主な参考資料
- Motion Picture Association
- TheWrap
- ComingSoon.net
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2019年公開で、F・ゲイリー・グレイが監督し、ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズに代えてクリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンを主演に据えたシリーズ第4作である。ソニーは当初『21ジャンプストリート』とのクロスオーバーを進めたが、製作者間の契約調整がまとまらず、新キャストによるスピンオフへ切り替えた。公開後の業界報道によれば、移民問題に触れる尖った初期脚本は、最終編集権を持つプロデューサーのウォルター・F・パークス主導で撮影中まで改稿され、毎日届く新しい台本に混乱した両主演はそれぞれ台詞担当の作家まで雇ったという。同じ報道ではグレイとパークスの衝突が続き、監督版と製作者版の2つの編集案を試写した末、パークス版が劇場公開されたとされる。製作費は約1億1000万ドル、北米興収は約8000万ドル、世界興収は約2億5431万ドルで、世界興収はシリーズ4作中最低となった。舞台だけは国際化したが、作品の指揮系統は同じスタジオ内で統一できず、MIBが最も消せなかったものは制作現場の記憶だったようだ。 ---
物語だけでなく、宇宙人を作る工程そのものが国際制作だった。VFX監修のダン・クレイマーとジェローム・チェンは、約2,000ショットに及ぶ効果を世界各地の会社へ振り分けた。CG宇宙人は全身CG、身体の拡張、頭部交換を合わせて36体に達し、一体を決めるまでに5案から多い場合は50案が検討された。監督、製作者、スタジオが造形確認に加わったため、奇抜さだけでなく、物語の役割と俳優の演技を両立させる合意形成も必要だった。DNEGだけでもバンクーバーを中心にモントリオール、ロンドン、ムンバイへ作業を分け、581ショットを完成させている。ロンドン本部の宇宙人、幼いモリーが出会うタランティアン、各都市のホログラムを見比べると、会社ごとの技術を一本の世界観へ統一した仕事が背景まで広がっている。
ナイトクラブで倒れるヴァンガスは完全なCG宇宙人だが、出発点はケイヴァン・ノヴァクの現場演技だった。当初は醜悪な巨体として考えられたものの、異形に寄せすぎると俳優の魅力が消えるため、二つの目、鼻、口、人間に近い体格を残した。撮影時には黒いボディースーツと顔を記録するカメラも使われたが、共演者へ接近する芝居では機材が扱いにくく、最終的には身体の軌跡を追うロトアニメーションと手付けの表情を組み合わせた。さらに表情筋を基にした顔の仕組み、皮膚の揺れ、唇の粘りまで加え、俳優の存在感をCGの皮膚へ移すことを優先したのである。ヴァンガスがHへ重要な言葉を残す場面では、巨大な顔の細かな表情が単なる怪物演出ではなく、ノヴァクの芝居を読み取るために設計されている。
ウェタ・デジタルが初期造形を作り、ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスが機械的な細部と、クメイル・ナンジアニの声に合う表情を加えた。ポーニィは完成画面ではCGだが、撮影現場が空っぽだったわけではない。現場には彩色済みの実寸フィギュアを置き、テッサ・トンプソンらの視線、カメラの焦点、撮影照明の基準として使った。小さなキャラクターは被写界深度が浅く、焦点が少しずれるだけでも同じ空間に立って見えなくなるため、画面に残らない模型が技術的な物差しになったのである。Mとポーニィが並ぶ会話では、目線の高さだけでなく、ポーニィへ落ちる光と背景のぼけ方を見ると、現場の模型がCG相棒の実在感を支えたことが分かる。
撮影では長身のスペンサー・ワイルディングを使い、当初は顔だけを宇宙人へ交換する予定だった。リザの用心棒ルカは、最初から現在の巨体で設計されていたわけではない。しかし試作映像では人間がマスクを着けたように見えたため、メソッド・スタジオは胸郭と肩を大きくし、上半身全体を再設計した。俳優が着ていたジャケットも新しい胸へ合うようデジタルで変形させ、シャツを消してタンクトップへ替えている。説得力を生んだのは顔の精密さだけではなく、服ごと変わる身体の輪郭だったのである。リザの島でHとMを追い詰める場面を見直すと、顔より先に肩幅と衣服の張りが人間離れした圧力を作っている。
DNEGは銀河や星雲の天体写真を調べ、粒子で細部を、流体計算で体積と動きを作る方法を選んだ。双子の敵の身体は、黒い人体へ星の模様を貼っただけではない。画面手前ほど粒子を小さく密に配置し、全身が画面を占めるショットでは1億を超える粒子を動かしている。銃撃で宇宙物質が飛び出した後に身体へ戻る場面では、傷口の内側を吸引点にした別の流体計算を走らせ、星雲が真空へ吸われるような逆流を作った。星一つずつを照明にすると処理できないため、明るさを粒子へあらかじめ焼き込む工夫も用いられた。双子が撃たれる場面では、傷から噴き出す流れと体内へ戻る流れが別に設計されている。停止画ではなく動きの方向を見ると、宇宙でできた身体という設定が効果の物理法則にまで及んでいる。
ソニーのデザイナーは、時計や車を古典的で洗練された外見に偽装し、その内部へ武器や未来技術を隠すことがシリーズの小道具原則だと考えた。MIB本部のペン型プロジェクターは、未来的な外観を誇示するための小道具ではない。そこで投影装置も、最初は何の変哲もない筆記具にしか見えない細い形へまとめた。平凡なペンが起動して複数の映像を空中へ広げる外見と機能の落差こそが、秘密組織の技術らしさなのである。ロンドン本部でエージェントがペンを起動する場面を見ると、装置の存在を隠す静かな形と、投影後の派手な情報量が対になっている。
ポール・スミスと衣装デザイナーのペニー・ローズは、移動とスタントでもしわが戻りやすい100%ウールの旅行用スーツを共通素材にした一方、役ごとに裁断を変えた。黒いスーツは制服だが、全員を同じ型へ押し込む衣装ではなかった。Mには六種類ほどのパンツスーツ候補を試し、最終的に女性役の中で彼女だけが着る型を選んだ。HとMには撮影用として各8着が用意され、作品全体では約250着の黒いスーツを使う見込みだったという。Mの二つボタンのダブル、Hの鮮やかな裏地など、統一感の内側へ人物差を隠している。本部でエージェントが並ぶ全身ショットでは、同じ黒でも襟、ボタン、肩、裾の動きが異なる。制服を見比べると、組織への入り方や性格が裁断に残されている。
エージェントHは、黒い制服の規則の隙間で自分らしさを残している。クリス・ヘムズワースは、Hの反組織的な性格を示すため、黒いズボンの下へポール・スミスの色鮮やかなストライプ靴下を合わせたと説明した。外から見えるのは歩く時や座る時の一瞬だけであり、正面からは模範的な黒服のままである。画面の端に現れる非規定の色が、Hの自信、ふざけた態度、命令へ完全には従わない性格を台詞より先に語っている。ヘムズワースはこのスーツを、長年着た装甲やマントより動きやすいとも振り返っている。足元の遊びと身体の軽さが、Hのアクションとコメディを同じ衣装で支えた。
旧3作の宇宙人造形を築いたリック・ベイカーは2015年に引退しており、本作ではジェレミー・ウッドヘッドが特殊メイク部門を率いた。新チームはベイカーの代表的な顔をそのまま複製するのではなく、日常の背景へ奇妙な生物を紛れ込ませる自由な発想を継ごうとした。そのために用意された宇宙人のスケッチは400〜500枚に及ぶ。完成画面へ出た一体だけを見ると見えないが、その背後には採用されなかった数百の輪郭があり、造形部門の世代交代を案数で支えている。ロンドン本部の群衆では、CGによる頭部交換だけでなく実物の特殊メイクも混在する。背景の宇宙人を追うと、旧作の模倣ではなく新しい顔ぶれでシリーズらしさを保とうとしたことが分かる。
主役と活動拠点が変わっても、音楽は旧シリーズとのつながりを切らなかった。ダニー・エルフマンは『007』や『スター・ウォーズ』を例に、観客が待っている主要テーマを再使用する価値を意識していた。そのうえで旧曲を流用するだけにせず、新主人公Mへ感情移入する入口となる固有の旋律を作り、クリス・ベーコンとロンドン、モロッコ、パリの場面を広げた。懐かしい主題を組織の音の身分証として残し、その上へMの物語を重ねたのである。冒頭、Mが組織へ入る場面、エンドクレジットを聴き比べると、旧テーマが世界観を保証し、Mの旋律が新しい視点を導く役割分担が見えてくる。
各場面でまず脚本どおりのテイクを確保し、物語に必要な情報と編集の基準を残した。F・ゲイリー・グレイは、俳優へ最初から自由演技だけを求めたわけではない。その後でクリス・ヘムズワースやテッサ・トンプソンに2〜3回の即興を許し、予想外の反応や言葉を別の選択肢として撮った。編集室には安定した芝居と遊びのある芝居が並び、場面の調子に合わせて選べる。軽快な掛け合いは放任ではなく、基準を先に作る管理された即興から生まれたのである。HとMの会話では、筋を運ぶ台詞と、二人の間に生まれる小さな反応を分けて見ると、脚本と即興を重ねた撮影方法が感じられる。
プロダクションデザイナーのチャールズ・ウッドは、古い街並みと対照になる未来的な輪郭を求め、約30案から形を絞った。マラケシュを走るホバーバイクは、最初から一台の完成車として存在したのではない。撮影では走行、搭乗、スタントなど用途の異なる四つの実物車体を使い分け、編集とVFXで一台の乗り物に見せている。クリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンは実際の路上で風を受け、ヘルメットなしで走る場面も撮影した。ヘムズワースは、狭い市場で後ろにトンプソンを乗せ、物が飛びクラッシュする撮影に責任と怖さを感じたと振り返っている。追跡場面を見直すと、俳優が乗る車体、速度を出す車体、危険動作を担う車体が切り替わっても、同じ乗り物として動きがつながるよう設計されている。
同じMIBでも、ニューヨーク支部とロンドン支部では未来の形が違う。旧作の本部は1960年代のニューヨーク万博を思わせる直線的なモダニズムを基調としていた。本作の制作美術は、ロンドン本部へアール・ヌーヴォーやアール・デコの曲線、金属、装飾を取り込み、古い都市の内部に秘密技術が積み重なったように見せた。組織の機能を変えず、建築様式だけを土地に合わせることで、題名の「インターナショナル」を美術で表現している。ニューヨークとロンドンの入口、吹き抜け、操作卓を比べると、支部の違いが看板ではなく空間全体の線と装飾へ刻まれている。
ソニーが開発したのは、『21ジャンプストリート』の警官コンビをMIBの世界へ送り込むクロスオーバーで、2016年には正式題まで発表された。本作より前に進んでいた『MIB 23』は、HとMの初期版ではない。製作者ウォルター・パークスによれば、構想はMIB側へ警官が加わる作品というより、警官コンビが秘密組織へ入り込む『ジャンプストリート』寄りの映画だった。しかし両シリーズの笑いと世界観の調子が大きく異なり、脚本を一本へまとめられずに頓挫した。その後にHとMを主役とする本作が、別の企画として作られたのである。したがって『MIB 23』が配役変更されて『インターナショナル』になった、という単純な開発史ではない。二つは同じシリーズから分岐した別の計画として区別する必要がある。
完成版のまとまりを論じる時、単に『現場が混乱したらしい』で済ませられない具体的な報道がある。業界取材の再報道によれば、F・ゲイリー・グレイ監督と製作者ウォルター・パークスは撮影中の改稿方針で衝突し、同じ素材から監督寄りと製作者寄りの二つの編集版が作られた。両方を試写した末、劇場公開にはパークス側の版が選ばれたという。これは未公開の別エンディングが一場面あるという話ではなく、場面の選択や調子を含む映画全体の編集方針が競合したことを意味する。完成版でコメディ、人物関係、陰謀劇の温度が場面ごとに揺れる時、その背景には複数の完成形を試した編集過程があった可能性を踏まえて見ることができる。
業界報道が伝える初期脚本は、完成版より題名の『国際』を社会問題へ直接結び付けていた。アート・マーカムとマット・ホロウェイの初期案では移民がより大きな主題となり、ビートルズを思わせる四人組の宇宙人が、最終的に一体へ融合する悪役構成も考えられていたという。その後の改稿で社会的な線は薄まり、敵はダンサーの双子を基にした形へ変わった。移民の物語と四人組の敵が同時に消えたと知ると、完成版の世界移動と双子が、開発途中で別々の方向へ整理されたことが分かる。完成版の双子とエッフェル塔の入国拠点を見直すと、初期稿でより直接的だった移民の発想が、悪役から美術や設定へ分散した可能性を考えられる。
プロダクションデザイナーのチャールズ・ウッドは、異世界から来る者を受け入れる宇宙版エリス島として塔を捉えた。終盤のエッフェル塔は、観光名所を秘密基地に変えただけではない。1889年の万国博覧会を象徴する建築を、地球外からの入国者が通過する玄関へ読み替えたのである。この発想は、旧シリーズがニューヨーク万博の建造物へ宇宙船を隠した美術とも響き合い、ニューヨークからパリへ舞台が移っても『万博と宇宙』の連想を受け継いでいる。塔内部のポータルを見ると、世界を救う装置であると同時に、誰を地球へ迎え入れるかという国境のイメージが終盤の美術へ組み込まれている。
2019年10月23日発売のソニー・ピクチャーズ公式4K UHD&Blu-rayセットには、劇場版だけでは追えない制作記録が約54分収録された。Blu-ray限定の9本の未公開シーンと2本のエイリアンCMに加え、アクションとスタント、秘密道具と乗り物、広がるMIB世界、レ・ツインズの動き、NG集などを部門別に確認できる。DVD側の特典は約38分で、9本の未公開シーンとCMはBlu-rayだけに収録されている。したがって削除場面を確認する場合は、単に『映像ソフトに特典がある』のではなく、2019年版Blu-rayを選ぶ必要がある。ホバーバイク、即興、双子の身体表現など、本文で扱った候補を公式映像へ戻って検討するための資料であり、劇場版と制作過程を切り分ける入口になる。
製作者ウォルター・パークスとローリー・マクドナルドによれば、第4作の脚本は一度全面的に書き直されたが、幼いモリーが宇宙人を目撃し、成長して自力でMIBを探し当てる女性主人公の軸は改稿前から残った。エージェントMは、制作途中の流行に合わせて後から置かれた主人公ではない。組織側に選ばれるJとは反対に、Mは秘密を消されなかった幼少期の記憶を手掛かりに組織へ到達する。脚本の細部が変わっても、この入り方を維持したことで、シリーズの入口そのものを新しくできたのである。冒頭の少女の視点と、成人したモリーがMIBへ侵入する場面を続けて見ると、全面改稿を越えて残った企画の中心がはっきり分かる。
テッサ・トンプソンは、女性主人公を女性観客だけの代理人にしたくないと考えていた。大規模作品でエージェントMを演じた理由として、少女だけでなく少年も女性ヒーローへ自然に感情移入できる機会を作ることを挙げている。女性が長く男性主人公へ自分を重ねてきたのと同じように、観客が性別の異なる人物の旅へ入れる状態を目指したのである。さらにクィアやノンバイナリーを含む多様な観客にもMを自分に近い存在として見てほしいと語った。Mの他者へ開かれた主人公像は、俳優がこの規模の作品へ参加した目的と結び付いている。モリーが組織へ入る導入からHと対等な相棒になる過程を見ると、Mは『女性版J』ではなく、観客の範囲そのものを広げる主人公として設計されている。
ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズの本人カメオは、本格的な出演案として進められていなかった。製作者はJとKの物語を旧3作で十分に描いたと考え、その代わりロンドン支部のハイTのオフィスへ、過去のMIBの戦いを記念する依頼制作の絵画を置いた。背景美術の中には旧主演二人を思わせる姿が仕込まれ、数ショットだけ画面に映る。旧作との接続を有名俳優の再登場へ頼らず、組織内に保存された歴史として扱ったのである。ハイTのオフィスでは人物の会話だけでなく壁面を見ると、新旧チームが同じ組織の時間に属していることを、美術が静かに説明している。
「2014年に引退したリック・ベイカー本人が本作への復帰を望んでいたという説。」という話がある。本人の発言と制作記録が結び付くまで、復帰をめぐる逸話として保留にする。ベイカー復帰説は未確認だ。
「全編をARRI Alexa 65だけで撮影したシリーズ初の完全デジタル作品である。」という話がある。撮影機材の記録が十分にそろわず、シリーズ初という断定まではできない。完全デジタル説は資料待ちである。
「Hがハンマーへ手を伸ばす場面で『アベンジャーズ』のテーマ曲が短く流れる。」という話がある。聞き取りだけでは曲名を確定できず、音源資料が見つかるまで保留にしたい。テーマ曲の引用説は未確認だ。ソフトを持っている捜査員は、該当場面を聞き直し、音や台詞がこの指摘と一致するか確かめてほしい。
「本作は『21ジャンプストリート』とのクロスオーバー企画を、そのままHとMへ配役変更して完成させた作品である。」という説明が広まっている。だが、関連する証言や資料と食い違いがあり、そのまま信じにくい話だ。