『ルーパー』はなぜパリを上海に変えた? 中国公開版が長い理由
『LOOPER/ルーパー』(2012)で、ジョーが年を重ねて暮らす上海は、もともとパリの予定でした。 変更のきっかけは撮影予算です。ライアン・ジョンソン監督によると、パリで撮る費用を用意できなかったところへ、中国の配給会社が上海での撮影費を出すと提案しました。[1]
そこで生まれた上海の場面は、中国公開版では少し長くなっています。ただし監督は、長い方が自分の好みだとは語っていません。ロケ地を決める話と、物語の中で何分見せるかという話には、それぞれ別の判断がありました。[2]
・ニューオーリンズをパリに見立てる案もあった
製作ノートでジョンソンは、最初の脚本ではこの場面をパリに設定しており、実際には主な撮影地のニューオーリンズで代わりに撮るつもりだったと説明しています。パリへ行かず、別の街をパリらしく見せる計画だったのです。[3]
そこへ中国側から上海ロケの提案が届きました。製作に加わったのは、配給会社でもあるDMGエンターテインメント。撮影隊は中国でも2週間撮影しました。[3]
ジョンソンは、若いジョーがパリを夢見る一方、未来に若者が向かう場所として中国を描くことには納得できた、と説明しています。パリの代わりを別の街で撮るより、本物の上海で撮る。 費用の問題を解く提案が、映画の未来像にも合ったわけです。[3]
もっとも、パリは監督のお気に入りの街でもありました。後の読者向けQ&Aでは、変更を残念に思った気持ちと、上海が近未来らしく見えるという評価を、どちらも語っています。[1]
・中国公開版には、ジョーの年月がもう少し残っている
上海では、若いジョーが年を重ね、ブルース・ウィリス演じるジョーになっていく年月が描かれます。ジョンソンがJoBloの取材で説明したところでは、この一連の場面は、最初の編集では通常版の約2倍の長さがありました。[2]
ここでいう「約2倍」は、映画全体ではなく、ジョーの年月をまとめた場面の長さです。監督は、映画のどの部分よりもここに編集の手間をかけ、完成間近まで難所だったと振り返っています。中国公開版では、上海を長く見せる別の編集が使われました。[2]
音楽を担当したネイサン・ジョンソンも、この場面には最後まで取り組んだと話しています。最初に書いた曲は控えめすぎ、次の案は大きく劇的になりすぎた。映像の長さ自体も変わり続け、余分な部分を削るのに合わせて、音楽も引き締めていきました。[4]
・監督が好んだのは、短い方だった
長い版なら、通常版で省かれた上海の時間をもう少し見られます。一方でジョンソンは、自分が好むのは短いアメリカ公開版の方だと明言しています。追加映像があることと、監督がその編集を最良と考えていることは、同じではありません。[2]
パリから上海への変更で、撮影できる風景が変わる。その上海をどれだけ見せるかは、編集と音楽を行き来しながら詰めていく。数分の場面の裏には、撮影を実現するための判断と、映画の流れを整えるための判断が重なっていました。[2][3][4]
・脚注
- abAlloCiné「“Looper” : Rian Johnson vous a répondu !」(2013年3月6日)、監督の読者向けQ&A「Pourquoi Shanghai au lieu de Paris ?」。(リンク)
- abcdeJoBlo、Chris Bumbrayによるライアン・ジョンソン取材「We sit down for an exclusive 1:1 interview with Looper director Rian Johnson」(2012年公開時取材)。(リンク)
- abcdScifiSlacker掲載の製作ノート「Looper Production Notes & Cast Info」、「ABOUT THE PRODUCTION」。(リンク)
- abchorus.fm、Jonathan Bautts「Interview: Nathan Johnson」(2012年10月1日)、上海のモンタージュと編集に関する作曲家本人の説明。(リンク)