主な参考資料
- Den of Geek
- Motion Picture Association
- Art of VFX
- TIME
- AFI
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2014年公開の本作は、ジャウム・コレット=セラが監督し、ジョン・W・リチャードソンとクリス・ローチの原案を、ライアン・イングルを加えた3人の脚本にした、リーアム・ニーソン主演の航空サスペンスである。ほぼ全編が767の客室内で進むため、美術のアレック・ハモンドは実機を流用せず、クイーンズの倉庫に可動式の客室セットを新造し、そこで約3か月撮影した。窓や荷物棚に照明を隠し、通路の構造内にカメラ用レールを仕込み、外板を蝶番で開く設計にしたので、撮影班と約200人のエキストラを狭い客室から短時間で出し入れできた。空の機体と戦闘機はCGで、Prime Focus Worldは外観デザイン、破損、雲、炎を含む474ショットを5か月かけて担当しており、閉鎖空間の実写セットと外景VFXをはっきり分業した作品でもある。Box Office Mojoの製作費は5,000万ドル、The Numbersの北米興収は91,742,160ドル、世界興収は222,383,055ドルで、北米では公開初週末に28,875,635ドルを記録して首位に立った。機内の不穏さを作るために客室を広げ、乗客を素早く降ろせるようにしたわけで、現実の航空会社なら怒られそうな合理性が、映画ではむしろ正解だったのである。
ハイジャック映画ではなく機内ミステリーを目指した。ニューヨークからロンドンへ向かう航空機という逃げ場のない空間に、正体不明の犯人を置き、乗客の誰もが疑わしく見えるミステリーとして設計した。主人公が連邦航空保安官でありながら周囲から犯人扱いされる構図も、この方針から生まれている。
製作陣が売り込み用の初稿をリーアム・ニーソンへ見せた際、予想していた慎重な返事ではなく、「今すぐ作るべきだ」という反応が返ってきた。ニーソンは、隣席の乗客ジェン役にジュリアン・ムーアを提案し、企画を前へ進める役割も担った。二人は『クロエ』(2009)に続く共演だが、本作の配役は単なる再共演企画ではなく、主演側から出た具体案だった。
ジュリアン・ムーアは、日常的な飛行機旅行が疑心暗鬼へ変わっていく本作を、ヒッチコック風の出来事として捉えていた。同時に、子どもの頃に親しんだ『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)や『タワーリング・インフェルノ』(1974)のような災害映画にも近いと説明している。携帯電話を使う現代劇でありながら、限られた空間へ多人数を集め、誰が生き残るかを追う構成は1970年代の娯楽映画を受け継いでいる。
ジャウム・コレット=セラは本作を35ミリフィルムで撮影し、演技の撮り直しは通常三テイクまでと決めていた。デジタル撮影なら大量のテイクを残せるが、フィルムには費用と撮影量の制約があり、出演者も最初の数回へ集中するというのが監督の考えだった。技術上の問題がある場合を除き、狭い機内セットで同じ芝居を何十回も繰り返す方法は選んでいない。
物語の大半を占める旅客機内は、廃棄された実機ではなく、クイーンズの倉庫に一から建てたセットである。実際の航空機は高い圧力に耐える構造のため、壁や設備を外しにくく、人、カメラ、照明を動かす撮影には向かなかった。そこでアレック・ハモンドは767型を基に、実在感を保ちながら各部を分解・移動できる客室を設計した。
劇中のアクアトランティック航空は実在しないが、ロゴを置くだけの架空会社にはしていない。美術班は座席背面の布地に使った模様を、ギャレーの金属製仕切りにも繰り返し、客室全体に一つの会社が選んだような統一感を持たせた。乗客の背後に何度も映る模様まで、機内ミステリーの舞台を現実の路線らしく見せるために設計されている。
窓や頭上の荷物棚には照明を隠し、二本の通路にはセットの内部構造を利用したカメラ用レールを組み込んだ。レールは約5分で使用できる状態になり、客室の約70%を通路から撮影できたという。床へ大きな機材を置かずに済むため、カメラは通路を前後へ進むだけでなく、中央席の上を横方向へ移動することもできた。
約200人のエキストラに撮影班と機材を加えると、通常の乗降口だけでは出入りに時間がかかりすぎる。そこで客室の外板を二つの窓ごとのパネルに分け、撮影の合間にはガルウイング式の自動車ドアのように上へ開けられる構造にした。画面では密閉された旅客機に見えるが、カットがかかると胴体の側面が大きく開き、数分で人員を移動できた。
窓や荷物棚などの反復部品は、サム・ペイジがコンピューター上で3D設計した。合板の骨組みをCNCルーターで切り出し、真空成形した外装を重ねて、同じ形を客室の長さ分だけ並べている。最初の部品が約6ミリずれただけでも、それを90回繰り返せば後方では大きな誤差になるため、映画セットでありながら航空機に近い精度が求められた。
出入口と座席には廃機の実物を使った。複雑な機構を持つ外部ドアは廃棄された747から切り出し、胴体の曲面と色を周囲へ合わせた。エコノミー席も廃機から回収し、表面を外して濃い青へ塗り替え、出演者の顔が背景へ埋もれない配色にしている。
操縦室は客室セットから丸ごと切り離し、カメラや照明を入れやすくできた。操縦桿、スロットル、計器類には実機から得た部品を使い、その一方で平面型のタブレット端末を加えて、現実の特定機種をそのまま再現しない新しい機内へ整えている。本物の部品と撮影用の架空設計を組み合わせた操縦室である。
ファーストクラス用の新しいポッド型座席を航空機メーカーから購入すると、一席約25万ドルかかるため、美術班は別の方法を探した。アレック・ハモンドがコストコで見つけたのは、水平近くまで倒せるマッサージチェアだった。足置きを外し、客室へ収まるよう3D設計で寸法を調整した結果、ジュリアン・ムーアが座る高級航空座席へ変わっている。
客室セットは実際の旅客機と同じ窮屈さを保ちつつ、通路をわずかに広げていた。カメラとスタント班が動ける幅を確保し、身長約193センチのリーアム・ニーソンが歩いたときに頭が天井へ当たらないよう、頭上にも少し余裕を加えている。実機より広いことを観客に気づかせず、主演俳優が機内で格闘できる寸法へ調整したセットだった。
機内の格闘には、見栄えのする武術をそのまま持ち込んでいない。制作陣は航空保安官の訓練について調べ、酔った乗客などを狭い場所で制圧する際に使う、手首のひねりや急所への圧力を動きへ取り入れた。リーアム・ニーソンも航空保安官を訓練する特殊部隊経験者と動きを組み立て、大柄な主人公が最小限の幅で相手を止める格闘にした。
ビルと同僚の航空保安官が戦う洗面所場面は、完成版では約40秒だが、リーアム・ニーソンとアンソン・マウントは数週間練習した。カメラは各カットで固定され、壁を一面ずつ外して同じ照明方向の動きをまとめて撮ったため、格闘全体を最初から順番に演じたことはない。撮影には一日を使い、70カット以上を編集して一続きの攻防へ組み立てた。
洗面所は実際の旅客機とほぼ同じ大きさに作られ、撮影のために鏡や二面の壁を外せる構造になっていた。鏡越しに二人が見えるカットでは鏡そのものを取り外し、反対側にも動きを合わせる人物を置いたため、狭い区画に四人が入ることもあった。激しく身体をぶつける部分には、同じ形を発泡素材で作った安全用の複製を使っている。
匿名の犯人とのやり取りをすべて携帯電話の接写で見せると、約150回も端末を映す必要があった。そこでメッセージ本文を俳優の近くへ浮かべ、序盤は静止した文字、犯人の存在感が強まるにつれて動きと奥行きが増す表示へ変化させた。文字は情報を読むためだけでなく、姿を見せない相手の性格を画面へ持ち込む役割を持っている。
見えないメッセージを監督が読み上げた。長い接写では、ジャウム・コレット=セラがカメラのそばでメッセージの内容や表示のタイミングを伝え、ニーソンはその声に合わせて視線と表情を変えた。監督はモニター越しでは小さな反応を見落とすとして、俳優のそばで顔を直接確認しながら撮っている。
搭乗前の空港場面はJFK空港で撮影したが、保安区域へ入るには出演者と撮影班だけでなく、すべての機材を検査へ通す必要があった。撮影途中の移動だけで約3時間は何もできず、一日は約16時間に延びたという。航空保安の厳しさを利用した物語の制作現場も、現実の空港で同じ手続きから逃れられなかった。
乗客役は必要なカットだけ呼ばれたのではなく、主要出演者とともに同じ機内セットへ集められていた。約200人の乗客を配置し、撮影班の約50人はカメラに映らない狭い場所へ身を寄せながら撮影したという。背景にいる人物の席と反応が場面をまたいでつながるのは、同じ集団を閉鎖空間へ置き続けた撮影方法によるものでもある。
俳優が座席や壁へ触れる機内部分は、ほぼすべて物理セットで撮影した。一方、空を飛ぶ旅客機、周囲へ現れる戦闘機、雲や空港周辺の外景はCGで作られている。窓を境に実写とデジタルを分けたため、客室には本物の狭さと重量が残り、機体の破損や着陸では実在機では不可能な動きを見せられた。
Prime Focus Worldは本作の専任VFXパートナーとなり、約5か月で474ショットを仕上げた。ムンバイのチームが人物や座席を背景から切り分ける作業、動きの追跡、窓外のグリーンバック差し替えを多く担当し、バンクーバー側が機体や雲などのCGを制作した。ほぼ機内だけの映画でも、完成画面の各所に国をまたいだ合成作業が入っている。
機内外の爆発は、煙と炎をシミュレーションするソフトウェアHoudiniで作られた。破片や光を20から30層ほど重ね、十分に危険な爆発へ見せながら、旅客機がその場で墜落するほど大きくはしないよう調整している。派手さを増すだけではなく、その後も飛行が続く物語の条件に合わせて爆発の規模を決めた。
VFX班が最も苦労したのは、旅客機の形を作ることより、CGの外景を本物の空撮映像に見せることだった。実際の航空機映像を調べ、レンズの選択、カメラの安定の仕方、機体の反射、雲を抜ける際の影や光のにじみまで再現した。雲は場面に応じて平面画像と立体的な粒子を組み合わせ、移動速度が感じられるようにしている。
客室を進み、乗務員の横を抜け、ファーストクラスから操縦室へ入り、機外へ出てから再び客室へ戻る移動ショットがある。長さは約7分半、約1万1000フレームに及ぶが、実際に一回で撮った映像ではない。機内セットで撮った複数のテイクと、窓の外へ出るCG部分を継ぎ目が見えないよう接続し、一続きのカメラ移動にしている。
終盤の緊急着陸は、撮影前に簡易CGでカメラ位置と機体の動きを組むプリビズ(撮影前に映像の流れやカメラ位置を試す簡易映像)を作ってから制作した。空港の景観はアイスランドのケプラヴィーク国際空港を基にし、海岸沿いの平地と遠方の山並みを再現している。ポストプロダクションの終盤にも数ショットを追加・変更し、着陸の危険が段階的に大きく見えるよう構成を調整した。
製作費約5,000万ドルの本作は、北米公開初週末に28,875,635ドルを記録して首位となった。北米累計は91,742,160ドル、世界累計は222,383,055ドルに達している。旅客機の客室という限られた舞台を中心にした作品だが、世界興収は公表製作費の4倍を超えた。
本作の客室乗務員は、ルピタ・ニョンゴが演じるグウェンと、ミシェル・ドッカリーが演じるナンシーである。この二つの名前は、航空パニック映画『大空港』(1970)と『エアポート'75』(1974)で客室乗務員に付けられた名前と一致する。役名の一致は確認できるが、過去作への意図的な敬意だったのか、脚本家や監督による説明は残っていない。
ビルが乗客へ携帯電話の提出を求めてから、トム・ボーウェンの手をテープで縛るまでの捜索は、一続きのショットとして撮られたように見える。約200人を収容できる客室セットと内蔵カメラレールは、通路を移動しながら複数の乗客を追う撮影を可能にしていた。ただし、途中に見えにくい接続がないか、撮影記録とフレーム単位の確認はまだできていない。
リーアム・ニーソンは本作で2,000万ドルを受け取り、当時の自身最高額だったという話がある。製作費が約5,000万ドルと報じられた作品だけに事実なら大きな比率だが、金額を確認できる契約資料、本人や代理人の発言、最初に報じた業界媒体は見つからない。出演料として公開するには、2,000万ドルという数字の出所を特定する必要がある。
少女の熊はパディントンなのか。危機の中でビルが少女を守る関係を示す重要な小道具だが、公式商品だったことを示す小道具台帳や制作側の説明は見つからない。ブランド名を断定するには、製品タグを読める高解像度の撮影素材か美術担当者の確認が必要である。