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2008年公開、EON製作の007シリーズ第22作、クレイグ版第2作で、『カジノ・ロワイヤル』の直後から始まるシリーズ初の本格的な直接続編として作られた。最大の難敵は悪役ではなく2007〜08年の全米脚本家組合ストで、ダニエル・クレイグは後年、撮影開始時に脚本はあったものの望んだ完成形ではなく、現場で場面を整える必要があったと認めている。パナマのボート追跡は約4週間、稼働中のコロン港でグリーンバックに頼らず撮影し、チリの天文台では夜間照明も爆破も許されないため、砂漠に別の施設を建てて燃やした。現場は実物主義に徹したが、物語を磨く時間だけは労使交渉に差し押さえられていた。製作費は約2億3,000万ドル、世界興収は約5億9,170万ドルで、前作に近い規模を保った。脚本を十分に直せない時期に、船と建物だけは容赦なく壊せたという、映画産業らしい優先順位である。
冒頭のカーチェイスは、『カジノ・ロワイヤル』の結末から約10分後に始まる。EON製作の007映画として初めて、前作の事件をそのまま引き継ぐ直接の続編として組み立てられた。ミスター・ホワイトの拘束、ヴェスパーの裏切り、ボンドの喪失感が一つの追跡劇に連結している。
参考情報:公式資料(英)
次作の検討は『カジノ・ロワイヤル』が完成する前から始まっていた。中心に置かれたのは、新任の00要員だったボンドがヴェスパーの死を受け止め、裏切りの背後へ進む物語である。前作と本作を続けて見ると、一人前のボンドが完成するまでを二作で描く設計が分かる。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
当初はロジャー・ミッシェルが監督候補だったが、撮影開始日だけが迫り、物語と脚本が固まらない状況に不安を感じて離脱した。アクションの絵コンテを先に始めるよう求められても、何を撮る映画なのか決められないという判断だった。公開予定は2008年5月から同年秋へ延期された。
参考情報:資料・アーカイブ
『カジノ・ロワイヤル』がフォースターを動かした。それでも『カジノ・ロワイヤル』でボンドが傷つき、愛し、失敗する人間として描かれたことに可能性を感じて監督を引き受けた。本作が復讐の感情を中心に据えるのは、起用理由そのものと結びついている。
参考情報:公式資料(英)
ポール・ハギスの脚本稿が製作側へ届いた直後、2007年の全米脚本家組合ストライキが始まった。撮影準備は止められず、通常なら現場まで続く脚本家による改稿ができないまま製作へ進んだ。後年ダニエル・クレイグは、物語を十分に整えられなかったことを本作最大の問題として振り返っている。
参考情報:公式資料
撮影時点の脚本は、ダニエル・クレイグが後に「骨組み」と表現する状態だった。脚本家へ通常どおり直しを頼めないため、クレイグとマーク・フォースターが現場で場面や台詞を調整した。クレイグはこの経験から、以後は脚本が固まっていない映画へ入らないと決めたという。
参考情報:公式資料
題名は2008年1月の発表直前まで決まっておらず、イアン・フレミングの短編から「Quantum of Solace」が選ばれた。原作でいう「慰めの量」とは、関係を保つために残っていなければならない思いやりの最小単位である。映画では、ヴェスパーを失ったボンドが復讐ではなく心の区切りを得られるかという意味へ置き換えられた。
参考情報:公式資料(英)
原作短編はスパイ作戦ではなく、ジャマイカでの食事中に結婚生活の破綻を聞かされる静かな物語である。映画はその筋や登場人物を使わず、題名と「思いやりがゼロになれば関係は終わる」という考え方だけを受け継いだ。派手な追跡劇の題名に、ボンドの心の傷を測る言葉が置かれている。
参考情報:公式資料(英)
初期の脚本では、ヴェスパーに以前の関係で生まれた子どもがおり、その子が組織に誘拐される案が検討された。完成版はこの救出劇を捨て、ボンドが裏切りの理由を知って首飾りを手放すまでに焦点を絞った。採用されなかった案と比べると、結末が復讐の達成より感情の整理を重視していることが分かる。
参考情報:資料・アーカイブ
初期稿では、ボンドが国際会議の会場で無線周波数を次々に切り替え、秘密会合を聞き出す構想だった。マーク・フォースターは説明だけでは映像が平板になると考え、舞台装置そのものが巨大な目に見えるブレゲンツの『トスカ』へ置き換えた。組織の会話と処刑、裏切りを描くオペラが同時進行する場面になった。
参考情報:資料・アーカイブ
主要アクションは、地上の追跡、水上戦、空中戦、炎上するホテルという四大元素を意識して配置された。当初はマーク・フォースターの故郷に近いスイスの雪山で決着する案もあったが、費用と過去作との類似を避けて砂漠へ移された。最後に水を独占する敵が火に包まれる構図まで、元素の対比が物語へ組み込まれている。
参考情報:資料・アーカイブ
マーク・フォースターは、Mが前作まで十分に使われていないと感じ、ボンドとの対話を大幅に増やした。彼が注目したのは、Mがボンドにとって性的な対象ではない唯一の主要女性だという関係である。命令違反を疑いながらも最後には信じる上司と部下の線が、復讐劇のもう一つの支柱になった。
参考情報:資料・アーカイブ
Qとマネーペニーは『カジノ・ロワイヤル』に続いて登場しない。製作陣は、若いボンドの直後の物語に二人を置く理由がまだないと判断した。道具を供給する専門家や気安い秘書との定型を外した結果、ボンドは携帯電話や追跡システムを使いながらも、組織内で孤立した人物として描かれる。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
カミーユとボンドは何度も危機を共有するが、恋愛関係にはならない。カミーユは家族を殺したメドラーノを追い、ボンドはヴェスパーを利用した組織を追うため、二人の結び付きは欲望ではなく復讐の痛みに置かれた。別れ際の短いキスも、任務の報酬ではなく互いの生還を確かめる別れとして描かれている。
参考情報:公式資料(英)
オルガ・キュリレンコはパリ、ロンドン、ダニエル・クレイグとの最終テストを経てカミーユ役を得た。撮影前には三週間、武器、格闘、アクセント、屋内スカイダイビングを集中的に訓練した。スタントへの恐怖を抱えながらも、救われるだけのヒロインではなく自分の標的を追う人物を身体から作った。
参考情報:公式資料
カミーユ役の候補には、当時まだ俳優として無名だったガル・ガドットもいた。役はオルガ・キュリレンコに決まったが、ガドットにとっては本格的な映画オーディションへの入口となり、その後『ワイルド・スピード MAX』へ進む契機になった。落選した007が、俳優としてのキャリアを始める側へ働いた例である。
参考情報:映画ニュースサイト(日)
マチュー・アマルリックは、傷、剃髪、血を流す目など、ボンド悪役らしい外見上の印をいくつも提案した。マーク・フォースターは「顔だけで十分」と退け、慈善家の群衆に紛れ込める普通の男として演じさせた。最後の戦いも熟練者の型ではなく、追い詰められた子どものように怒りで斧を振り回す動きになった。
参考情報:公式資料(英)
ドミニク・グリーンの表情には、ニコラ・サルコジの目つきとトニー・ブレアの笑顔が参考にされた。マチュー・アマルリックが取り込んだのは政策ではなく、観衆の前で親しみや信頼を演じる身振りである。環境保護を語りながら水資源を奪う人物だからこそ、露骨な怪人より公的な顔を持つ男として設計された。
参考情報:新聞社(米)
ジェマ・アータートンが最初に撮った大きな場面は、ホテルのベッドで油まみれになって発見されるフィールズの死だった。肌には本物の原油ではなく無毒性の黒い塗料が使われたが、全身を覆われた状態で横たわる撮影は不快で息苦しいものだった。新人俳優の初日が、シリーズ屈指の有名な死の再現になった。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
フィールズの遺体は、『ゴールドフィンガー』で全身を金色に塗られたジル・マスターソンと同じ構図で置かれている。マーク・フォースターは金粉を原油へ替え、「現代の金」をめぐる死として撮り直した。懐古的な再現でありながら、企業が資源と国家を買う本作の筋へ直接つながる引用である。
参考情報:公式資料(英)
ジェマ・アータートンがフィールズ役を得たとき、代理人は電話で結果を説明せず、007のテーマ曲を歌い始めた。本人はその旋律だけで合格を理解したという。ドラマ学校を出たばかりの俳優にとって、世界的シリーズへの参加を知らせる言葉は一つも必要なかった。
参考情報:資料・アーカイブ
ダニエル・クレイグは撮影中、顔を縫う負傷、古傷のある肩の手術、指先を切るけがを経験した。肩には手術で固定具が入り、撮影後には回復のため治療が必要になった。主演が走行、格闘、運転へ深く参加する現実志向のアクションは、身体的な負担と表裏一体だった。
参考情報:公式資料(英)
ガルダ湖畔の冒頭追跡には、ボンド側のアストンマーティンDBSを七台、追跡側のアルファロメオを八台用意した。狭い道路で接触、銃撃、崖際の走行を重ねるため、同じ外観の車を損傷段階ごとに使い分けた。完成版では数分の場面だが、準備と撮影には大規模な車両班とスタント班が投入されている。
参考情報:公式資料(英)
ガルダ湖へアストンマーティンDBSが転落した事故は、カーチェイスの撮影中に起きたスタントではない。車を撮影地へ運んでいたアストンマーティンの社員が雨天で制御を失ったもので、運転者は軽傷だった。映画の派手な追跡と現実の輸送事故が重なり、当初はスタントマンの事故として広まった。
参考情報:新聞社(英)
ガルダ湖周辺のカーチェイス撮影では、スタントマンのアリス・コムニノスが運転するアルファロメオがトラックへ衝突し、重傷を負った。悪天候下の山道で起きた事故を受け、製作は撮影を一時停止した。直前のDBS輸送事故とは別件であり、同じ地域で数日のうちに事故が続いた。
参考情報:新聞社(英)
シエナの屋根上追跡は、パインウッドに街並みを再現するより現地で撮る方が安いと判断された。ただし古い瓦の上をそのまま走ったのではなく、瓦を一度外し、屋根を補強してから撮影用に戻している。歴史都市の実景と俳優の足元を守る構造物を重ねて、連続した追跡を成立させた。
参考情報:公式資料(英)
シエナの競馬パリオは、主要撮影より前の2007年8月に先行して記録された。祭礼では多数のカメラを使い、ヘリ撮影と人や馬を巻き込む暴力表現を避ける条件で素材を集めた。翌年に撮った地下道と屋根上の追跡を編集で差し込み、実際の群衆と架空の逃走を同じ時間に見せている。
参考情報:公式資料(英)
ボンドが地下水路から地上へ出る場所は、当初シエナ大聖堂の地下貯水槽が想定されていた。宗教施設から武装した人物が飛び出す描写は文化的に無神経だと判断され、広場のフォンテ・ガイアへ変更された。追跡の勢いを保ちながら、実在する場所の意味に合わせて出口だけを書き直している。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
飛行機から落下する場面では、俳優をワイヤーで静止させる方法をやめ、ベッドフォードの風洞で実際に浮かせた。ダニエル・クレイグとオルガ・キュリレンコは最大時速約165マイルの風を受け、短い撮影を繰り返した。複数方向から得た身体の動きを空と地形へ合成し、実際の気流とデジタル空間を一つにしている。
参考情報:公式資料(英)
空中戦では、追跡用のパイパー機の機首へ「スネークヘッド」と呼ばれる旋回式カメラを装着した。カメラは360度向きを変えられ、撮影機が被写体へ近づきながら空対空の角度を選べる。操縦の勢いを弱めず、DC-3、攻撃機、ヘリコプターが同じ空域でぶつかる感覚を撮るための専用装置だった。
参考情報:資料・アーカイブ
ハイチのポルトープランスとして映るボートチェイスは、パナマの港町コロンで撮影された。サンシーカーの艇や小型船を実際に走らせ、ボンドがカミーユを別の船へ移す動きをスタントで組み立てた。撮影地の海岸線と船の衝突を使い、地上、海、空へ次々に移るアクションの「水」の章を作っている。
参考情報:公式資料(英)
QUANTUM幹部が集まるオペラは、ブレゲンツ湖上音楽祭で実際に上演されたフィリップ・ヒンメルマン演出版『トスカ』である。湖に浮かぶ巨大な目の舞台装置と出演者を映画へ取り込み、撮影用の照明だけを調整した。秘密組織を「見る」ボンドと、巨大な目に見下ろされる観客が同じ画面へ重なる。
参考情報:公式資料
オペラ場面では、QUANTUM幹部の会話が露見すると、舞台上の処刑と会場外の銃撃が交互に切り替わる。効果音を薄くし、『トスカ』の音楽に合わせて死と逃走を並べたことで、通常の銃撃戦とは異なる冷たい時間が生まれた。屋根から落ちる裏切り者の姿も、終幕で身を投げるトスカと響き合う。
参考情報:資料・アーカイブ
主要撮影22週のうち13週がロケに充てられ、英国、パナマ、チリ、メキシコ、イタリア、オーストリアを移動した。製作陣にとって007映画で最も高いロケ比率となり、港、祭礼、砂漠、湖上舞台を実景でつないだ。短い上映時間の中で国境を急速に越える感覚は、この移動量から生まれている。
参考情報:公式資料(英)
砂漠のエコホテル外観は、チリのアタカマ砂漠にあるパラナル天文台のレジデンシアである。普段は天文学者や技術者が滞在する施設で、閉じた外壁の内側に庭とプールを持つ建築が悪役の拠点へ転用された。標高約2600メートルの孤立した環境が、復讐に閉じたボンドの心理を映す場所として選ばれた。
参考情報:公式資料
パラナル天文台は稼働中の科学施設であり、夜の照明は観測を妨げるため使えず、建物を壊すこともできない。現地では外観を撮り、ホテル内部はパインウッドの007ステージいっぱいに、三層の通路と階段を持つセットとして再建した。実在建築の輪郭と、燃やせる巨大セットを編集で一棟に見せている。
参考情報:公式資料
ホテル決戦では、12日間に54回の制御爆発が行われ、ロビー、階段、客室、通路を約四週間にわたって燃やした。炎にはガソリン、イソプロパノール、緑と青の着色剤を混ぜ、中心が橙色で縁が青緑に見える燃焼を作った。俳優は衣装の下に耐火素材と難燃ジェルを着け、やり直せない火災を六台のカメラで同時に記録した。
参考情報:公式資料(英)
マーク・フォースターは実物の場所とスタントを優先したが、完成版には約900のVFXカットが含まれる。シエナでは安全ワイヤーを消し、ブレゲンツでは観客を増やし、空中戦と風洞撮影には広い空と地形を足した。目立つCGを見せるより、危険な撮影の制約を消して実写の連続性を保つ使い方が中心だった。
参考情報:公式資料
プロダクションデザイナーのデニス・ガスナーは、ケン・アダムが初期007で作った大胆な奥行きと幾何学を参照した。ただし秘密基地を懐古的に再現せず、ガラス、コンクリート、巨大な開口部を持つ現代建築へ置き換えた。実在するパラナルのレジデンシアが古典的な悪役基地に見えるのも、この設計思想と相性がよかった。
参考情報:公式資料(英)
Mの出番を増やすのに合わせ、MI6本部も前作から作り直された。デニス・ガスナーはジュディ・デンチを閉じた執務室から、情報が流れる明るい作業空間へ移し、電子テーブルを中心に捜査が進む場所を設計した。上司が遠くから命令するのではなく、分析と追跡の現場へ直接入る人物になっている。
参考情報:資料・アーカイブ
ボンドのスーツはトム・フォードと衣装デザイナーのルイーズ・フログリーが共同で設計し、11回の衣装替えに約450着が用意された。同じ服でも通常、血や埃で傷んだ状態、水に濡れた状態を俳優と複数のスタントマン分そろえた。高速移動の連続でも損傷のつながりを保ち、細身の仕立てで走りや格闘を妨げないよう調整されている。
参考情報:公式資料
オープニングタイトルを担当したMK12は、パインウッドに二つの巨大な砂箱を作った。四日間の実写撮影で砂、女性たち、ダニエル・クレイグを別々に記録し、モーションコントロールと合成で人物の大きさや距離を変えた。砂漠の孤独、銃弾の軌跡、女性のシルエットを、物語の乾いた色へ統一している。
参考情報:公式資料
タイトル会社がMI6の画面まで設計。MI6の電子テーブル、画面上の情報表示、ポルトープランスなどの地名タイトルも同じチームが設計した。文字が都市の建築や看板へ溶け込むため、場面転換の案内と組織のデジタル機器が一続きの視覚言語になっている。
参考情報:公式資料
主題歌「アナザー・ウェイ・トゥ・ダイ」は、ジャック・ホワイトとアリシア・キーズが歌い、007映画で初めての男女デュエットになった。ホワイトは脚本から「信頼」を主題に選び、互いに譲らない二つの声と荒いリズムを組み合わせた。ヴェスパーの裏切り後、他人だけでなく自分自身も信じられないボンドを音で表している。
参考情報:公式資料(英)
主題歌は当初、エイミー・ワインハウスとマーク・ロンソンの組み合わせで進み、デモまで作られた。しかし録音を完成させられる状態ではないと判断され、企画は中断した。公開まで時間が限られる中でジャック・ホワイトが曲を書き、アリシア・キーズとのデュエットへ組み替えられた。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
音楽は『トゥモロー・ネバー・ダイ』からシリーズを担ってきたデヴィッド・アーノルドが作曲し、現在まで彼の最後の007長編スコアとなった。『カジノ・ロワイヤル』の旋律を引き継ぎながら、追跡場面では打楽器と電子音を強めている。終幕後の「クロール、エンド・クロール」は制作が遅く、当初のサウンドトラック盤には収録されなかった。
参考情報:公式資料(英)
マーク・フォースターは通常、撮影後に約14週間をかけて編集するが、本作では最初の試写版まで約5週間しかなかった。長年組んだマット・チェシー一人では間に合わず、リチャード・ピアソンを加えて場面を分担した。短いカットを連ねる速度感は意図的な演出である一方、全体を整理する時間の不足とも切り離せない。
参考情報:公式資料
マーク・フォースターは、撮影後にスタジオで台詞を録り直す処理をできるだけ避けた。音響班には、風、車両、群衆の多いロケでも俳優の声を現場で使える状態にすることが求められた。整いすぎた後録りより、その場の呼吸や緊張を残す方針が、静かな会話にもアクションのざらつきを持ち込んでいる。
参考情報:公式資料
チリ北部での撮影では、シエラ・ゴルダの町長カルロス・ロペスが現場へ車で入り、警備を妨げたとして逮捕された。町長は、太平洋戦争でチリ領となった地域を劇中でボリビアとして見せることや、住民の通行を制限する警備に抗議していた。ロケ地の代用が、両国の歴史的対立を再燃させた出来事である。
参考情報:資料・アーカイブ
ドミニク・グリーンは油田を探すふりをして地下水をせき止め、政権交代と引き換えにボリビアの水道を支配しようとする。この筋は、2000年に同国で水道民営化と料金上昇への抗議が広がった「コチャバンバ水紛争」を思わせる。環境保護企業の顔が、生活に不可欠な資源を独占する隠れ蓑になっている。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
「ボンド、ジェームズ・ボンド」という名乗りは複数の場面で撮られたが、場面自体が機能しないとして完成版から外された。シリーズ恒例の銃口シークエンスも冒頭ではなく、ヴェスパーの首飾りを手放した後へ移された。定番を見せないまま進み、復讐を終えた瞬間に初めて完全な007の印を置く構成である。
参考情報:新聞社(米)
世界興収は約5億8600万ドルに達し、公開当時の007シリーズ最高額を更新した。一方で、全米脚本家組合ストライキ下で整え切れなかった物語と細かい編集には厳しい評価が集まった。ダニエル・クレイグが制作の混乱を認めた後も、バーバラ・ブロッコリは完成作を誇りに思うと語っている。
参考情報:公式資料(英)
上映時間は約106分で、EON製作の007長編として現在も最短である。マーク・フォースターは、ヴェスパーを失ったボンドの目的を寄り道なく進めるため、二時間を大きく下回る「弾丸のような」映画を目指した。長編だった『カジノ・ロワイヤル』の直後を描きながら、速度と圧縮で対照を作っている。
参考情報:公式資料(英)
銃撃場面の訓練、試験、本番用として、製作は20万発を超える空包を用意した。画面に映る発砲回数だけでなく、武器の動作確認、俳優とスタント班の反復、安全手順にも同じ弾薬が必要になる。実弾を使わない撮影でも、大規模アクションを支える消耗品の量は桁違いだった。
参考情報:公式資料(英)
アルフォンソ・キュアロンとギレルモ・デル・トロは、俳優として大きく紹介されず、追加音声で参加している。キュアロンは空中戦のヘリコプター操縦士役も兼ね、フォースターの友人たちが無線の向こうへ紛れ込んだ。監督名を知らなければ通り過ぎる、耳で探すカメオである。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
砂漠のホテルで受付係を演じるオーナ・チャップリンは、チャーリー・チャップリンの孫である。さらにハイチのホテルでは、プロデューサーのマイケル・G・ウィルソンが新聞を読む客として一瞬映る。異なる二つの宿泊施設に、映画史とシリーズ製作を背負う人物が静かに配置されている。
参考情報:公式資料
製作中には、アル・パチーノが秘密組織の首領として終幕に登場する、あるいはメドラーノ役を演じるという噂が流れた。完成版に出演はなく、正式な配役発表や本人の参加証言も残っていない。大物俳優を一場面だけ使う構想として語られたが、現段階では制作事実ではなく当時のキャスティング情報として扱うべき話である。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
エイミー・ワインハウスとマーク・ロンソンが主題歌のデモを作ったことは確認されている。一方、ポール・マッカートニーが先に依頼を断り、ワインハウスを推薦したという経路は裏付けがそろっていない。確認できる制作過程と、後から付いた著名人の逸話を分けておく必要がある。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
ドミニク・グリーン役について、マーク・フォースターがブルーノ・ガンツを思い描いていたという話がある。完成作ではマチュー・アマルリックが演じているが、ガンツ案が正式交渉まで進んだのか、監督の私的な着想に留まったのかは判然としない。配役変更として断定せず、初期の候補説として残すのが妥当である。
参考情報:新聞社(米)
カミーユ役には約400人、フィールズ役には約1500人が検討されたという数字が広く紹介されている。国際的な選考だったことは確かだが、応募者全体、資料選考、実際のオーディションのどこまでを数えた数字かは資料ごとに曖昧である。人数は目安として扱い、選考過程そのものと切り分ける必要がある。
参考情報:資料・アーカイブ
MI6やイスラエルの情報機関に属する実在の工作員や暗殺者が、撮影現場で助言したという話がある。しかし参加者名、担当範囲、正式クレジットを示す制作記録は見つかっていない。匿名の専門家が関わった可能性は否定できないが、現段階では確認済みの制作秘話としては扱えない。
参考情報:資料・アーカイブ(英)
ボンドの衣装については、約420点で各スーツ9着という数字と、約450着で11回の衣装替えという説明が併存する。通常、破損、水濡れ、スタントマン用の複製を大量に作った点は一致しているが、シャツや小物を含めるかで総数が変わる可能性がある。公開時は衣装担当者が示した約450着を優先する。
参考情報:資料・アーカイブ
ガルダ湖へ落ちたアストンマーティンDBSの残骸が、新車価格を上回る約20万ポンドでファンに売れたという話がある。車の水没事故は報道で確認できるが、購入者、売却主体、落札記録までは追えない。事故後に付け加えられた高額売却の逸話として、事実部分と分けて扱う必要がある。
参考情報:新聞社(英)
完成版とは別に、ボンドがガイ・ヘインズの邸宅でミスター・ホワイトと対面する短い終幕が撮影された。場面を残すと次作もQUANTUMを追う物語に固定されるため外されたと説明されているが、誰を撃ったのかなど細部には資料差がある。削除映像の存在と、その完全な内容は分けて考える必要がある。
参考情報:新聞社(米)
監督選定では、トニー・スコット、ジョナサン・モストウ、アレックス・プロヤスの名前も候補として挙がったとされる。ただし、正式な打診、面談、単なる業界内予想のどれだったかを示す資料は見つかっていない。ロジャー・ミッシェルの交渉と降板とは異なり、候補一覧として保留する。
参考情報:資料・アーカイブ
アクション場面が予定より長引き、予算が大幅に膨らんだうえ、使用前のスタント車まで多数壊れたという話がある。撮影規模と複数の事故は確認できるが、当初予算、超過額、未使用車の損失を結び付ける制作記録は見つかっていない。個別の事故から製作全体の会計へ推測を広げない方がよい。
参考情報:新聞社(英)
公開後には、カミーユが『スカイフォール』にも登場し、クレイグ版で継続する協力者になるという噂が流れた。実際の『スカイフォール』にカミーユは登場せず、この情報は実現しなかった。恋愛で終わらない関係が再登場を期待させたものの、製作側は別の人物と物語を選んでいる。
参考情報:資料・アーカイブ(英)