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映画はなかっぱ 花さけ!パッカ~ん♪ 蝶の国の大冒険を配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
2013年公開。2010年にNHK Eテレで放送が始まったテレビアニメ『はなかっぱ』にとって初の劇場版であり、XEBECとOLMがアニメーション制作を担った。本編約50分に加え、短編ミュージカルを同時上映する構成が採られ、テレビの短尺作品をそのまま長く引き伸ばすのではなく、劇場向けに二本立てへ組み替えている。ゲスト声優の松嶋尚美は妊娠中にアフレコへ参加し、母親を扱う作品内容へ自身の経験を重ねたと語っている。子ども向け映画は気軽に作られているように見えるが、テレビの人気を劇場の尺と料金へ変換する作業は、案外きっちり設計されている。
2010年にテレビ放送が始まった「はなかっぱ」は、約3年後の2013年に初の劇場版へ進んだ。監督を任されたのは、「おでんくん」でキャラクターデザインと総作画監督、「ぜんまいざむらい」で副監督を務めたのなかかずみである。日常の短い騒動を描いてきたシリーズが、母親たちを救うため村の外へ出る長い冒険へ移る際に、子ども向け短編アニメの演出経験を持つ作り手が中心に置かれた。
国内の公開資料と日本動画協会の記録では、「蝶の国の大冒険」は50分、同時上映の「パンとごはん、どっちなの!?」は10分の別作品として扱われている。前者は母親たちを救いに行く冒険物語、後者は歌と踊りを連ねたミュージカルである。一本のテレビエピソードをそのまま長くするのではなく、物語を追う時間と、幼い観客が音楽を楽しむ時間を分けた二本立てだった。
母親たちを取り戻す旅では、はなかっぱたちは慣れ親しんだやまびこ村を離れ、凍える冬山と灼熱の砂漠を越えて蝶の国を目指す。公式の海外向け紹介でも、この二つの対照的な土地が冒険の難所として明記されている。身近な村で起きる短い騒動から、季節も気候も異なる場所を進む旅へ変えたことが、劇場版の規模を最も分かりやすく示している。
アニメーション制作にはジーベック(XEBEC)とオー・エル・エムの二社がクレジットされている。キャラクターデザインは林一哉、コンセプトデザインは竹村菜月、総作画監督は遠藤栄一、美術監督は松宮由美が担当し、色彩、撮影、音響、編集にもそれぞれ専門スタッフが置かれた。劇場版の新しい土地や長い冒険が、どの部門の仕事で組み立てられたのかを確認できるスタッフ構成である。
のなかかずみ監督が江角マキコに求めたのは、蝶の国の女王ヘレナにふさわしい威厳だった。一方で、ヘレナは子どもを持つ母親でもあるため、別作品で求められたような高い声を作る必要はなく、江角は自分の声色のまま演じられたという。女王の強さを声の高さで誇張せず、本人の低く落ち着いた声と話し方で成立させた役づくりである。
江角マキコが収録で苦戦したのは、女王の大仰な宣言そのものより、「やまびこ村」という固有名詞と続く言葉の並びだった。本人によれば、問題の一文を自宅で自主練習し、本番前にも何度も繰り返してからマイクへ向かったという。画面では自然に聞こえる短い台詞の裏で、子どもが覚えやすい村名が、演じ手にとっては発音の難所になっていた。
コノハ役を収録した時、松嶋尚美は第二子を妊娠しており、完成披露の時点では妊娠7か月を迎える直前だった。依頼を受けた当初は「はなかっぱ」を詳しく知らなかったが、周囲の母親たちが驚いて喜んだことで作品の人気を実感し、成長した自分の子どもがいつか見て喜んでくれるならと出演を決めたという。母子の関係を扱う物語に、実生活でも母親になったばかりの出演者が参加した。
主題歌を担当したエヴリ・リトル・シング(Every Little Thing)の持田香織と伊藤一朗は、蝶の国の門番「もっちー」と「いっくん」として本編にも登場する。名前だけでなく顔つきも二人に寄せた映画オリジナルのキャラクターで、これが二人にとって初のアニメ声優だった。音楽を担当する歌手が、本人を思わせる姿で物語の入口を守るという、主題歌とゲスト出演をつないだ配役である。
「もっちー」と「いっくん」は、エヴリ・リトル・シングの二人を思わせる穏やかでゆるい姿をしている。しかし初めてアフレコに臨んだ持田香織は、想像以上に声を張る必要があり、緊張して汗をかいたと振り返った。伊藤一朗も、役の見た目とは反対に、声を入れる作業には強さが必要だったと話している。脱力したキャラクターを成立させるためにも、演じ手にはしっかりした発声が求められた。
エヴリ・リトル・シングの主題歌「Lien」は、制作側から示された「ありがとう」というキーワードを出発点にしている。作詞した持田香織は、聴く人がそれぞれの大切な人を思い浮かべられる歌を考え、映画が母親と子どもの絆を描いていることから、自分の母親の顔が自然に浮かんだという。物語の主題を説明する歌詞ではなく、親子の関係を個人的な感謝の言葉へ置き換えて作られた主題歌だった。
公開前には、クックパッドの企画「のこそう、お母さんの味」と連携し、両親や祖父母から教わった家庭料理のレシピが募集された。はなかっぱ特別賞に選ばれると、特設ページで名前、料理写真、家族のエピソードが紹介され、さらに映画のエンドロールにも応募者名が載る仕組みだった。母親を救う物語に合わせ、現実の家庭で受け継がれた味を映画のクレジットへ参加させた企画である。
同時上映の10分短編は、パンが好きなももかっぱちゃんと、ごはんが好きなアゲルちゃんから、どちらを選ぶのか迫られるところから始まる。はなかっぱが咲かせた花の作用で、ももかっぱちゃんはパンダ、アゲルちゃんはブタへ変身し、騒動は歌と踊りを中心に進む。母親たちを救う本編とは題材も語り口も切り替え、言葉遊びと身体的な楽しさへ集中した別作品である。
国内の作品情報と日本動画協会の記録では、「蝶の国の大冒険」は50分、「パンとごはん、どっちなの!?」は10分の別作品である。一方、ギャガの海外セールスページは、英題「HANAKAPPA – Adventure in the Butterfly Kingdom –」を60分作品として紹介している。二本の長さを足すと60分になり、日本の劇場で分けていた本編と短編を、海外向けには一つの販売枠として扱った可能性が高い。
2013年3月20日から4月7日まで、熱海市の初島は期間限定で「はなかっぱ島」、熱海港と島を結ぶ客船「イル・ド・バカンス号」は「はなかっぱ号」と呼ばれた。参加者は船で島へ渡り、島内に隠された「幻の蝶」を探してスタンプを集めた。3月24日には初島小中学校の体育館で試写会が開かれ、はなかっぱが客船の一日船長も務めた。蝶の国を目指す映画の冒険を、実際の島への小旅行へ置き換えた公開記念企画だった。