主な参考資料
- TIME
- Rotten Tomatoes
エクスペンダブル・レディズを配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
2014年製作。原題は『マーセナリーズ』(Mercenaries)だが、「女性版エクスペンダブルズ」を前面に出し、低予算の模倣作品で知られるジ・アサイラムが『エクスペンダブルズ3』の米国公開直前に投入したアクション映画である。クリストファー・レイ監督の下、ゾーイ・ベル、クリスタナ・ローケン、ヴィヴィカ・A・フォックス、シンシア・ロスロックを救出部隊に、ブリジット・ニールセンを敵役に置き、男性版と同じく過去のアクション歴そのものを配役の売りにした。ロスロックの証言では、当初はニールセンが演じた敵役を依頼されていたが日程が合わず、撮影直前に降板したレベッカ・デモーネイの代役として別の役へ回ったという。女性アクションスターをまとめて主役にする発想は本家より先回りしていた一方、公開時の評価では台詞や制作規模の小ささが目立ち、豪華なのは主に出演者の履歴書だった。ハリウッドが女性版大作を会議している間に、ジ・アサイラムはとっくに撮って売ってしまったわけで、機会均等だけは予算審議より足が速かったのである。
原題は「傭兵たち」を意味する『Mercenaries』であり、『エクスペンダブルズ』シリーズの名称は入っていない。日本の発売元アルバトロスは『エクスペンダブル・レディズ』と名づけ、DVDの商品ページでも「世界的大ヒット映画『エクスペンダブルズ』の女性版」と明記した。製作会社と権利表記は本家シリーズとは別で、よく似た邦題は日本独自の販売戦略である。
米国では2014年8月5日に発売され、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』は10日後の8月15日に劇場公開された。発売の意図を説明する一次証言は見つかっていないが、ベテラン女性アクション俳優を集めた作品を、本家第3作への注目が高まる時期へ置いた日程である。
本作が米国で発売された2日後の2014年8月7日、TIMEは本家シリーズ側が準備していた女性スピンオフ『The ExpendaBelles』を報じた。こちらは『Mercenaries』とは別会社の別企画で、当時は「女性版エクスペンダブルズ」と呼ばれる映画が二つ並んでいたことになる。日本版が本家を思わせる邦題を採用したため、両企画はいっそう混同されやすくなった。
日本版公式ページは、クリスタナ・ローケンを『ターミネーター3』(2003)、ブリジット・ニールセンを『ロッキー4/炎の友情』『コブラ』、ゾーイ・ベルを『デス・プルーフ in グラインドハウス』、ヴィヴィカ・A・フォックスを『キル・ビル』『インデペンデンス・デイ』と結びつけて紹介した。役名より先に出演者のアクション映画歴を想起させ、異なる時代と系統の「強い女性」を一つの部隊へ集めた配役である。
CIA指揮官モナ役のシンシア・ロスロックは、1981年から1985年まで型と武器術の世界王者となり、100を超える大会に出場した武術家である。女性が男性と同じ部門で競っていた時代の北米武器術でも首位を獲得した。映画の「最強無敵の女たち」という宣伝文句には、演技上の設定だけではない競技実績が含まれていた。
シンシア・ロスロックは国際スポーツ殿堂の表彰へ向かう途中で、本作へすぐ戻るよう電話を受けた。アーノルド・シュワルツェネッガーから賞を受ける予定だったため式典側も譲らず、製作側は「受賞後すぐ飛行機へ乗る」条件で出演を認めた。その日程へ合わせて役が変更され、ロスロックは別の人物として撮影へ加わることになった。
急な役変更を受けたシンシア・ロスロックは、撮影地へ戻る飛行機の中で新しい役を必死に覚えた。最初に撮ったのは、主要女性キャストを相手に技術用語を並べる8ページの会話場面だったという。直前に受け取った台本で長い説明を担うことになり、格闘ではなく台詞量の多さが初日の難題になった。
モナ役はレベッカ・デモーネイが演じる予定だったが、直前の降板でシンシア・ロスロックへ渡った。もともと武術家向けに書かれた役ではないため格闘場面はなく、ロスロックの撮影参加も3日間だけだった。本人は、最初から自分を起用していれば誰かが戦う場面を加えたはずだと振り返っている。
ゾーイ・ベルは『ジーナ』でルーシー・ローレス、『キル・ビル』でユマ・サーマンのスタントを担当し、『デス・プルーフ』で本人役の主要人物へ転じた。本作では誰かの代わりに危険な動きを担うのではなく、突入部隊の中心カサンドラとして画面に立つ。女性アクションの裏方で培った経歴が、そのまま主演側へ移された配役である。
アクション経験の豊富な出演者を並べながら、危険な動作を俳優任せにはしていない。ショーン・クリストファーがスタント全体、クリス・カーネルが格闘を統括し、クリスタナ・ローケンにはジェーン・オースティン、ニコール・ビルダーバックにはタミコ・ブラウンリーがスタントダブルとして付いた。出演者の技能と専門班の設計を分けた体制である。
女子刑務所の場面には、ロサンゼルス郡のシビル・ブランド女子刑務所が使われた。1963年に完成し、最小警備から厳重警備まで女性を収容していた実在施設で、1990年代の閉鎖後は映画やテレビの撮影場所になった。女囚から救出部隊を選ぶ物語の入口は、同じ用途を持っていた建物の内部で撮られている。
劇中でカザフスタンの架空地域として描かれるガンザール州の村と砂漠は、カリフォルニア州サンタクラリタ周辺で撮られた。ロスト・クリーク・フィルム・ランチが州内の荒野、ヴェルザット・モーション・ピクチャー・ランチが村に使われ、ロサンゼルス近郊の撮影用敷地を組み合わせて海外の戦争地帯を作っている。
脚本を担当したエドワード・デルイターは、出演者名では「エド・デルイター」と表記され、現地協力者ヴェズも演じた。ヴェズは部隊を車で運び、作戦区域へつなぐ人物である。物語の進路を書いた脚本家が、劇中でもチームを次の場所へ運ぶ役を担っている。
クリストファー・レイは米海軍に7年間勤務し、艦艇勤務のうち3年間を海軍写真員として過ごした。その仕事が物語を映像で伝える関心を再び呼び起こしたという。映画監督の父フレッド・オーレン・レイは息子の進路に反対したが、本作のエンドクレジットには特別謝辞で父の名が記されている。
ニコール・ビルダーバックは2014年6月、本作が7月25日にサンディエゴ・コミコンで世界初上映されると告知した。当時のイベント媒体は、その投稿とともに「女性版エクスペンダブルズ」と紹介している。一般の劇場公開より先に、アクションやジャンル映画へ反応する観客が集まる場所で作品を披露する計画だった。
2014年バーバンク国際映画祭で、本作はBest Feature – Thrillerを受賞した。監督クリストファー・レイの公式サイトにも、同年の同映画祭で監督・製作者として受賞した経歴が載っている。日本では劇場未公開のDVD作品だが、完成年には映画祭でスリラー長編として上映・評価されていた。
日本では劇場公開されず、2014年12月3日にアルバトロスからDVDが発売された。品番ALBSD-1827の片面1層DVDで、89分の本編に日本語字幕と日本語吹替を収録し、特典映像は予告編のみだった。「エクスペンダブルズの女性版」という大きな宣伝文句とは対照的に、日本での入口は映画館ではなくセル・レンタル用の映像ソフトである。
一行がカザフスタンへ到着し、ヴェズがバンを格納庫へ運転する場面では、車両にカリフォルニア州のナンバープレートが付いているという指摘がある。本作の村や荒野はカリフォルニア州内で撮影されており、小道具のプレートにも実際の撮影地が残った可能性がある。
邦題や別名だけを見ると、『エクスペンダブルズ』シリーズの公式関連作のように見えることがある。しかし確認できる範囲では、The Asylumによる便乗型アクションとして見るのが自然だ。