『夏の庭 The Friends』子どもが庭へ入るまで、カメラも塀を越えなかった
『夏の庭 The Friends』(1994)で少年たちが老人の家を見張る場面には、子どもが敷地へ入るまでは、カメラも中へ入らないという決まりがありました。相米慎二の指示を、当時の撮影助手・福本淳が振り返っています。[1]
・塀は、人物だけでなくカメラの境界でもある
福本の回想は、2021年の相米慎二特集上映プログラムに掲載され、長沢朋哉による発言集にも再録されています。子どもたちが老人宅の周囲にいる間、カメラが塀の境界線を越えていないか、細かく確かめていたという証言です。[1]
家の外から老人を見る人物を撮り、次のカットでは家の中を自由に見せる。そういう撮り方もできますが、本作では、少年たちがまだ入れない場所へ、カメラだけを先回りさせませんでした。
・庭が開かれる時を、観客も待つ
この決め方なら、観客が見られる範囲も、少年たちと近くなります。老人の暮らしを先に詳しく知っている側ではなく、外から気にしている側に置かれるわけです。
塀を越えることが、物語の中の行動であると同時に、画面の内側を見せられるようになる変化でもある。庭を見る距離を、撮影位置の規則へ置き換えていた場面です。