キングダムを配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
2019年公開。中国春秋戦国時代の大軍勢を日本映画で再現するには費用がかかりすぎるとして長く「実写化不可能」と見られていた原作へ、佐藤信介監督とプロデューサー松橋真三らが大規模投資を前提に挑んだシリーズ第1作である。原作者の原泰久も脚本へ参加し、原作の場面を映画用に組み替えるだけでなく、新しい台詞や場面まで共同で作った。撮影は2018年、中国・象山影視城で20日間行われ、咸陽宮の既存セットを秦の色へ改装したクライマックスにはスタッフ約700人、兵士役だけで延べ1万人が参加した。さらに日本各地のロケと王宮内部の巨大セットを組み合わせ、完成作は興行収入57億3,000万円で同年の実写邦画首位となり、続編を夢物語から事業計画へ変えた。中華統一より先に必要だったのは、製作委員会に「妥協しない予算」を認めさせることであり、最初の決戦は会議室ですでに始まっていたのである。
中国ロケの初日は、浙江省の象山影視城周辺で約100頭の馬が大平原を駆ける場面から始まったとされる。日本では集めにくい規模の騎馬隊を実写で撮るため、物量そのものがロケ地選びの大きな理由になった。
クライマックスの咸陽宮は、中国のオープンセットを黒一色の秦仕様に塗り替えて撮影されたとされる。スタッフ約700人、兵士役エキストラ延べ1万人規模の現場で、4日間かけて王宮の戦いが作られた。
信の戦いは朱凶、ムタ、ランカイ、左慈との4戦に整理され、それぞれ別ロケ地・別タイプのアクションとして設計されたとされる。泥臭い山中戦、竹林の俊敏な戦い、極寒の地下採掘場、王宮セットでの覚醒戦と、見返すと戦闘ごとに色が違う。
山﨑賢人は信の野生児らしい体を作るため、撮影前に約10kgの減量を行ったとされる。食事制限とアクション稽古で筋張った肉体を目指し、原作者の求める「高く翔ぶ信」に近づけていった。
王騎役の大沢たかおは、規格外の大将軍に見える体を作るため15〜17kg規模の増量を行ったとされる。主人公側が絞り込み、王騎側が巨大化するという真逆の役作りが、画面上の迫力にもつながっている。
王騎の腕は、当初筋肉スーツで作る案も検討されたとされる。しかし大沢たかおがトレーニングで腕を仕上げてきたため、役者本人の体を生かす方向になったという。
王騎の巨大な矛は、見え方やアクションの負荷に合わせて重さの違う複数バージョンが用意されたとされる。稽古や撮影で壊れることも多く、現場には予備の矛が何本も置かれていたという。
山の民の仮面は、コンセプトアーティスト田島光二の設計をもとに、特殊造形チームが約90種類を監修・制作したとされる。木、骨、石、革のように見える質感まで作り分け、異様な部族感を支えている。
河了貂の蓑型戦闘服はフクロウやミミズクを思わせるデザインで、橋本環奈は撮影のたびに羽の見え方を整えていたとされる。ユーモラスな衣装に見えて、画面上の形を保つための細かな手入れが必要だった。
河了貂の衣装調整に苦労していた橋本環奈のため、長澤まさみが中国ロケの現場で肩パッドを手作りしたとされる。壮大な戦国映画の裏に、かなり手作業な助け合いがあった。
吉沢亮は王宮に攻め入るアクションで酸欠寸前になるほどテイクを重ねたが、本編に使われたのはかなり早いテイクだったとされる。限界までやり切った努力と、編集で最良の瞬間を選ぶ映画作りの冷静さが同時に見える話だ。
VFXは派手なフルCGを前面に出すより、実写素材を積み重ねるインビジブルVFXを重視したとされる。ランカイのような巨体表現も、特殊メイクやワイヤー撮影に細かな合成を重ねる方針で作られた。
タイトル前のオープニングには、ミニチュア撮影とCGを組み合わせた砂鉄のような世界が使われたとされる。さらに八万の兵を見下ろす群衆カットでは、3D化した兵士モデルを大量配置するVFXが活用された。
秦の王宮セットでは、発掘物を参考にした龍の装飾や青銅器文様に加え、床の敷き瓦として800枚以上のタイルが中国で焼かれたとされる。足元の模様まで、歴史物としての説得力を作る材料になっている。
歴史監修の「当時の秦は緑豊かな土地だった」という指摘を受け、信たちの旅路には九州や富士山周辺の森や洞窟ロケが使われたとされる。中国だけでなく、日本国内の自然も秦の風景として組み込まれている。
金曜ロードショーでは、劇場版に未公開シーンや後続作の映像を加えたスペシャルエディションが放送されたとされる。円盤や配信と同じ内容ではない、テレビ放送ならではの再編集版として扱われている。
映画『キングダム』では、佐藤信介監督と河津太郎撮影監督の関係を信と漂の関係に重ねる読み方がある。批評としては面白いが、制作陣が公式に意図した対応関係として語るには根拠が薄い。
原作者の原泰久は、映画化で脚本にも参加している。原作5巻分を2時間に収めるため、ただ守るだけでなく何を削るかにも向き合ったという。実写化って、保存ではなく再構成なのだ。
信と左慈の戦いは物語の終盤に見える大一番だが、アクション場面としては最初に撮られたという。山﨑賢人は、まだ撮影現場で信の戦いを積み上げる前に最強の敵へ斬りかかることになった。これはかなり厳しい初陣だ。
吉沢亮は漂と嬴政を1人2役で演じ、剣の動きも変えている。漂は自己流の野性的な剣、嬴政は王族らしい癖のない剣という違いがあり、同じ顔の2人が剣筋でも分かれる。見返すと、一人二役の細工がかなり細かい。
ランカイは、ただ大きく見せたキャラクターではない。特殊メイクと造形スーツが組み合わされ、公式資料では邦画初とされる機構にも触れられている。信がぶつかる壁としての迫力は、CGだけでなく動く造形物が支えていた。
信と漂の別れは、序盤の泣かせ場だけではない。原泰久は、この場面が決まれば信が何度倒れても原点へ戻れる構造になると考えていたという。あの別れは、物語を動かし続ける再起動ボタンなのだ。