見えるのも、素材と形の体系を分けた結果である。
ゴモラの街は一から建てた都市ではなく、ユニバーサルのバックロットにあった「スパルタカス広場」を作り替えている。『スパルタカス』(1960)のために作られた場所へ新しい外壁や装飾を重ね、過去作品で使われた巨大像も形を変えて配置した。スタジオに蓄積されたローマ風の造形を、マサイアスが潜入する架空の古代都市へ転用したのである。
ゴモラの正門は、俳優が触れる下部をユニバーサルのバックロットに作り、セットより上の巨大な構造を合成で延長したとされる。地面の砂ぼこり、家畜、群衆は実写のまま残し、門の高さだけを画面内で増やすことで、既存の広場を王都の入口へ変えた。VFX会社R!OTが上部の拡張を担当したという制作記録が残っている。
本作の広い砂漠や岩場は、中東や北アフリカではなくカリフォルニアで撮影された。アンザ=ボレゴ砂漠州立公園を含む複数の景観を使い、近代的な物を避けた構図と美術で一つの古代世界につないでいる。ゴモラの内部はユニバーサルのセット、荒野は州内ロケと役割を分け、移動の広さを作った。
マサイアスの顔へ迫り、顎で潰される巨大な赤い火蟻は、一匹も本物を使っていない。ドウェイン・ジョンソンは会議室で蟻の位置と速度を想定した動きを稽古し、撮影では何もいない砂地を相手に演じた。完成後にCGの蟻を加えたため、「危険な火蟻を実際に使った」という話は誤りである。
手に持つコブラだけCGへ置き換えた。制作班は実物のコブラを撮った試験映像から体の曲がり方や頭の動きを調べ、手元の蛇をCGで作った。危険を避ける必要がある接写だけを置き換えたため、周囲の実写素材と自然につながるよう動きを合わせている。
マサイアスがサソリの尾を切り、矢へ毒を塗る場面では、生きたサソリと自然死した個体を使い分けた。調教師がドウェイン・ジョンソンへ安全な持ち方を教え、必要な接写には死んだ個体を用いている。尾から出て矢じりへ付く毒液は、本物の毒ではなく蜂蜜である。
鎖につながれたライオンとトラが争っているように見える場面では、成獣同士を戦わせていない。柔らかい首輪を着けたライオンとトラの幼獣に骨を与え、普段の遊びを撮影した。後から唸り声などの効果音を足すことで、仲の良い二頭の動きをゴモラの見世物らしい攻撃へ変えている。
ハヤブサの飛行はグリーンバックで分けた。鳥を止まり木へ置くカット、グリーンバックの前を飛ぶカット、調教師が俳優の腕へ乗せて回収するカットに分けた。編集と合成でつなぎ、自在に命令へ従う鳥のように見せている。
マサイアスの相棒になる白いラクダは、画面上の愛嬌とは反対に扱いが難しい動物だった。撮影中には調教師を振り落としたが、ドウェイン・ジョンソンは代役へ替わらず、自分で乗る場面を続けたという。思う方向へ曲がらないアウトテイクも残り、台本通りに動かない性質がラクダのコメディにも生かされた。
主演インタビュー ドウェイン・ジョンソンが語るラクダとの撮影 公開時の主演インタビュー。1分41秒から、扱いの難しいラクダとの撮影を本人が振り返る。 Retro Hollywood Rewind YouTubeで見る ↗マサイアスとバルザザールの一騎打ちで、ドウェイン・ジョンソンの肘がマイケル・クラーク・ダンカンの顎へ実際に当たった。ダンカンはメイク室で頬を膨らませ、撮影を続けられないほど腫れたふりをして、心配するジョンソンをしばらく騙したという。その後のテイクでは「二度と俺を殴るな」という趣旨の台詞を即興で加え、事故を二人の掛け合いへ変えた。
マサイアスとバルザザールが力任せに剣を打ち合わせる最中、二本の剣が撮影用の予定を越えて実際に折れたとされる。鋭い破片が飛んだため、ドウェイン・ジョンソンとマイケル・クラーク・ダンカンは同時に顔を背けた。二人の反応まで含むテイクが完成版に残され、振付では作れない一瞬の緊張になった。
『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(2001)のスコーピオン・キングは、軍勢を得るため魂を売る敵として登場した。本作はその結末へすぐ接続せず、王になる前のマサイアスを、兄を失った傭兵から部族をまとめる英雄へ作り直している。既に悪役として知られた人物の過去から、単独シリーズを始められる出発点だけを取り出した構成である。
毒矢を受けたマサイアスをカサンドラが救う場面は、当初、彼女が胸へ手を当てて治療する形だったとされる。チャック・ラッセルは魔法を示すだけの動作より、口で傷から毒を吸い出す方が二人の距離の変化を表せると考え、方法を変更した。治療と恋愛の進展を別々の場面にせず、一つの接触へまとめたのである。
チャック・ラッセルは当初、ゴッドスマックの既存曲「Voodoo」(1998)を本作へ使うことを考えていた。再録音の相談を受けたサリー・アーナは、古い曲を作り直す代わりに新しい音楽を提出し、孤独に戦うマサイアスを題材に「I Stand Alone」(2002)を書いた。曲はエンドクレジットと宣伝を支え、映画専用の主題歌として先に世へ出た。
劇伴を担当したジョン・デブニーは、古代冒険映画らしい大編成のオーケストラへ、ロックの強いリズムと音色を組み合わせた。物語の時代に忠実な音を再現するのではなく、当時「ザ・ロック」として知られた主演の身体性を音楽にも移すためである。管弦楽の英雄主題と現代的な打撃感が同じ戦闘場面で鳴る構成になった。
ユニバーサルは本作を、『ハムナプトラ』(1999)と『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(2001)と同じ規模のVFX大作にはしなかった。ドウェイン・ジョンソンの身体を見せる剣戦、スタント、砂漠ロケを中心に置き、製作費は約6,000万ドルに抑えた。既存シリーズの世界を広げながら、費用のかかる怪物より新しいアクションスターを売る設計だった。
北米では2002年4月19日に3444館で公開され、最初の週末だけで3607万5875ドルを記録した。当時の4月公開作品としては最高の初週末成績で、ドウェイン・ジョンソンの映画初主演が興行上の賭けだけではなかったことを示した。最終的な北米興収は9058万ドル、世界累計は1億6589万634ドルに達している。
本作の主演表記は「ドウェイン・ジョンソン」ではなく、当時のプロレス名「The Rock」だった。ジョンソンは公開時、映画でその名を使う権利関係から、当時WWFを率いていたビンス・マクマホンが製作総指揮として記載されたと説明している。映画のクレジットにも、プロレスで作られたスター名を誰が保有するかという契約が表れていた。
2002年発売のCollector's Edition DVDには、火蟻の襲撃、毒矢を受ける場面、メムノーンとカサンドラの会話、結末など、9本の拡張場面が収録された。本編へ一律に戻した100分版ではなく、画面に現れる剣の印から別テイクへ移る「Enhanced Viewing Mode」と、個別再生を選べる仕様だった。劇場版と未使用素材を比較するためのDVD特典である。
古代エジプトには、先王朝期の支配者「スコーピオン王」と結びつけられる棍棒頭などの遺物が実在する。しかし本作のマサイアス、ゴモラ、メムノーン、諸部族の戦いは、その人物の生涯を再現したものではない。考古学上の呼び名から「5000年前の王」という入口を借り、暗殺者が王になる架空の冒険を作っている。
悪役メムノーンは当初、チョウ・ユンファを想定して書かれたという話がある。伝えられている内容では、本人のマネージャーが「悪役を演じればファンを裏切る」と判断して断り、最終的にスティーヴン・ブランドが起用された。ただ、チョウ本人、マネージャー、監督、配役担当者の証言は見つかっていない。初期案としてありえそうだが、チョウを想定した役だったとはまだ言い切らない方がよさそうだ。
最初の編集版は約70分しかなく、劇場用の長さへするため追加撮影が行われたという話がある。完成版は約92〜94分で、DVDには9本の拡張場面も残るが、それだけで「70分から撮り足した」とは証明できない。足りないのは初期編集の上映記録、追加撮影の日程、監督または編集者の証言である。
終盤の火炎効果がドウェイン・ジョンソンの眉を焦がし、撮影が数時間止まったという話がある。本作が実火を使った場面を含むことは監督が認めているが、この事故そのものを示す映像、事故記録、本人または特殊効果担当者の証言は見つかっていない。実火の使用と負傷の有無は分けて扱う必要がある。
ハレムの落下場面でスタントマンが鼻を骨折し、ドウェイン・ジョンソンが見舞いとして腕時計を贈ったという話がある。具体的で印象的な逸話だが、負傷した人物の氏名、撮影日、医療記録、ジョンソン本人の証言が残っていない。現段階では、撮影事故と贈り物の両方を確認できる制作記録が不足している。