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1997年公開。ローウェル・カニンガムの陰鬱なコミックを、製作者ウォルター・F・パークスとローリー・マクドナルドが、バリー・ソネンフェルドの乾いた喜劇として再設計した。リック・ベイカーは過去の仕事を合計した以上とも振り返る量の宇宙人デザインを描き、特殊メイクとアニマトロニクスを担当し、ILMはCGの怪物だけでなく、4分の1サイズのミッドタウン・トンネル模型や合成を併用した。ソネンフェルドはトミー・リー・ジョーンズを徹底して無表情に置き、ウィル・スミスの速度と衝突させることで、視覚効果の見本市を相棒喜劇へまとめた。約9,000万ドルの製作費に対して世界興収は約5億9,000万ドルに達し、メイク部門のアカデミー賞も獲得した。宇宙人の存在を隠す組織の映画が、舞台裏では考えられる限りの宇宙人を大勢雇っていたのである。
ウィル・スミスは『インデペンデンス・デイ』の直後、また宇宙人映画に出ることをためらっていたらしい。背中を押したのはスティーヴン・スピルバーグ本人の電話だったという。一通の電話で決まったエージェントJだ。
MIB本部の白く広い空間は、未来のビルをゼロから考えたものではない。美術チームは1960年代の空港ターミナルを手掛かりに、少し古い未来を組み立てた。空港から生まれた秘密基地だったらしい。
『メン・イン・ブラック』の宇宙人は、CGだけの映画ではない。リック・ベイカーの特殊メイクや人形を先に立たせ、ILMのCGが動きや変形を引き受けた。手触りとCGの共同捜査である。
エドガーの歩き方が気味悪いのは、特殊メイクだけのせいではない。ヴィンセント・ドノフリオが、人間の体に虫が入ったような動きを自分の関節へ押し込んだ。中身が人間ではない歩き方が、ずっと不穏だ。
黒いスーツとサングラスなら、すぐブルース・ブラザーズ寄りにもできる。だが衣装はもっと古風で端正な方向を選び、ケーリー・グラントのような気配を目指したという。笑わせないための黒いスーツだった。
小さなワームたちは、最初から大役を任されていたわけではない。特殊効果チームがコーヒー休憩のような場面を試し撮りしたところ、それが気に入られて出番が育ったという。休憩時間から昇格した宇宙人だ。
小さな宇宙人マイキーは、近づくと妙に本当にそこにいるように見える。実物のスーツや人形で足場を作り、必要な動きだけをCGにつないだ。実物からCGへ消える継ぎ目が手品のようだ。
終盤のためには、巨大な虫の実物モデルまで用意されていた。ところが演出が変わり、最終的にはアクションとCGを中心にした形へ組み替えられたという。完成前に出番を失った巨大モデルがある。
なぜMIBの舞台はニューヨークなのか。人が多く、どんな格好の人がいても妙に見えない街なら、宇宙人も群衆に紛れられるからだという。変な人が多いから隠れやすい街、発想が少し乱暴で楽しい。
あの宇宙人たちは、ただのにぎやかな脇役ではなかった。特殊メイクの仕事はアカデミー賞でも認められ、『メン・イン・ブラック』はメイクアップ賞を手にしている。オスカーが認めた異星人たちだ。
リンダ・フィオレンティーノがポーカーで勝ち、役を手にしたという逸話がある。だが出典をたどると一次資料が見つからず、もっともらしい業界伝説の域を出ない。話は強いが、札はまだ揃っていない。