GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0を配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。
2008年公開の本作は、未公開場面を足す一般的なディレクターズカットではなく、押井守が既存の構成を土台に映像・演技・音響を作り直した83分の再制作版である。『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の公開記念として企画され、押井は旧作を映画館で観た人が意外に少ないことに加え、今後のアニメ制作を占う演出上の実験でもあったと説明している。全カットへデジタル処理を施して新作3DCGを組み込み、全編を再アフレコしたうえで、人形使い役を家弓家正から榊原良子へ変更した。音響も従来のアナログ4.0chからデジタル6.1chへ再構築され、ランディ・トムとトム・マイヤーズを擁するスカイウォーカー・サウンドが参加した。公開は5都市5館で始まり、反響を受けて都内2館が追加され、新宿ミラノでは初日2日間に4130人を動員したが、全国の最終興行収入は確認できる公表資料が見当たらない。完成済みの映画を13年後に再び工房へ戻したのだから、「2.0」という番号は宣伝文句というより、監督が作品をソフトウェア扱いした正直な版表示だったのである。 ---
作り直しの発端は「音」だった。『2.0』は新しいCGを足す企画として始まったのではない。押井守が『スカイ・クロラ』制作でスカイウォーカー・サウンドを訪れ、「攻殻の音を作り直したい」と相談したことが最初のきっかけだった。映像の変更が目立つ版だが、出発点は十三年前の音を劇場で組み直すことにあった。銃声や都市音を聞き比べると、同じ物語が音場の更新から別の体験へ変わったことが分かる。作品を見返す際は全編の音響と再制作企画に注目すると、この制作判断が完成映像へどう残ったかを確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
アナログ4チャンネルをデジタル6.1チャンネルへ再構築。1995年版の音をそのまま高音質化したのではない。スカイウォーカー・サウンドで、アナログ4チャンネルからデジタル6.1チャンネルへ音の位置関係を再構築し、川井憲次の音楽も新たにトラックダウンした。銃声、通信音、都市の響きが観客を囲む位置まで組み直されているため、同じ画面でも緊張の広がり方が変わって聞こえる。銃撃、電脳通信、都市環境音、川井憲次の音楽に注目すると、この制作上の工夫が実際の画面や音へどう結び付いたかを確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
全編を十三年ぶりに録り直した。『2.0』では、1995年版の台詞を映像に貼り直したのではなく、全編のアフレコを新規に実施した。田中敦子は前作を超えようとする気負いを途中で捨て、大塚明夫は人形使いが女性の声になったことで、バトーと素子の関係も自然に変わると考えた。台詞が同じでも、十三年後の俳優と新しい相手役によって人物間の温度が変わっている。この背景を知って草薙素子、バトー、人形使いの全編の台詞を見直すと、その事実が完成版のどこに残ったかを具体的に確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
人形使いを男性声から女性声へ変更した。人形使いの声は、1995年版の家弓家正から榊原良子へ変わった。押井守から女性で演じたいと伝えられた榊原は、先任者の存在に悩みながら哲学書まで読んで役を準備したという。声が女性になったことで、素子、人形使い、バトーの終盤は同じ台詞でも別の三角関係に聞こえる。役者交代は音色の刷新ではなく、人物の関係を組み替える演出だった。作品を見返す際は人形使いが素子へ融合を提案する終盤に注目すると、この制作判断が完成映像へどう残ったかを確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
新作CGは物語の要所とメカへ絞った。『2.0』は全編を3DCGで描き直した映画ではない。物語と多くの手描き作画を残し、新作CGは冒頭の義体製造やメカなど要所へ絞って差し込まれた。さらに全編へデジタル効果を加え、1995年の作画と2008年の質感を一つの画面へ同居させている。場面ごとに変化の大きさが違うため、見比べると監督がどこを「現在の映像」に置き換えたかったかが分かる。冒頭の義体製造、車両、航空機、ディスプレイに注目すると、この制作上の工夫が実際の画面や音へどう結び付いたかを確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
緑の都市を『イノセンス』と同じオレンジへ寄せた。1995年版では、夜景や端末の緑が電脳都市の冷たさを作っていた。『2.0』はそこへ、続編『イノセンス』で目立つオレンジ色を多く持ち込み、二作品の視覚的な距離を縮めた。CGの形だけでなく、街の光の色まで後年の押井作品へ寄せたのである。版を見比べると、同じ都市が冷たい電子空間から、熱を帯びた人工世界へ少し変化して見える。この背景を知って夜景、ディスプレイ、冒頭の義体製造を見直すと、その事実が完成版のどこに残ったかを具体的に確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
『ブレードランナー ファイナル・カット』が再編集を後押しした。押井守が改訂を決めた背景には、本作が有名になった一方で、劇場で見た観客が意外に少ないという心残りがあった。そこへ2007年の『ブレードランナー ファイナル・カット』公開が重なり、自作も作り直してスクリーンへ戻したいと考えたという。後世に評価されたSF映画の再公開が、別のSFアニメを十三年ぶりに更新するきっかけになったのである。作品を見返す際は2008年の劇場再公開という企画全体に注目すると、この制作判断が完成映像へどう残ったかを確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
旧版を消すのではなく二つの版を残した。押井守は『2.0』を、1995年版を消して置き換える「完成版」とは説明しなかった。旧版は残り続け、今回は現在の技術で可能な別のバージョンだと明言している。実際、2008年の初回ブルーレイBOXには『2.0』だけでなくオリジナル版も同梱された。二つを並べて残した商品設計によって、観客自身が色、作画、声、音響の違いを比較できた。2008年ブルーレイBOXと二つの本編に注目すると、この制作上の工夫が実際の画面や音へどう結び付いたかを確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
改訂版は『スカイ・クロラ』と未来のアニメへの橋だった。『2.0』は懐かしい作品を磨き直すだけの企画ではなかった。押井守は、新しいCGと旧来の作画を同居させる仕事を今後のアニメーションを占う演出実験と位置づけている。同じ2008年夏に『スカイ・クロラ』が公開されたことも、過去と新作をつなぐ象徴的な出来事だと語った。二作品を続けて見ると、監督が手描きとCGの境界をどう探っていたかが見えてくる。この背景を知ってCGと手描きの混在、2008年夏の公開を見直すと、その事実が完成版のどこに残ったかを具体的に確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
公開は五大都市七館、初週末の新宿だけで4130人。『2.0』は大規模な全国公開ではなく、2008年7月12日に五大都市七館で始まった限定興行だった。それでも新宿ミラノでは最初の二日間だけで4130人を動員したと、バンダイビジュアルの商品資料が記録している。押井守が心残りとしていた「スクリーンで見た人が少ない」作品を、まず劇場環境で体験し直してもらう企画だったことが数字から分かる。作品を見返す際は2008年の劇場公開と新宿ミラノ2に注目すると、この制作判断が完成映像へどう残ったかを確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
榊原良子の参加でバトーの嫉妬が薄くなった。人形使いの声が女性へ変わると、変化したのはその役だけではなかった。バトー役の大塚明夫は、素子との関係に見える嫉妬心が以前より薄くなると考え、わざと芝居を作り替えず、相手の声から自然に変わる反応へ任せたという。同じ台詞でも、配役が一人変わるだけで三人の距離が組み替わる。終盤を聞き直すと、改訂版が音響だけでなく人間関係の版でもあると分かる。終盤の素子、人形使い、バトーに注目すると、この制作上の工夫が実際の画面や音へどう結び付いたかを確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)
1995年版の作画を「ピークの時代」と再評価した。新しいCGを足す作業を通じて、押井守は逆に1995年版の手描き作画の強さを再確認した。参加アニメーターの多くが後に監督となり、作画の力だけでこの密度を作れた時期をアニメーションのピークだったと振り返っている。『2.0』で残された手描き場面を見ると、古いから温存されたのではなく、現在でも置き換えにくい力を持つ部分として残ったことが分かる。この背景を知って1995年版から残された全身作画とアクションを見直すと、その事実が完成版のどこに残ったかを具体的に確かめられる。
参考情報:資料・アーカイブ(日)