『アサシン/暗・殺・者』ニーナ・シモンを聴くヒロインは、リメイクで加えられた
『アサシン/暗・殺・者』の主人公マギーは、ニーナ・シモンを聴きます。ジョン・バダム監督は、この音楽を聴く設定を米国版で加えた要素の一つとして挙げています。単にフランス語の台詞を英語にしただけのリメイクにはしたくなかったのです。[1]
・字幕を変えるだけでなく、人物に何を足すか
本作の元になったのは、リュック・ベッソン監督の『ニキータ』(1990)です。バダムは、字幕のある映画を見に行かない米国の観客へ届ける企画である一方、作り直すなら新しいものを考える義務があると話しています。[1]
元の映画がすでにあるからこそ、なぜもう一度撮るのか。その答えの一つが、ヒロインの生活に音楽を組み込むことでした。
・歌は、人物が自分で選ぶ音でもある
監督が挙げているのは、シモンの曲を映画の背景へ流すことだけでなく、「主人公がシモンを聴く」という行為です。[1] 観客へ気分を伝える劇伴と、登場人物自身が好きで聴く音楽では、物語の中での位置が変わります。
誰にも言わずに部屋で選ぶ曲があれば、その人物に任務や訓練だけではない時間があると分かります。これは監督の説明を踏まえた、画面の見方の一つです。なぜその歌を好むのかをすべて台詞で説明しなくても、人物の好みを置くことはできます。
・壊したくない原作と、変えたい部分
バダムは同じインタビューで、ベッソンが元の映画で成し遂げたものを壊さず、米国の文脈で物語を作り直そうとしたと説明しています。[1]
原作との違いを探すと、場面の順序やアクションの規模に目が向きがちです。しかし本作では、主人公が何を聴くかも変更点でした。組織から役割を与えられるヒロインの中に、本人が選ぶ歌が残っている。リメイクを見比べるなら、そんな小さな個人の領域にも注目してみてください。