主な参考資料
- The Guardian
- Vanity Fair
- YouTube
- Entertainment Weekly
- AFI
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1999年公開。リチャード・カーティスは近所の実在する旅行書店を訪ね、店内で映画の構想メモを取らせてほしいと頼んだことから、ノッティング・ヒルを舞台にした脚本を育てた。ジュリア・ロバーツの起用は、カーティス、ロジャー・ミッシェル、ダンカン・ケンワーシーが面談で候補側を試されるような始まりで、彼女は相手役候補が自分より二十歳ほど上ばかりだと指摘したという。ミッシェルは脚本を受け取った際、前作の舞台演出が買われたと聞き、ヒュー・グラントの同居人役をスコットランド人からウェールズ人へ改めてリス・エヴァンスを起用した。実在の書店はシェパートン・スタジオのバックロットに建て、外観は地域で撮影し、グラントは書店の店長と時間を過ごして役の手がかりを得た。カーティスはミッシェルとの長く難しい編集で3時間超の映画を2時間に縮めたと振り返る。製作費はBox Office Mojoで4,200万ドル、同サイトのオリジナル公開分の世界興収は約3億6,389万ドルであり、街角の本屋を撮るにも、スター二人と大規模編集を通すと、ロマンティック・コメディも立派な都市開発案件になるのである。
リチャード・カーティスが物語の出発点にしたのは、無名の男性が世界で最も有名な女性と付き合い、いつもの友人たちとの夕食へ連れてきたら何が起きるかという想像だった。スターの生活を豪華な映画界の内側から描くのではなく、誕生日会の席で職業や出演料を尋ねられる側に置いた。そのため本作の名声は、遠い世界の記号ではなく、普通の会話を少しずつ狂わせる現実的な力として描かれている。
初期稿は、ウィリアムが世界的スターのアンナと、向かいのレコード店で働く女性のどちらを選ぶかという三角関係だった。リチャード・カーティスは約半年かけてその形を書いたが、好意を持てる二人の女性を作っておきながら、一方を結婚相手に値しない人物として退けることができなかった。そこでレコード店の女性をウィリアムの妹ハニーへ変更し、恋敵ではなく二人の関係を応援する家族として残した。
アンナが人目を避け、街で自分の存在を小さくしようとする描写には、リチャード・カーティスが実際に見てきた変化が入っている。無名時代から知っていたコメディ関係者が有名になると、道で顔を伏せて歩くなど、周囲を意識する動作が増えたという。ジュリア・ロバーツはサングラスの方がかえって注目を集めると指摘し、脚本上のスター像にも本人の経験が加わった。
製作側は当初、ウィリアム役に無名の俳優を起用する案も検討した。世界的スターが恋に落ちる相手を「何者でもない普通の男性」として描くのに、『フォー・ウェディング』(1994)で有名になったヒュー・グラントでは説得力が弱まると考えたためである。それでも、リチャード・カーティスの台詞を自然に話せることと前作で築いた信頼を優先し、グラントを再び主演に選んだ。
アンナ役はジュリア・ロバーツを念頭に置いていたが、本人は最初、映画スターが映画スターを演じる企画を退屈で気まずいものだと感じた。自分の知名度を利用しただけの役に見えることを警戒していたが、リチャード・カーティスの脚本だったため読み始め、考えを変えて出演を決めた。後年にも、映画女優を演じることは自分の仕事の中でも特に難しく、役への入り方が分からなかったと語っている。
ニューヨークでジュリア・ロバーツと初めて昼食を取った時、脚本家リチャード・カーティス、監督ロジャー・ミッシェル、製作者ダンカン・ケンワーシーは、自分たちが彼女を審査する側ではなく、出演する価値のある企画かを試される側だと感じた。相手役候補を示すと、ロバーツは全員が自分より約20歳上だと指摘した。製作側はスターとの面談の段階で、男女の年齢差を当然とする配役感覚まで問い直された。
旅行書店でアンナがウィリアムへ思いを伝える場面の衣装は、衣装部が用意したスターらしい服ではなかった。ジュリア・ロバーツは華やかに装うことへ違和感があり、運転手に自宅へ戻ってもらい、自分のサンダル、青いベルベットのスカート、Tシャツ、カーディガンを取ってきてもらった。世界的な女優が肩書きを外して一人の女性として話す場面を、本人の日常着が支えている。
ロジャー・ミッシェルは、世界的スターを演じるジュリア・ロバーツに、化粧を落としてカメラの前へ立つ場面を求めた。アンナを常に完璧な有名人として見せるのではなく、注目を浴びる華やかな姿と、傷ついた時の無防備な顔を同じ人物の中に置くためである。ロバーツ本人の知名度を利用しながら、その外側にいる一人の女性まで見せる演出だった。
ヒュー・グラントは出演を決める前、脚本家ウィリアム・ゴールドマンに台本を送り、引き受けるべきか意見を求めた。ゴールドマンは作品を勧めながらも、パパラッチが押しかけた後にアンナが廊下でウィリアムを激しく責める場面を、第一級のハリウッド女優は演じないだろうと予想した。ジュリア・ロバーツはその難しい場面も受け入れ、アンナを常に好感の持てるスターとしては演じなかった。
ウィリアムの同居人スパイクは、脚本の段階ではスコットランド人だった。ロジャー・ミッシェルは舞台『アンダー・ミルク・ウッド』(1995)で一緒に仕事をしたウェールズ出身のリス・エヴァンスを起用したいと考え、役の出身地を俳優に合わせて変更した。奇抜な服装や行動だけでなく、話し方と人物の出自も、エヴァンスを迎えるために作り直されている。
ウィリアムの友人たちを演じる俳優は、撮影前に約二週間のリハーサルを行った。アンナが加わる前から長年続いてきた仲間に見えるよう、会話の間や互いの距離を揃えるためである。終盤でベラを車へ運ぶ場面では、ヒュー・ボネヴィルがジーナ・マッキーを階段の上まで19回も抱えて運び、親しい友人同士の軽快な場面を身体的な反復で作った。
製作側は当初、ヒュー・グラントとジュリア・ロバーツが実在のノッティング・ヒルへ出れば、見物人や報道陣で撮影できなくなると考え、街並みを再現した巨大な外観セットも検討した。最終的には地域の市場、商店、住民を含む実際の通りで撮影する方針を選んだ。色の違う住宅やポートベロー・ロードの人の流れは、管理された背景ではなく、撮影隊が現地と調整して残した街の姿である。
実在の住宅街と商店街で長期間撮影するため、ロケーション班は住民や商店主など多数の関係者へ連絡し、撮影への理解を求めた。協力の条件として、それぞれが希望する慈善団体へ製作側から寄付する仕組みを用意し、最終的に約200団体へ資金が渡ったとされる。街を借りる作業が、許可証の取得だけでなく地域との交渉と寄付を含む大規模な仕事になった。
ウィリアムの旅行書店は、実在する一軒の店でそのまま撮影したものではない。リチャード・カーティスはブレナム・クレセントにあった旅行書専門店へ通い、店の仕事を取材したが、映画の外観にはポートベロー・ロードの古道具店を使い、店内はシェパートン・スタジオに建てたセットで撮影した。現実の店の仕組み、映画向きの外観、撮影しやすい内部を一つにつないでいる。
ウィリアムが暮らす家の青い玄関扉は、リチャード・カーティスが以前住んでいた改装礼拝堂の入口だった。脚本を自宅の近くで書いたため使われたように見えるが、撮影場所を決めたのは美術監督スチュアート・クレイグで、色の異なる住宅が並ぶ一角を画面に最も映える場所として選んだ。脚本家の生活圏と美術上の判断が偶然重なり、作品を代表する外観になった。
ウィリアムがポートベロー・ロードを歩く間に夏、秋、冬、春が過ぎる場面は、約一年を本当に待って撮った長回しではない。ヒュー・グラントの歩く位置を揃えながら、季節ごとに市場の装飾、天候、通行人の服装を変えて複数回撮影し、人や露店が画面を横切る瞬間に映像をつないだ。背景では妊婦が赤ん坊を抱くようになり、ハニーの交際も始まって終わるため、時間の経過を美術と小さな芝居でも示している。
劇中でアンナがウィリアムへ贈る絵は、マルク・シャガールの『花嫁』(1950)を再現した撮影用の複製画である。製作側は所有者と著作権管理団体から許可を取り、画家トマシーナ・スミスが小道具を制作した。ただし本物と誤認される精度の偽物が美術市場へ流れることを防ぐため、撮影後に破棄することが許可の条件になった。
撮影後に組み上がった本作は3時間を超えており、ロジャー・ミッシェルとリチャード・カーティスは、約2時間の完成版へ縮める長い編集を行った。カーティスは脚本家として編集にも参加し、場面を減らしながら、自分が台本で意図した感情や会話が失われていないかを確認した。完成版の軽いテンポは、最初から短く設計されていたのではなく、大量の素材を選び直した結果である。
リチャード・カーティスは編集途中の映像へ、シャルル・アズナヴールの楽曲『She』(1974)を付けてヒュー・グラントに見せた。『フォー・ウェディング』(1994)の初期映像には悲観的だったグラントも、この映像を見た時は作品が巨大なヒットになると直感したという。終幕用にはエルヴィス・コステロが同曲をアビー・ロード・スタジオで録音し、演奏中はジュリア・ロバーツの映像がオーケストラの上へ投影された。
誕生日の夕食会で、アンナは前作一本の出演料を1500万ドルだと答える。この数字は最初から台本にあったものではなく、ジュリア・ロバーツがリチャード・カーティスの金額を低すぎると指摘し、次回作の出演料交渉にも影響するよう引き上げさせた。冗談として使われる短い台詞に、1990年代末のトップスターが自分の市場価値を守る現実が入り込んでいる。
終幕でウィリアムが公園のベンチに座って読んでいるのは、ルイ・ド・ベルニエールの小説『コレリ大尉のマンドリン』(1994)である。ロジャー・ミッシェルが本作の次に映画化を監督する予定だったため、自分で画面へ入れた。しかしミッシェルはその後に重い病気となって降板し、映画『コレリ大尉のマンドリン』(2001)はジョン・マッデンが監督した。
二人が夜に塀を越えて入る私有庭園はロズミード・ロード、ウィリアムが一人でアンナの映画を見るのは実在のコロネット劇場、終盤の結婚披露宴はヘンペル・ホテルの日本庭園で撮影された。いずれもノッティング・ヒル周辺に実在する場所で、恋愛の始まり、別離、結婚という節目ごとに性格の違う空間を選んでいる。
Box Office Mojoの掲載値では、本作の製作費は4200万ドルで、1999年のオリジナル公開における世界興行収入は3億6388万9678ドルに達した。ヒュー・グラントも、『フォー・ウェディング』(1994)の成功とジュリア・ロバーツの参加により、前作よりはるかに大きな資金を使えたと振り返っている。街角の旅行書店を舞台にした恋愛映画は、製作規模も興行も国際的な大作になった。
リチャード・カーティスは2023年、黒人文化と移民の歴史を持つノッティング・ヒルを舞台にしながら、主要な黒人登場人物を置かなかったことを後悔していると語った。公開当時の1999年にも、実際の地区から黒人住民の存在が消えているという批判はあった。作品の人気とは別に、脚本家本人が街の一部しか描かなかった点を後年に認めている。
リチャード・カーティスは後年、慈善番組で上映する短編として、ウィリアムとアンナが離婚した後を描く続編を考えた。長編の続編ではなく、複数の旧作を約10分ずつ再訪する企画の一つだったが、ジュリア・ロバーツは二人を離婚させる案を良くないと判断した。主演女優の同意を得られなかったため、幸福な結末を覆す後日談は制作されなかった。
アンナは本編を通して、ウィリアムへ直接話しかける時にも彼の名前を一度も口にしない。二人は書店、私有庭園、家、ホテル、記者会見と何度も会話するが、「ウィリアム」と呼ぶ台詞はない。アンナが冗談で使う別の呼び名を除けば、最も親密な関係になる相手を最後まで名前で呼ばない構成になっている。
ウィリアムは店内で、ここは旅行書だけを扱う専門店だと客へ説明する。しかし後の場面でアンナから贈り物を受け取る時、棚にはロジャー・セービンの『Comics, Comix & Graphic Novels』(1996)という漫画研究書が見える。実在のモデル店は企画に合わせて旅行以外の本も扱ったが、劇中の店主の断言と画面の棚は一致していない。
アンナの恋人ジェフを演じているのはアレック・ボールドウィンで、ウィリアムの家へ突然現れる短い出演である。さらに、ウィリアムとスパイクがテレビで見る白黒の劇中映画では、マシュー・モディーンがアンナの共演者として登場する。二人の著名俳優を短い役へ置くことで、画面外にも続くアンナのハリウッド生活を説明している。
アンナがレストランの隣席で自分を侮辱する客へ話しかける場面は、撮影現場で突然加えられたという説がある。しかし公開されている脚本には、客たちの会話、ウィリアムが注意しに行く流れ、アンナが自分の立場を語る場面まで書かれている。細かな台詞や演技に即興が入った可能性はあるが、場面全体がその場で生まれた、という話ではなさそうだ。
東パースのクイーンズ・ガーデンズには、終幕に登場するものと同じ献辞を刻んだベンチがある。長年、撮影に使われた実物が英国から渡ったと紹介されていたが、寄贈者は2019年、恋人への贈り物として作った複製品だったと明かした。映画の小道具だったら粋な話だが、現在確認できる証言では、作品に着想を得た別のベンチと考えるのがよさそうだ。
ニコール・キッドマンは後年、本作へ出演したかったと振り返っている。ただし、その発言から確認できるのは本人の希望であり、アンナ役のオーディションを受けた、正式なオファーが届いた、製作側の候補リストに入っていたという記録までは見つかっていない。候補だったのかもしれないが、配役交渉の資料が出るまでは本人の希望と分けておく方がよさそうだ。
ウィリアムがアンナを訪ねる場面は、ロンドンのRitzで実際に撮影された。宿泊客への影響を避けるため、ロビーを使えたのは午前2時から4時までだったという説明も複数の映画記事に残っている。ただし、ホテルの記録や撮影担当者の証言は確認できていない。深夜の短時間撮影だった可能性はありそうだが、正確に二時間だったかはコールシートなどが見つかるまでは言い切らない方がよさそうだ。