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2003年公開。ディズニーランドの同名アトラクションを映画化する企画は、海賊映画が長く不振だったことに加え、先行するアトラクション映画『カントリー・ベアーズ』の失敗もあり、CEOのマイケル・アイズナーが中止を検討するほど信用されていなかった。ジェリー・ブラッカイマーは単なる海賊活劇だった初期案を退け、テリー・ロッシオとテッド・エリオットが超自然的な呪いを物語の中心へ入れ、ゴア・ヴァービンスキーが実景・船・デジタルの骸骨を組み合わせた。ジョニー・デップの風変わりな演技にも会社側は不安を示したが、製作費約1億4,000万ドルに対し世界興収は約6億5,400万ドルへ達した。会社が止めかけた一本が巨大シリーズの第1作になったのだから、ディズニーの予知能力は海賊の羅針盤ほどには当てにならなかったのである。
テーマパークの乗り物が原作の『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』は、当時かなりリスクの高い企画だった。海賊映画がヒットしにくい空気の中で、アトラクション由来の大作がシリーズの出発点になったのだ。
初期脚本に関わったスチュアート・ビーティーは、ジャック・スパロウをヒュー・ジャックマンを念頭に置いて作ったと語られている。最終的にジョニー・デップが演じたことで、キャラクターの方向性は大きく変わった。
ジョニー・デップは18世紀の海賊を現代のロックスターのように捉え、ジャック・スパロウの動きや空気感にキース・リチャーズ的な要素を混ぜたとされる。普通の二枚目海賊ではなく、酔っているようで計算している人物像が生まれた。
初期の読み合わせでジョニー・デップが見せたジャック・スパロウ像は、ディズニー側をかなり戸惑わせたとされる。幹部からはキャラクターが酔っているのか分からないという反応まで出たほど、当時としては異物感のある主人公だった。
ジョニー・デップはジャック・スパロウの外見について、鼻が欠けているような案まで出していたとされる。最終的には採用されなかったが、金歯以上に攻めた見た目も検討されていたのだ。
ジャック・スパロウ役には、ジム・キャリーの名前も候補として語られている。ただし当時のスケジュールが合わず、最終的にはジョニー・デップのかなり変な海賊が世界的キャラクターになった。
呪われた海賊たちが月光で骸骨の姿になる表現は、本作のVFXの大きな売りだった。普通の海賊アクションにホラー風の変身ギミックを混ぜたことで、アトラクション由来の映画らしい奇妙さが強まっている。
ジャック・スパロウ役をロバート・デ・ニーロが断ったという話も流通している。ただし一次資料で固めにくく、候補俳優の噂が混線したキャスティング都市伝説として扱うのが自然だ。
脚本のテッド・エリオットとテリー・ロッシオは、海賊映画に乗り物由来の雰囲気を重ねるため、呪われたアステカ金貨の設定を加えたとされる。普通の宝探しではなく、返さなければならない宝にしたのが大きい。
初期の脚本案では、ウィル・ターナーは鍛冶屋ではなく、エリザベス救出のためジャックを逃がす看守として考えられていた。完成版の恋愛と血筋のドラマは、職業設定から大きく変わったことで整理された。
初期ストーリーでは、バルボッサではなくキャプテン・ブラックハートという敵がエリザベスを誘拐する案だった。完成版ではヘクター・バルボッサと呪いの設定が前面に出て、悪役の軸も作り直された。
バルボッサたちが呪いを解こうとする洞窟は、制作チームが5か月かけて作った大掛かりなセットだ。水を張り、金貨や金色に塗った岩を配置して、宝の山に見える空間を作っている。
ジャック・スパロウが持つピストルには、ロンドンで1760年に作られた本物の古い銃が使われたとされる。画面では一瞬の小道具でも、時代物の実物感でキャラクターの胡散臭さを支えている。
海賊たちの歯や肌には、壊血病や不潔さを思わせる加工が施された。きれいな冒険映画にしすぎず、歴史ファンタジーとしての汚れを足したことで、海賊世界の手触りが強くなった。
呪われた海賊が月光の下でだけ骸骨になる設定は、VFXを常時使わずに済ませる予算上の工夫としても語られている。制約から生まれた見せ場を限定するアイデアが、作品の怪奇味を強めた。
海辺の場面は南国ならどこでもよかったわけではない。制作側は撮影しやすい静かな海岸を確保できることを重視し、セントビンセントのワリラブー湾周辺を大きなロケ地にしたとされる。
インターセプター号の手触りは、CGだけで作った船ではなく、実在する帆船レプリカレディ・ワシントンを使ったことにも支えられている。帆や船体の動きそのものが、海戦シーンの説得力を底上げした。
VFXの見せ場は骸骨海賊だけではない。ロケ地に映り込む現代物や不要な痕跡を消す、地味な消去作業も大量に行われ、18世紀の海賊世界らしさを支えていた。
月光で変身する骸骨海賊は、単なる同じ骨の群れではない。俳優ごとの顔立ちや衣装の雰囲気が残るよう個別設計され、怪物化しても誰なのか読めるように作られていた。
ブラックパール号はデジタルだけの船ではなく、大型模型や精巧な物理モデルも使われたとされる。ミニチュアを超えたbigature的な作り込みが、船の重さと存在感を画面に足している。
呪いの宝は、ただ大量にある金貨ではない。アステカ金貨には882枚という具体的な数の設定があり、宝探しではなく「欠けた一枚を戻す」話として物語を動かしている。
本作の音楽は、古典的な海賊映画の再現だけではない。制作側は、おとぎ話のきらめきとロックの荒さをぶつけるようなおとぎ話とメタルの感覚で、短期間にシリーズの音を作り上げた。
劇場版だけでは見えない編集の跡も残っている。一部DVD版には未公開・延長シーンが多数収録され、完成版から何を削ったのかを追える入口になっている。
近年のシリーズ映画だけでなく、本作にもクレジット後の追加映像が仕込まれている。最後まで見ると、猿のジャックに関する小さな後日談が入り、続編での扱いにもつながる。
本作の船をめぐっては、ほぼ全部CGだったように語られることがある。しかし実際にはレディ・ワシントンのような実船レプリカや模型も使われており、全面CG映画と見るのは雑な理解だ。