主な参考資料
- ComingSoon.net
- Den of Geek
- TheWrap
- Motion Picture Association
- fxguide
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2014年公開。ウェス・ボールの短編『Ruin』(2012)が20世紀フォックスの目に留まり、ジェームズ・ダシュナーの2009年小説を映画化する本作が、ボールの長編監督デビュー作になった。 ダシュナーによれば映画化企画は別の監督を経るなど紆余曲折があり、ボールは原作と当時の脚本を読んで自らの案を提示し、監督決定から三、四か月後には撮影へ入り、脚本も大きく書き直したという。 ルイジアナ州セント・フランシスヴィルの農場でのロケは三週間に及び、熱、湿気、泥、雨に加え、現場は毒蛇対策の担当者を雇い、25匹の毒蛇を捕獲した。 迷路は旧Sam’s Club内に160フィート×80フィートのモジュール式セットを組み、16フィートの実物の壁をポストプロダクションで100フィートへ延長したため、俳優が実際に走れる空間と、迷路の巨大さを両立できた。 プリビズでは実物の壁パーツを仮想空間で組み替え、どこまでを実写で撮り、どこからをデジタル拡張するかを撮影前に決め、動く迷路と機械的なクリーチャーのVFXへつないだ。 製作費3,400万ドルに対し、北米興収は約1億240万ドル、世界興収は約3億4,830万ドル、北米公開初週末は3,604館で約3,251万ドルとなり、迷路を組み替えたのは美術だけではなく、若者向け小説を大作として成立させるスタジオの計算でもあったのである。
初期開発から監督と脚本が入れ替わった。初期段階ではキャサリン・ハードウィックが企画開発に参加していたが、完成版ではボールが監督を務め、既存の脚本を最初から書き直した。監督が交代した理由は公表資料から確定できないため、企画の引き継ぎと改稿の事実だけを区別しておきたい。
ウェス・ボールが20世紀フォックスと話していたのは、当初、自作の短編『Ruin』(2011)を長編映画にする企画だった。スタジオから本作の原作と当時の脚本を渡されたボールは、読了から約2日で、巨大な壁の前に小さな人物が立つコンセプト画を作った。その構図を使って企画を売り込み、監督決定から3~4か月後には、自身初の長編映画として撮影へ入っている。
Twitterからオーディションへ進んだ。原作を読んでチャックを演じたいと考え、Twitterでウェス・ボールを探し出して、オーディションの機会がほしいと直接伝えた。投稿に気づいたボールが応募先を教え、クーパーが映像審査を通過したことで正式な配役につながった。
ディラン・オブライエンは、テレビシリーズ『ティーン・ウルフ』(2011~2017)の撮影現場から、そのまま本作のオーディションへ向かった。髪を整えた姿を見たウェス・ボールは、トーマス役には派手すぎると判断し、約2か月にわたって再審査へ呼ばなかった。その後、髪を短くした写真を見て印象を改め、オブライエンをもう一度審査したことが主演決定につながった。
出演者たちは撮影前の一週間を、少年たちが暮らす広場「グレード」のセットで過ごし、自然の材料から道具や避難場所を作る訓練と、場面のリハーサルを行った。最後の夜には設備のないセットで一緒に泊まったが、その夜は現地でも特に激しい雷雨になった。画面に出る集団生活は、撮影が始まってから初めて顔を合わせた俳優たちが演じたものではない。
少年たちが暮らすグレードは、ルイジアナ州セント・フランシスビルの農場に作られた。3週間の農場ロケでは、蛇を安全な場所へ移す専門員が毒蛇25匹と無毒の蛇35匹を捕獲し、その中には全長約1.5メートルのガラガラヘビもいた。ディラン・オブライエンは、複数の専門員が蛇を入れた容器を持って現場を歩く光景を見て、最初の撮影前夜には咬まれるのではないかと不安になったと振り返っている。
原作ではトーマスとテレサが離れた場所から心の中で会話し、テレサは物語の長い部分を昏睡したまま過ごす。ウェス・ボールは、テレパシーをそのまま台詞にするより、二人の過去を断片的な映像で見せる方が映画に合うと考え、昏睡の時間も短くした。製作側は撮影前にこの二つの変更を原作者ジェームズ・ダシュナーへ説明し、了承を得ている。
同じ壁を組み替えて迷路全体を作った。製作美術班はルイジアナ州バトンルージュにあった旧サムズクラブの建物へ、約49メートル×24メートルのステージを設け、高さ約4.9メートルの壁を組み立てた。同じ壁を配置し直し、蔦や植物の量を変えることで、別々の通路や交差点として繰り返し撮影している。
7,000ポンドの扉を実際に動かした。美術班は高さと奥行きがともに約6.1メートル、重さが1枚約3.2トンある機械式ゲートを現地に設置し、合図に合わせて実際に動かした。俳優が閉じていく扉の前を走れるため、青い背景の前だけで演じるより、扉の大きさと時間制限を身体で感じられる撮影になった。
撮影前には、プリビズ(撮影前に作る簡易CG映像)を使って、実物の壁をどこまで画面に入れ、どこからCGで延長するかを決めた。担当班は農場をレーザーで測った地形データから仮想のグレードを作り、撮影日に壁が落とす影まで試算した。限られた壁パーツを仮想空間でも組み替えたため、実際のカメラで撮れる動きと、後から補う映像を撮影前に分けられた。
機械と生物を混ぜてグリーバーを作った。VFX班はクレーンや空気圧ドリルなどの重機と、アリ、ムカデ、ナメクジ、カエルなどの生物を参考にし、機械部品と柔らかい肉体が同居する六本脚の生物として設計した。脚は伸縮式にして、広いグレードでは大きく踏み出し、幅約2.4~3.7メートルの迷路では縮めて走れるようにしている。
本作は当初、2014年2月中旬に全米公開する予定で、約45日間の撮影後も編集とVFXを急ぐ日程だった。2013年9~10月に途中版を見たスタジオは、予想以上に規模の大きな映画になっていると判断し、公開を2014年9月へ変更した。延期で得た時間は、迷路の壁やグリーバーを仕上げるVFXと編集に使われ、創作上の編集は2013年11~12月ごろ、完成版は2014年2月末から3月初めにまとまった。
英国12A版では暴力表現を削った。配給会社は、12歳未満でも保護者同伴なら鑑賞できる12A指定を得るため、脅威、暴力、負傷の細部を削るか短くした。英国映像等級審査機構は、無編集のままなら15歳未満は鑑賞できない15指定になると示しており、英国の劇場版と家庭用版には編集済みの記録が残っている。
ウェス・ボールは編集作業を終えた後、作曲家ジョン・パエザーノのスタジオへ通い、午前2~3時までピアノを聴きながら本作の主題を探した。撮影終了後、パエザーノから届いた音源の一曲を、ボールは車で一人移動している間に何度も再生した。その曲は、監督が作品から離れて初めて聴いた時間の印象を残したまま、完成版のエンドクレジットへ使われている。
ウェス・ボールが本作で目指したのは、少年向けだから危険や言葉を薄める映画ではなく、『グーニーズ』(1985)や『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981)のように、若い観客を子ども扱いしない冒険だった。少年同士が最後の一人になるまで戦う構図ではなく、閉じ込められた集団が社会を作り、意見を衝突させながら一緒に脱出する物語として組み立てた。グレードの小屋を少年たち自身が作れそうな構造にしたのも、大人のいない場所で共同生活を続けてきたことを画面から伝えるためである。
本作の最初の予告編が公開されると、2009年刊行の原作小説はニューヨーク・タイムズのベストセラー一覧へ戻った。原作者ジェームズ・ダシュナーによれば、その後の4週間は、クリスマスや新刊発売時を含めても過去最高の売上を記録したという。映画の公開を待たず、予告編だけで既刊小説の販売が再び動き始めていた。
本作の製作費は、興行データベースで3,400万ドルとされている。北米では3,604館の公開初週末に3,251万2,804ドル、累計で1億242万7,862ドルを記録し、世界興収は3億4,831万9,861ドルへ達した。若手中心の出演者と長編初監督の組み合わせながら、世界興収は掲載製作費の約10倍になった。
ディラン・オブライエンが、本作で最初のグリーバーから逃げる場面を撮影中に転倒し、頬骨を折ったという話がある。ただし、本作についてはオブライエン本人の証言、当時の事故報道、制作記録を確認できない。2016年に『メイズ・ランナー:最期の迷宮』(2018)の撮影中に重傷を負った事故とは、時期も作品も異なる主張である。別の事故が混ざった可能性もあるため、本作での負傷とはみなさない方がよさそうだ。