主な参考資料
- AFI
- D23
- Los Angeles Times
- ComingSoon.net
身代金を配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
1996年公開。1954年のテレビ劇『Fearful Decision』とその映画版『Ransom!』を下敷きに、リチャード・プライスとアレクサンダー・イグノンが現代のニューヨークへ置き換え、ロン・ハワードがそれまでの家族向けヒット作とは異なるR指定スリラーとして監督した。メル・ギブソンのスター性を使いながら、身代金を支払う定型を途中で反転させる構成が企画の売りとなり、撮影もニューヨークの街路と室内セットを往復して緊張感を作った。約7,000万ドルの製作費で世界興収は約3億900万ドルとなり、当時のディズニー系実写作品として大きな成功を収めた。誘拐犯との交渉を描く映画だが、スタジオにとって最も説得力があったのは、結局いつもの興行数字だったのである。
テレビ生放送から二度映画になった物語。『身代金』の物語は1996年に突然生まれたものではない。1954年のテレビ生放送劇『フィアフル・ディシジョン(Fearful Decision)』が好評で翌年に再演され、1956年には映画『誘拐』になった。本作はその骨格を受け継ぎながら、父親が身代金を犯人への懸賞金へ変える決断を現代のテレビ社会へ置き直している。
初稿には誘拐犯側のドラマがなかった。完成版はマレン家だけでなく、誘拐犯たちの隠れ家へ何度も視点を移す。しかし最初の脚本には、犯人側のドラマがほとんどなかった。ロン・ハワードらがその層を加えたことで、身代金を懸賞金へ変える決断が家族だけでなく犯人集団そのものを崩していくサスペンスになった。
シェイカーは55歳の引退警官から作り直された。ゲイリー・シニーズが脚本を受け取った時、シェイカーは55歳の引退警官として書かれていた。若い自分がその疲弊だけを真似しても人物にならないと考え、ロン・ハワード、脚本家リチャード・プライスとの話し合いで動機から組み直した。完成版の危うさは、悪役の年齢を合わせたのではなく、現役警官が一線を越える理由を作り直した結果である。
役作りでニュージャージーの夜間巡回に同乗。シェイカーは犯罪者である前に、周囲から疑われない現役警官として見えなければならない。ゲイリー・シニーズは準備のため、ニュージャージー州ベイヨンで夜間巡回に同乗した。コンビニ強盗の現場で自然に指示を出す姿には、悪役らしさを先に見せず、職務の手つきを身体へ入れた効果が出ている。
現実の母親疑惑が脚本の不安へ入った。脚本家リチャード・プライスは、子どもの失踪をめぐって母親へ疑いが向いた1994年のスーザン・スミス事件を意識していた。そこでケイトにも疑惑が及ぶ空気を加え、誘拐事件を家族と犯人だけの密室にしなかった。テレビ報道が被害者をも容疑者に変える怖さが、父親の大胆な会見をさらに危険な賭けに見せている。
脚本家がシェイカーの相棒役で出演。コンビニ強盗の現場でシェイカーと行動する警官を演じているのは、共同脚本家のリチャード・プライスである。犯人側の人物像を厚くした書き手が、シェイカーの正体を隠す「同僚」として同じ画面に入った。短い出演だが、シェイカーが警察組織へ自然に溶け込んでいることを支える場面になっている。
撮影は盲腸手術とニューヨークの冬で遅れた。製作側は当初1996年夏の公開を目指していたが、メル・ギブソンの緊急虫垂切除、賞レースの日程、ニューヨークの厳しい冬が重なった。数日の撮影停止だけでなく、ロケと公開計画全体がずれ、最終的に11月公開となった。映画の冷たい街の空気は、製作側にとっても扱いにくい現実の条件だった。
クイーンズのステージと実際のニューヨークを接続。撮影はクイーンズのサウンドステージとニューヨーク各地のロケを組み合わせた。家庭内部の制御された緊張と、報道・警察が押し寄せる実在都市の広がりを両立した。
実の父子ではなく、俳優ニック・ノルティの息子が誘拐される少年役。ショーン役のブラウリー・ノルティは俳優ニック・ノルティの息子で、本作で主要な子役を務めた。著名俳優の息子という事実より、ほぼ台詞を奪われた状況で恐怖を表情だけで伝える配役に注目できる。
監督とルネ・ルッソは同じ高校に通っていた。ロン・ハワードとルネ・ルッソは同じ高校の出身で、後年の音声解説では互いに当時好意を持っていたと振り返っている。極度の緊張を演じる主演女優と監督の間に、撮影以前から意外な接点があった。
監督の娘ブライス・ダラス・ハワードが一瞬登場。トムが車で急ぐ場面で、横断中に危うくひかれそうになる少女は監督の娘ブライス・ダラス・ハワードだとされる。後年スターになる人物が、父の映画で名前のない通行人として画面に残った。
DVD特別版には捜査側を補う削除場面が残る。2004年のDVD特別版はロン・ハワードの音声解説に加え、FBI捜査官やシェイカーの共犯者を補う4本の削除場面を収録した。劇場版が速度のために削った捜査と共犯関係を、公式特典から確認できる。
ハワード・ショア版の音楽は完成版で差し替えられた。ハワード・ショアの音楽は退けられ、ジェームズ・ホーナーが完成版を担当したとされる。同じ映像でも、誘拐劇の緊張と家族感情をどの作曲家へ託すかが公開直前まで動いた可能性がある。