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室井慎次 生き続ける者を配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
2024年11月15日公開の本作は、室井慎次を中心に据えた二部作の後編であり、本広克行が監督を務めた。出演者の福本莉子は、本作の撮影が先に始まったため、前編を通して見て初めて自身の役の変化に納得できたと振り返っている。監督によれば二部作は2月にクランクインし、雪国での撮影は苦労の連続だったが、本作に必要な場面では本物の嵐の中でドローンを飛ばし、風を受ける人物を撮ったという。これは後編の映像に気象条件を足したのではなく、天候が先に現場へ乗り込んできたケースである。東宝の2026年2月期中間期資料では本作の興行収入は17.3億円で、前後編の撮影順まで物語の公開順に従うとは限らない、という製作現場らしいねじれも残った。
二部作は公開順の通りには撮影されず、本作の場面から先に撮り始めた。日向杏を演じた福本莉子は、前編『室井慎次 敗れざる者』(2024)まで撮り終え、二本を通して見た時に初めて、自分が演じた人物の変化へ納得できたと振り返っている。演技は人物の出発点を撮る前に、後半の状態から組み立てられた。
本物の嵐の中でドローンを飛ばした。本広克行は荒れた空と強い風が必要な場面で、実際の嵐の中へドローンを飛ばし、風を受ける人物を上空から撮影したと説明している。機材構成や完成版で使われたカット数までは公表されていないが、画面の荒天には現場で起きた気象が入っている。
日向杏を演じた福本莉子は、本作で扱うライフルが想像以上に重く、構えた姿勢を保つだけでも力が必要だったと振り返っている。福本は銃器指導者から安全な扱い方を学び、撮影経験のある柳葉敏郎からも構え方を教わった。小道具を持てば成立する場面ではなく、重さに負けない身体の使い方から準備している。
【ネタバレあり】本広克行は本作の監督を引き受けた時点から、物語の最後に青島俊作を登場させる構成を考えていた。撮影では、脚本に書かれた台詞をそのまま読ませるのではなく、室井慎次と青島の関係が説明過多にならないよう、織田裕二らと現場で言葉を調整した。終盤の再会は、完成後に付け足したサービス場面ではない。
【ネタバレあり】本広克行は終盤の場面を撮る前、柳葉敏郎、織田裕二、プロデューサーの亀山千広と細部を決めすぎないよう、意図的に距離を置いた。長年シリーズを作ってきた四人の思い入れを先に重ねると、室井慎次と青島俊作の再会が感傷的になりすぎると考えたからだ。現場で俳優の反応を見ながら台詞を整え、抑えた場面にした。
【ネタバレあり】本広克行は、本作の終盤に出てくる車の運転者や電話の内容を一つの答えへ固定せず、観客が考えるための材料として残したと説明している。本広は「これが正解」となる設定を示しておらず、画面から複数の読み方が生まれる状態そのものが演出だった。特定のファン説だけを正解にはできない。
【ネタバレあり】コートを燃やす映像は脚本になかった。監督の本広克行が撮影時に加え、完成版へ入れた。脚本に説明台詞を足した変更ではなく、シリーズを象徴する衣装を使った映像として撮影現場で追加された。
東宝の業績資料では、本作の興行収入は17.3億円と記録されている。前編『室井慎次 敗れざる者』(2024)の19.2億円とは別の作品として集計されており、二部作を合わせた数字ではない。製作費は確認できないため、この興行収入だけから採算までは判断できない。
五時間のプロットを二本の映画へ分けた。脚本家の君塚良一はBSフジ向けの連続ドラマも想定し、初期プロットは約5時間分に達した。フジテレビと東宝は、警察を辞めた室井慎次の現在と物語の結末を約2時間へ収めるのは難しいと判断し、約2時間ずつの映画二本を1か月未満の間隔で公開する形にした。
本作の「生き続ける者」という題名は、室井慎次が主人公だった『容疑者 室井慎次』(2005)の「者」を受け継いでいる。亀山千広は二部作にすると決めた段階で、室井自身だけでなく、警察官として抱き続けた理念も後の人々へ残ってほしいという願いを題名へ込めた。完成版の結末から後付けした言葉ではなく、初期プロットの段階から物語の主題として置かれていた。
柳葉敏郎は室井慎次の像を守るため、約27年間、室井と重なりやすい役を意識して避けていた。製作側によると、柳葉は刑事、反社会勢力、強烈な犯人の役を断り、スーツやスリーピース、オールバックの髪型も避けていたという。本作で室井の物語へ決着を付けることは、俳優自身を長く続けた役の制約から解放する目的も持っていた。
過去映像を使う前に旧湾岸署の出演者全員へ説明した。亀山千広によると、湾岸署の過去出演者全員へ、素材を使用することと本作の内容を事前に説明した。懐かしい映像を編集で自由に差し込んだのではなく、旧キャストにも新しい物語の行き先を共有したうえで完成版へ組み込んでいる。
捜査本部へ入る場面で、柳葉敏郎は青島俊作が昔どこで話を聞いていたかを製作側へ尋ねた。所轄の刑事だった青島は後方の端にいたと聞くと、警察を辞めた室井慎次も中央や前列ではなく、一番左端へ座った。その位置を優先したため、本広克行は予定した角度を変え、桜章太郎役の松下洸平も室井の席へ合わせて何度も移動する芝居になった。
【ネタバレあり】捜索無線の台詞は谷口悟朗が組み直した。本広克行は、複数の声が畳みかける場面をアニメのように設計するため、『ONE PIECE FILM RED』(2022)の監督・谷口悟朗へ演出を依頼した。谷口は映像と仮音声を受け取り、雪崩や滑落の痕跡、女性隊長など画面に映らない捜索隊の人物と状況から台詞を組み直し、6人の声優を選んで収録した。
真矢ミキが沖田仁美を演じる場面には、本広克行が撮影現場へ立ち会っていない部分がある。本広はその場面を助監督へ任せて東京で撮影させ、自身は地方ロケの現場から送られる映像を遠隔で確認した。別の場所で撮る班へ丸投げしたのではなく、助監督に現場の判断を任せながら、監督が離れた場所から完成画面を統括する方法だった。
室井慎次の家にはテレビが置かれていない。美術を担当した相馬直樹は、一般的な家庭ならここに家具を置くという考えではなく、室井がどう歩き、既存の家へ何を後から付け足したかに合わせて道具を配置した。中央の急な階段も、二階がもとは物置だったという設定から、暮らしやすい階段ではなく勾配の強い形にした。家全体を、室井の生活習慣が残る人物表現として設計している。
終盤の捜索無線で最初に聞こえる声は、声優ではなくプロデューサーの亀山千広である。「踊る」シリーズでは歴代の製作陣が無線の声を担当してきたため、本広克行は本作でも亀山の声をシリーズの慣例として残した。その後に谷口悟朗が演出した6人の声優による無線が続き、昔からの内輪の声と、新たに作り込んだ音声ドラマを同じ場面へつないでいる。