主な参考資料
- Turner Classic Movies
- AFI
- Los Angeles Times
- The Academy
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1994年公開。本作は、ロイ・ハギンズが生み出し、ジェームズ・ガーナー主演で1957年から1962年まで放送されたテレビ西部劇を、メル・ギブソンの製作会社Iconが劇場映画として再始動させた作品である。ギブソンは『ハムレット』(1990)の撮影中に映画化を思いつき、共同経営者ブルース・デイヴィーと権利を取得すると、『リーサル・ウェポン』シリーズで関係を築いていたワーナー・ブラザースから企画の承認を取り付け、リチャード・ドナーを監督に招いた。脚本家ウィリアム・ゴールドマンは、旧テレビ版の一話を膨らませれば容易に書けると考えて引き受けたが、何時間も見直しても映画一本に使える回を見つけられず、結局ほぼ新しい物語を一から書くことになった。旧シリーズの主人公だったガーナーは別の役で参加し、ガーナー自身はギブソンの演技を自分より大ぶりだと評しながらも、1990年代向けの更新には必要だと認め、ドナーも旧作の主人公一人の機知を、ギブソン、ガーナー、ジョディ・フォスターの三人による掛け合いへ組み替えたと説明している。撮影はカリフォルニア州エル・ミラージュとローン・パイン、アリゾナ州レイク・パウエル、オレゴン州で行われ、ギブソンは銃器専門家からガンプレイを学ぶ一方、カードさばきにはそれ以上の練習を要したという。世界興収は1億8,301万5,237ドルに達しており、古いテレビ企画を掘り起こせば脚本まで出来上がっている、というスタジオに都合のよい夢だけが、ポーカーより先に負けたのである。
メル・ギブソンが『マーヴェリック』の映画化を考えたのは、『ハムレット』(1990)の撮影中だった。子供の頃に見たテレビ版を思い出し、自身のIcon Productionsが権利を取得してワーナーへ企画を持ち込んだ。脚本にウィリアム・ゴールドマン、監督に長年の盟友リチャード・ドナーが加わった。
ゴールドマンは当初、テレビ版の優れた一話を長編へ広げればよいと考えた。しかし旧作を何時間も見続けても、映画の筋へそのまま使える回が見つからなかった。そこで勝負師ブレットの気質だけを残し、賞金50万ドルのポーカー大会を目指す物語を新たに組み立てた。
ギブソンとドナーは、テレビ版を作ったロイ・ハギンズにも映画への参加を求めた。ハギンズは別の仕事で手が離せず断ったが、映画は画面上に「シリーズ原案 ロイ・ハギンズ」と明記した。テレビ契約では創作者として十分に扱われなかったハギンズにとって、これは異例のクレジットだった。
アナベル役はメグ・ライアンの離脱後も決まらず、ジョディ・フォスターが参加したのは撮影開始の約2週間前だった。フォスターの回想では、金曜にドナーと会い、翌土曜には衣装合わせをしている。大作の主演級としては異例に短い準備期間で現場へ入った。
フォスターは『羊たちの沈黙』(1991)など重い作品が続き、次は楽しめるコメディを求めていた。準備期間は短かったが、脚本の軽さとギブソン、ガーナーとの掛け合いを優先して参加した。完成作のアナベルの快活さは、偶然ではなく本人が選んだ方向転換だった。
ギブソンは西部劇用の抜き撃ちを銃器専門家フィル・スパンゲンバーガーから習い、カードの扱いにも何時間も費やした。本人によれば、苦労したのは銃よりカードだった。手品に見えず、長年賭場で生きた人物の手つきに見せる必要があったからである。
船着場と蒸気船の場面はレイク・パウエルで撮られた。当時の制作発表はアリゾナ州撮影として広まったが、地元紙とユタ州側のロケ記録は、主要地点をユタ州のLone Rock周辺と特定している。州境をまたぐ湖だったために生まれた、撮影地表記のずれである。
レイク・パウエルの現場では、車ではなく船が通勤手段になった。スタッフはスピードボートでセットへ運ばれ、ドナーの回想では水上スキーで現場へ向かう者までいた。西部劇の大規模ロケでありながら、撮影隊の日常は湖上スポーツのようだった。
Lauren Belle号は、現存する蒸気船Portlandを数週間で変身させた。保存されていた蒸気船Portlandを数週間で改装し、豪華な装飾と、煙を出す2本のダミー煙突を付けた。レイク・パウエルでの撮影後には装飾を外し、船は元の姿へ戻された。
Crystal Riverの町は、レイク・パウエルの高水位線より下に建てられた。撮影が終わって水位が上がると、セットは湖の下へ消えた。撤去を省いたというだけでなく、増減水する貯水池そのものを撮影後処理へ利用した美術計画だった。
冒頭の馬車アクションは、『駅馬車』(1939)でYakima Canuttが確立した古典的スタントを出発点にしている。コーディネーターのミック・ロジャーズは、走る馬車から別の馬車へ移り、車輪の下へ落ち、再びよじ登る動きを一続きに再構成した。単なる引用ではなく、複数の古典技を一つの長い見せ場へ組み直したのである。
衣装デザイナーのエイプリル・フェリーは、テレビ版でジェームズ・ガーナーが着た銀色のブロケード・ベストを、ギブソン版ブレットの出発点にした。ゼイン・クーパーにはバット・マスターソン、アナベルにはアニー・オークリーの要素を採り入れている。この仕事でフェリーは第67回アカデミー衣装デザイン賞にノミネートされた。
ポーカー大会の顔ぶれには、テレビ西部劇を支えた俳優が意図的に集められた。レオ・ゴードン、デンヴァー・パイル、ダグ・マクルーア、ポール・ブラインガー、ダブ・テイラーらである。ガーナーだけでなく、背景の端々まで1950~60年代の西部劇を知る観客への再会の場になっている。
もう一つの隠れた出演者群が、当時のカントリー音楽界である。クリント・ブラック、ウェイロン・ジェニングス、キャシー・マティア、ヴィンス・ギル、リーバ・マッキンタイアらが短い役で現れる。ブラックは銀行強盗を演じるだけでなく、エンド曲「A Good Run of Bad Luck」も担当した。
コリー・フェルドマンの回想では、ドナーは当初、若いガンマンJohnny Hardin役に彼を考えていた。オーディション後、ギブソンの判断でその配役は実現しなかったが、フェルドマンは冒頭の銀行強盗の一人として短く出演した。採用経緯は本人側の後年証言なので、ギブソン側の確認までは取れていない。
Danny Gloverの銀行強盗は、『リーサル・ウェポン』を音と台詞で再会させた。ギブソンと目が合うと二人が「どこかで会ったか」と戸惑い、『リーサル・ウェポン』の音楽が流れる。最後はグローヴァーが同シリーズの決め台詞を口にして去り、ドナー作品同士を意図的につないでいる。
完成版には出ないが、リンダ・ハントが「The Magician」と呼ばれる人物を演じた場面まで撮影されていた。ゴールドマンの脚本にあった一連の場面は、編集段階で丸ごと削除された。IMDbなどで名だけが残るのは、出演契約だけでなく撮影済みの素材が実在したためである。
北米興行収入は1億163万1,272ドルで、主要データベースが一致している。世界興収はBox Office Mojoが1億8,303万1,272ドル、The Numbersが1億8,301万5,237ドルで、約1万6,000ドルの差がある。したがって公開文では単一の会計確定値とせず、「約1億8,300万ドル」と扱うのが安全である。
【ネタバレあり】テレビ版でブレット・マーヴェリックを演じたジェームズ・ガーナーは、映画では保安官ゼイン・クーパーとして登場する。終盤にクーパーがブレットの父Pappyだと明かされ、初代主人公が新しい主人公の父へ置き換わる。単なるカメオではなく、テレビ版から映画版への継承そのものを配役で表した仕掛けである。
「ジェームズ・ガーナーが小道具の銃を落としたのは事故で、面白かったため完成版へ残した」という説がある。画面に銃を取り落とす動作はあるが、それが偶発事故だったというドナー、ガーナー、撮影班の証言は確認できない。演技として計画された可能性も残るため、現時点では、この制作秘話を支える当事者証言が見つかっていない。
「馬車から降りるジョディ・フォスターの転倒は偶然で、ドナーがそれを見て役全体を不器用に変えた」という説が流通している。しかしフォスターの当時の取材は短い準備期間やコメディ選択を語る一方、この事故と演出変更には触れていない。監督側の証言も確認できず、現状では裏付けのない制作説である。
ポール・ニューマンがゼイン・クーパー役の候補だったことを示す回想はある。しかし「脚本を気に入っていたのに、製作側が安い出演料しか提示せず断った」という具体的な契約説は、ニューマン、ドナー、製作側の資料へ照合できない。候補だったという核心と、金額が原因だったという説明は分けて扱う必要がある。
「アリス・クーパーの町の酔客役は、完成版から完全に削除された」という説がある。ところが1994年の取材転載では、本人の出演は約6秒だけ完成版に残ったと説明されている。現在流通版をカット単位で照合する余地はあるが、少なくとも「すべて削除」と断定する説は同時期資料と食い違う。